二百七十五話
「あー、マードックも、率いて来た魔族の誰も、あの結界は壊せなかったと。でも、僕らの事を聖女が勘付いたと言った様子も無い。うん、コレならば安心だ。」
僕はメーニャの報告を聞き終えて安堵の息を吐く。
この度の首都の攻防は聖女の方に軍配が上がったと言っても良いモノだ。
かなりの爆撃を魔族はしたのだが、しかし、張られた結界は罅割れの一つもせずにずっと張られ続けたのだ。
「聖女の作った魔道具、凄いねぇ。それで張られる結界の強力な事この上無いって感じ。流石は神の加護を持つ者の仕業と言って良いんだろうねぇ。」
マードック率いる魔族軍は撤退をしている。散々暴れ回っても結界を壊せなかったのだからしょうがない。
粘っても効果が無いと結論を出して即座に軍を引いたのはマードックの慧眼だろう。
「あのまま結果を出せずにズルズルとやっていたら、被害が出ていたのは魔族の方だったかもしれないしね。人族の反撃もあって引くしかなかったってのが本当の所なのかな?」
一方的に攻撃し放題、人族は結界に守られて被害の心配も無く魔族迎撃態勢を整えていたのだ。
この場合、長期戦になっていれば、魔族に負けは無くても無駄な被害が出ていた可能性は高い。
「さて、これでより高まったね。神の加護の向いている先が僕らじゃ無かった、そんな可能性が。」
御都合主義、そんな力を発揮する神の加護はどうやら今回僕らの方に矛先が向いていなかった様子だ。
どうにもマードックにその切っ先が向いていたと推測できる。
「メーニャが散々魔道具の故障をさせて回っていたのにね。こちらには一切危ないと思える様な場面は無かった、そうなんだよね?メーニャ?」
「はい、手駒もふんだんに使用して様々な工作を重ねに重ねて動きました。そこで聖女が、そしてその取り巻き共が「魔族の仕業だ」と口にした回数は有り得ない程に少なかったですね。口にしたとしても直ぐ自らでソレを否定する言葉を続けています。」
そんな細かい所まで調べ上げているメーニャの手腕が僕には神の加護などよりもよっぽど恐ろしいのだが、それは今は関係無い。
「うん、それってさ?神の加護ってのがしっかりと本来の効果を発していたとすれば、そこで「魔族がやった」って断定して来ていたハズ、何だよね?」
「確かに逆算して考えれば、そうなるかと思われます。今回の件も正直わたくしは直ぐにでも聖女が、魔族が暗躍していると断じて来るだろうと思っておりました。その場合の展開としては、予想できる場面として、手駒が捕縛される。或いは、最悪の展開としては・・・わたくしが殺されていたと言った所かと。」
そんな最悪な結末が来なくて良かったと僕は胸を撫で下ろす。
「メーニャが殺されるなんて想像もしたく無いね。でも、そうじゃ無かった。そうはならなかった。聖女の意識はずっと首都に迫って来ていた魔族に向いていて、こちらの事になんて一切、これっぽっちも気づきもしなかった。小さな欠片、切っ掛けすらも、どうやら得てはいない。・・・風向きが変わって来たって事、かな?それが僕らにとって良い方向にずっと吹き続けていてくれれば良いんだけどね。」
どうやらこれからはもう少しだけ積極的に行動を起こしても大丈夫、その様な結論を出して僕らは今後の事を、聖女への対処を話し合うのだった。




