3-5 明るく歩こう影町を
目を覚ますと、そこは見知らぬ家のベッドの上だった、
ユッカ「(・・・やっぱり夢じゃなかったのね・・・、・・・、・・・)」
まだ涙の跡が残っている目尻をぬぐい、ほんの数秒いろんなことを考えた後、何かを悟ったようにカッと目を開いた。
ユッカ「おっはようございまーす!」
アザミ「お、おはようございます、体とか大丈夫ですか?」
ユッカ「体はもう大丈夫!昨日はありがとう!助けてくれて!」
アザミ「いえ、ほとんどルクリアさんたちが・・・」
ユッカ「ううん、あなたにもいろいろ助けてもらったもん!」
昨夜とは打って変わって天真爛漫な笑顔で私の両手を握ってくれる。今まで誰からもこんなにまぶしい笑顔を向けてもらったことがなかったので思わず顔を背けてしまった。
ユッカ「あたしユッカっていうの!あなたは?」
アザミ「ア、アザミです・・・」
ユッカ「ありがとう!アザミちゃん!」
アザミ「いえ、ユッカさんが無事で本当に良かったです!」
ユッカ「ユッカでいいよ!」
アザミ「で、でも・・・」
ユッカ「いいから!いいから!ユッカで!」
アザミ「ユ、ユッカ・・・」
ユッカ「よろしくね!アザミちゃん!」
慣れない笑顔にまた顔を背けてしまった、
ユッカ「助けてくれたお姉さんたちは?」
アザミ「ナンテンさん・・・、保安隊の人は悪いやつら連れていってくれました。ルクリアさんは隣で寝てます。あの人昼まで寝てるので・・・」
ユッカ「わかった!」
彼女は元気よく返事をするとすぐに隣へ走って行ってしまった、
ユッカ「ルクリアさーん!おはようございまーす!」
大声で叫ぶと、ほぼ初対面なのに寝ているルクリアさんに抱きついていった。
ルクリア「!?、うおっ!、なんだ!?、どした!?」
ユッカ「おはようございます!昨日は本当にありがとうございました!」
ルクリア「お、おう、」
ユッカ「アザミちゃんがご飯作ってくれてますよ!一緒に食べましょう!!!」
いくら自分を助けてくれた人とはいえ、怖くはないのだろうか・・・
今ではいい人とわかっているが、初めて会う人なら話しかけることも躊躇してしまいそうなのに、
同い年くらいなのに、こうも性格が違うのかちょっと衝撃だった。
・・・
ユッカ「これ全部アザミちゃんが作ったの?」
アザミ「うん、一応・・・」
ユッカ「すごいね!どれもおいしいよ!」
アザミ「あ、ありがとう・・・」
いつもは簡単な食事で済ませてしまうのだが、この子ためにもとしっかりとした食事を準備することが今のわたしに出来る精一杯の事だった。
食が人を幸せにすることは知っている。
召使い時代、いつも当たりのきついご主人様たちでさえ、食事の後は幾分が気持ちが穏やかになっているのは容易に見て取れた。
食事ひとつでこの子の心がほんの少しでも癒されるのであれば、わたしはどれほどの労力もいとわないつもりだ。
ユッカ「助けてもらっておいてあれなんですけど、もう一つお願いしていいですか?」
ルクリア「なんだ?」
ユッカ「あたしの村に一緒に連れてってもらっていいですか?」
アザミ「!?」
ルクリア「!?、別にいいけど、おまえ、焼けた村見たら辛くならないのか?」
ユッカ「大丈夫です、ちゃんと自分の目で現実を見ておきたいんです!」
アザミ「・・・」
・・・
ユッカ「へ~!あたし影町の方歩くの初めて~!壊れてるのも多いけど建物はいっぱいあるんだね~!うちの村よりずっとにぎやか~!」
アザミ「そうなの?」
ユッカ「こっちの路地にいっぱいお店あるみたい!」
その声に反応して、いかにも人相の悪そうな男数人がこっちを睨んでくる。
アザミ「ダ!ダメダメ!そっちは、い、いかがわしいお店だから・・・!」
ルクリア「おい!あんまり離れんなよ!昼とはいえ安全な場所じゃねーんだからな、」
ユッカ「はーい!」
影町の町中を抜け、ユッカの村がある方へ3人で向かっていった。
ユッカ「今まで影町の方には行っちゃいけないって言われてたけど、実際見ると想像してたのと結構違うね!」
ルクリア「おまえ、昨日の今日で大丈夫なのか?もっと落ち込んでるかと思ったが・・・」
ユッカ「全然大丈夫じゃないですよ!何から考えたらいいかもわかんないし、いろいろ思い出したらきりがなく泣いちゃいそうだし・・・」
ルクリア「・・・」
アザミ「・・・」
笑顔で答える彼女の言葉に心が痛くなってしまった。計り知れないほどの辛さを抱えているのに、がんばって笑顔でふるまっている姿がとても偉く、そして切なく見えた・・・。
ユッカ「マンガとか読んでるとね、家族や大事な人を失って、それでも強く乗り越えて生きていく主人公とか見ててね、もしあたしが同じ境遇になったらもっと強く生きてやる~なんて空想してたけど、実際そうなったてみたら・・・全然無理だった!」
ルクリア「・・・本とかは美しい部分を中心にピックアップしてるからな、」
アザミ「わたしにでも出来ることがあれば言って下さい、何でもしますから!」
ユッカ「ホント!?ありがとう!じゃあ今夜もアザミちゃんのごはん食べたいな!」
アザミ「わかりました!お安い御用です!毎日作りますから食べて下さい!」
ユッカ「やった~!約束ね!!!」
ユッカはまたわたしの手を握ってくれたので、せっかくなのでそのまま一緒に歩くことにした。
こんなわたしを少しでも頼ってくれたのが嬉しかった。
ユッカ「もう一生分泣いたんで!あとは無理してでも笑いますよ!」




