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二百七十話

 それは別に突然に始まった訳じゃ無い。何時かはそうなるんじゃないかと思っていた。


「あー、マードックがとうとう動き出した?」


「はい、魔王様。どうやら引き連れて来ていた魔族たちを一斉に動かした様です。何の対策もしてこないのであれば、このままならこの国は終わりですね。」


 マードックの首都への侵攻が始まったらしく、どうやら王国を滅ぼす気の様だとメーニャは付け加え言う。


「そんな事すれば勇者がこっちに戻って来ちゃうんじゃない?逃げる用意はしておかなくちゃね。」


「いえ、どうやらそうはならないかもしれません。」


 メーニャのこの返答に僕は驚きを隠せない。


「え?いやいや、まさか。」


 だけどもメーニャの調査報告では勇者も剣聖もこっちに戻って来る気配は一切無いとの事。


 自身の生まれ育った国が潰れようとしているのにソレを見過ごすなんて事は有り得ないんじゃないかと僕は思ったけれど。


「いや、ソレはソレで僕に別段、不利益は生じないのか?そうだね、王国が無くなった所で寧ろ僕には利しかない。勇者への支援が止まるんだし?」


 その様な結論になったけれども、どうにもおかしいと思ってしまう。


「でも、勇者の「神の加護」が作用していない?こんな状況になっていればきっと何かしら勇者の都合の良い様に世界が動くんじゃないのかな?国がやられちゃえば勇者には都合が悪い訳だし?何かしらの動きが起きても良いハズ。・・・今はまだ何も起きていないのなら、後で起きるのか?」


 しかしそうなるとどの様な形でソレが現れるのかの予想も予測も立てられない。


 僕はそんな今後の事を考えて不安になるも、こっちから動き様が無いなと思い直した。


 これまでに僕は取り合えずやれるだけの事をした。まあそれは作戦とも言え無い下らない思い付きばかりだけれど。


 ここに戻って来てからも、その他にやれそうな事は無いかとアレコレとメーニャと話し合いの時間は設けて来た。


 そこで幾つかは勇者への嫌がらせに繋がる案は出たものの、それをヤル気はこうして今になっても出なかったのだ。


 ならば無理して動かぬ方が良いと言う事で今後の動きを見守ると決めたのだが。


「マードックが動いたのなら、そっちに向けて神の加護は発動するのかな?直接に僕へと狙いが向けられて発動、って事は無いと思いたい。」


 不安は募るも、そうして経過観察をする事に決めた翌日の事。驚きの状況になった。


 聖女が首都に来た。しかもその目的は魔族からこの国を守る事。


 メーニャが首都の様子を確認しに朝から出ていたのだが、その後に直ぐに戻って来てこの情報を教えてくれたのだ。


「ウッソじゃん・・・どうしてそうなる・・・あ、聖女も何かしらの「神の加護」を持っているのか・・・そうなると今回の「御都合主義」は聖女の持つその加護で起こるって事なのか?」


 ここに来て「思ってたんと違う・・・」が来てしまった事で僕の口からそれ以上の言葉が出なかった。

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