二百六十四話
デカい騎士の像に近づく。すると像はゆっくりとした動作でその腰の剣を引き抜いて大上段に構え。
「・・・って、振って来ないのかよ!?止まってるじゃんよ?間合いだよ、ここ?え?何で動いて来ないの?・・・意味不明なんだけど・・・」
その巨大な剣を構えたままでジッと動かず、何時まで経っても僕へと斬り掛かろうとして来ない像。
てっきり即座に攻撃を仕掛けて来るモノと思っていたのに、その気をスカされた様な感じになった。
その後は何時までも落ちて来ないその剣に対して僕は次第にソワソワさせられる。
来たら直ぐに対応できる様にと身構えているのに一向に振るわれる事の無い剣。
構えたままに微動だにしない像に次第にイラつきが募り始め。
「おいいい・・・何なの?こっちの気持ちが緩んだ瞬間にその隙を狙って振り落とされてくるとか?そうなったら物凄く面倒。うーん、このままここに立ってるだけじゃコッチの手は届かないし?近づくかぁ。」
像の攻撃間合いスレスレに立っているので、それでもしかしたら攻撃をしてこないのかと思い一歩二歩と踏み込んでみたのだけれども。
「動かないじゃん。何だろう?もう足元に来ちゃったよ?こんなに接近したら剣の間合いが潰れちゃって意味が無いよね?蹴り、してくるのか?」
スタスタと、攻撃が来ない事で近づく足は止まらず。とうとうその像の足元に到着してしまい、僕は困惑。
何がしたいのか全く以って不明。ソレが不気味で嫌で仕方が無い。
何かの意図があるのか、罠なのか。はたまた別の何かの理由で動かない、動けないのか。
「判らないとコッチに精神的苦痛がねぇ。モヤモヤした気持ちを抱えさせる、何て狙いだったら成功したと言えるよ。でも、そんな事して何の意味があるの?って話に繋がるんだよなぁ。」
と言う事で限界だった。僕はムスッとした気分を存分に込めた前蹴りを像の脚へと放つ。
「おん?思わず結構力入っちゃったなぁ。うん、砕けたね。流石にここまでやられたら反撃・・・して来るでしょ?・・・してこないんかい!」
砕けた脚ではその巨体を支える事が出来ずに像はそのまま転倒。かなりの衝撃で床と衝突。
でも、ここまでしても像は一切動いていない。動いて来ない。
「無視して此処を出られそうな出口を探すか?・・・あ、メーニャが手で「✕」を作ってる・・・」
ソレが何かと思いメーニャの側に一度戻ると、そこで。
「魔王様、どうやらこの広場には何処にも他に通じる様な通路は無い模様です。」
「あ。先に調べてくれていたの?気が利くねぇ。それじゃあ、あの像がボスって事で確定?いや、それはまだ決め付けない方が良いか。可能性が高い、くらいかな?でも、アレ、何が何だか分からないけど、動いて来ないんだよねぇ。」
転倒したままで姿勢を元に戻そうともせずに剣を掲げたままの間抜け姿で床に転がっている像。
「どうしろっていうの?もう、何も考えないでアレを粉々にすれば良いのかなぁ・・・」
ここは何処までもこちらの気分を害する趣向が凝らされたダンジョンだと、僕は心の底からそう思った。




