二百八十三話
「勇者がもう首都の側まで来てるって?あー、どうなるんだろう?ここで決戦とかになっちゃうのかなぁ。」
メーニャから齎された情報に僕は不安に駆られる。僕らは首都から逃げ出せる方法をまだ確立できていない。
聖女の作り出した結界の魔道具を破壊できていないのだ。
優秀過ぎると言えるメーニャの手腕であっても、聖女の持つ「神の加護」をすり抜ける事は不可能だった事実。
「申し訳ございません魔王様。今からでもこの身に変えましても魔道具の破壊に・・・」
「いや、止めて?もうそこは中止で。メーニャが死んじゃうのは絶対にダメだよ。これからも一緒に居て貰わないと。聖女と勇者の二人が首都に居る状況とか、神の加護がどんな作用を起こすか分かったもんじゃ無いからね?その時に動ける人材が僕の元にはメーニャしか無いんだから。居なくなっちゃ困るよ。非常に困る。僕は引き籠もりだからね?世話をしてくれる存在が居ないと手詰まり所の騒ぎじゃ無いんだ。」
物凄く情けない事ではあるが、僕だけではどうにもできない。
情報収集にしても、工作活動にしても、メーニャが居ないと始まらない。と言うか、メーニャにしかできない。
幾ら魔法で僕が姿を消したり、空を飛んだり、周辺の環境を破壊できる威力の魔法を放ててもだ。
それは外に出なくてはならないと言う事。
そうなれば勇者、或いは剣聖、もちろん聖女にも、僕の事を捕捉される危険性が物凄く大きくなる。
そんな事は出来るハズが無い。見つかったらお終い、そう思ってこれまで行動してきているのだ。
今更そう簡単に地上に出て暴れ回る何て事を出来るハズが無い。
危険人物との遭遇をしないだろうと言った環境、状況でこれまでは外出などをした事もあった。
だが今は危険度最大級だ。首都にヤバイ奴等が勢揃い。
こんな所からは今すぐにでも早く逃げ出したいけど、聖女の作り出した結界の魔道具がそうはさせてくれない。
コレには何処かしら僕が心の底で聖女の「神の加護」を甘く見ていた証明と言える。
こうなると分かっていればあの海岸に聖女が居た段階でメーニャに暗殺でも頼んで早々に危険を排除、なんて事をしておけば、などと思ってしまう始末だ。
「今更だねぇ。ねえメーニャ?城に潜入時には聖女にも近付けなかったんだよね?」
「はい、どうしてか聖女の位置も捕捉が困難になっています。やはりコレも神の加護の力かと。」
「うん、どうやらもう聖女も結界の魔道具も諦める事になりそうだ。他の視点から今の危機的状況を解消できないか話し合おうか。」
首都の、それまた城の真下、地下に魔王が潜伏。
幾ら何でも人族がコレに、ましてや神の加護が有ろうとも勇者でも気づくまい。
そうした僕の思い付きに因って今ここに居る訳だ。それは成功している。
してはいるけれども、それ一本で身の安全を考えるのは宜しくない。逃げ道が無い。
だからもっと多くの選択肢を考え出しておくべきで。だけども首都から逃げ出せない状況の今だ。
諦める所は諦める。良い案が出れば即採用。妙案が浮かぶのならばソレに越した事は無い。
まだまだ時間的猶予はある。けれどもノンビリとはしていられないのだが。
こうしてメーニャとこれまでに散々して来た話し合いをまだまだ僕は続ける事にした。




