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二百六十三話

「好い加減にして欲しいよね。本当にもう、どれだけ時間掛かったと思ってるんだよ・・・」


 壁はそこそこに分厚く、そこに僕らが通れる程の大きさの裂け目を入れねばならなかったので信じられない位の時間が掛かった。


 途中で幾度も僕の心には罅が入り、ソレを癒す為の休憩をそれこそ二十回以上は入れた。


 そうして開通した先に在ったのは階段。下りて行く為の、では無く、上がる為の。


「これでまた最初の地点に戻るとかになったら流石にキレるからね。その時には何するか僕、分からないよ?」


 イラつきながら吐き出す言葉。僕の精神は相当に病んでいた。


 ソレを自覚しつつも階段の先を見据える。まだ先へは踏み込んではいない。


 急く気持ちが無い訳じゃ無い。それ以上の疲れで体が前へと一歩を踏み出せないでいただけ。


 幾度も深呼吸をして息を整えてから肩の力を抜く事を僕は心掛ける。


「ふぅ~・・・さあ、行こうメーニャ。この先が終着だと良いんだけどさ。恐らくはボスだよね?そうじゃ無かったら泣く自信が今の僕にはあるなぁ。」


 精神が参っていて情緒不安定な僕。発言にソレがふんだんに含まれている。


 そうして決心をして階段を上がって行けば、何処までも長く続く上りで。


「悪意しか感じないんだが?何だよこの・・・うーん、この!」


 嫌がらせか何かにしかこの長さを感じなくなっている時点でお察しだ。イラつきが僕の中で頂点になっている。


 そんなこんなで到着したのは円形の広場。相当な広さで、天井も高い。


 そんな場所の中心部にはかなり巨大な騎士の像。と思ったら。


「うん、像だと思ったら動き出したね・・・僕の身長の三倍はあるかな?凄い迫力だねー・・・」


 もう何が出て来ようが、これまでの経緯で精神が摩耗している僕には驚きが無い。


「取り合えずはアレをぶち壊せば、ここは終わりで良いのかな?・・・うーん、魔法はまだここに来ても封じられているのかぁ。そうすると、純粋な肉体のみで倒せって事?・・・クッソメンドイ。」


 思わず正直な気持ちが言葉になって漏れ出てしまう。早く終わらせてここからさっさとオサラバしたい気持ちが一杯で。


 そこでふと気づいた。メーニャも同じく魔法が使えない状態のままなのだと。


「メーニャ、下がっていてね。アレは僕が対応するよ。万が一にも無いとは思うけど、メーニャがアレにやられちゃったりするのは嫌だしね。・・・ううん、正直な所、このイラつきをアレにぶつけて解消したいだけだね。御免、一人でやらせて貰うよ。」


 メーニャの事を最初は心配しての言葉を口に出していたのだが、途中で僕自身が気づいた。


 鬱憤晴らしがしたいのだと。万が一にもあの騎士の像に殺される未来など見えない。


「魔王様、お気を付けて。」


「うん、心配かけちゃう感じになるね。でも、大丈夫。どうやら僕のこの体は頑丈らしいから。」


 そうなのだ。この「魔王」はどうやら魔法で肉体を強化などしなくても強力無比であったりする。


「うん、さてそれじゃあ暴れてみようかな。ソレがこの動く騎士の像にどれだけ通用するのか、試させて貰うとするよ。」


 こうして僕は軽い足取りで広場中央へと近づいた。

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