3-3 本当にいざという時は自分で判断しないといけない
そんな状況をよそに、リーダーの女は自分が逃げるのを最優先にしたのか、女の子は放り出して金品だけを抱えて一人で走り出していた。
アザミ「(今ならあの子を助けられる!・・・)」
ルクリア「クソっ!逃がすかっ!くっ!こいつっ!!」
逃げるのに気付いたルクリアさんだったが2人で手練れの男を相手にするので精いっぱいの様子だった、
女1「ヤバいヤバいっ!さっさとずらかろっ!」
アザミ「・・・今だ!!!」
わたしは金品をもって逃げようとしたリーダーの女の前に立ちふさがった、
女1「!!!、なんだテメッ!どけっ!」
子供だと思って女が言葉で威圧してくるが、何を言っているか耳には入らなかった、
ただこいつを逃がさないようにする、そうすればあとはルクリアさんたちがなんとかしてれる、状況から見て女の子は後でも大丈夫、そう判断した、
わたしは走って向かってくる女にタックルをする要領で思いっきり抱きついた。相手の両腕を抱え込んで、一緒に倒れこんだ。
女1「いったっ!何よこいつ!放せっ!」
女はなんとか振りほどこうと暴れるが、重力を味方になるべく相手に体重をかけた。
女1「クソっ!・・・このガキっ!!!」
アザミ「逃がさない、」
女1「ハァ!?」
女の両手を塞いだのは正解だった、女は腰のナイフを取ろうと右手の方に力を入れているのがわかった。
女はなんとかわたしを放そうと暴れるが、とにかく精一杯抵抗した、
アザミ「ぐふっっっ!!!」
不意にリーダーの女は足でわたしのお腹におもいっきり膝蹴りを入れてきた。
体から力が抜けそうになるが、何とかこいつを放すまいと力を入れた、
しかし、いったん緩んだ私の手を払うとすかさずナイフを取り出した、
アザミ「(しまった!!!)」
女1「放せ!このガキっ!!!」
もう一度腕を抑えようと手を出したが相手の袖をまくる事ぐらいしか出来ない、
一瞬逃げようかとも思ったが、考えが追い付く暇もなく女のナイフがわたしの左肩に突き刺さった。
アザミ「くあぁぁぁっっっ!!!」
・・・なぜだろう、痛みはあったが逆に逃げようという気持ちがなくなった。むしろ絶対に放すまいとう気持ちの方が強くなった。
女1「くっ!ガキっ!死ねっ!」
リーダーの女がナイフを持つ手を高く振り上げた、その狂った目を見て本気でわたしを殺しきてるのがわかった。本当に死が間近にきているというのを肌で感じた。
女1「いたっ!!!」
予想外の声に思わず上を見ると、振りかざした手をルクリアさんがおもいっきりつかんでいた、
ルクリア「この手、もういらねえだろ」
そういうと瞬時に女の手を逆にひねって手首を折ってしまった、
女1「きゃあああああっっっ!!!」
女が悲鳴を上げるとナイフは手から落ち、左手で折れた手首を抑える、
女1「あぎゃああっっっ!!!」
次の瞬間、ナンテンさんが女の真正面から足の裏で顔に蹴りを入れると、女はわたしの体から吹き飛んでいった。
女1「ぎゃっ!!やめっつ!!いぎっ!!!・・・」
ナンテンさんは追い打ちをかけるように女を何度も踏みつけにして気を失わせようとしている。
ルクリア「すまん!手間取った!大丈夫か!」
ルクリアさんはすぐさまわたしのケガした肩を気にかけてくれてた、
アザミ「わたしは大丈夫です!あの男は!?」
目をやると手練れの男は鼻血を出しながら倒れていた、
アザミ「流石です!良かった!、あの子は!?」
わたしは自分のケガなど気にする暇もなくとにかくあの子無事を確認したかった、
這い寄るようにしてあの子の元へと急いだ、
アザミ「大丈夫ですか!?」
すぐに女の子の口と手の拘束を解いてやると、女の子はぐったりと倒れてしまった、
ルクリア「気を失ってるだけだ、目立った外傷もないし大丈夫だろ、」
アザミ「良かったっ!!!」
ホッとした。とにかくホッとした。
アザミ「いつっ!」
緊張の糸が切れたとたんに刺されたところの肩の痛みがじんじんと襲ってきた、
ルクリア「無理すんな、おまえもケガ人なんだから、見せてみろ」
ルクリアさんは手際よく傷口を洗ったり止血をしたりしてくれた。
アザミ「ありがとうございます、・・・ごめんなさい、わたしが余計なことしたせいで・・・」
ルクリア「いや、おまえのおかげであの手練れに集中できたし、ひとりも逃がさなかった、言われた事をちゃんと守るのも大事だが、不測の状況に最善の行動を考えるのはもっと大事だ。助かったよ!」
アザミ「はい、だったらよかったです・・・!」
ルクリア「だが、本当に殺されそうになったらちゃんと逃げろ!逃げられたって誰もお前を責めたりしないから!」
アザミ「はい、わかりました、」
ちょっと怖い顔だったが、それよりもわたしを心配してくれているという方が強く感じ取れて嬉しかった。
ナンテン「あれ?ルーちゃん?アザミちゃん?どうしてここにいるの?」
ルクリア「今気づいたのか!」
ナンテン「確かあっちこっちで事件おきて、とにかく白仮面見つけたら片っ端から捕まえようとして・・・これルーちゃんたちが倒してくれたの?、アザミちゃん!!ケガしてるじゃない!大丈夫!?」
アザミ「はい、なんとか・・・」
いつもの優しいナンテンさんに戻ったようで安心した、
ルクリア「いや、ほとんどお前がやったんだよ・・・忙しいみたいだから簡単に説明するぞ・・・」
・・・
ナンテン「そうだっけ?まあいいや、すぐ次のところに行かないと!!!」
ルクリア「こいつら引っ張っていくのか?」
ナンテン「近くまで車で来てて、先に3人組の白仮面いたからそいつらに車で突っ込んで放置してきたから、」
ルクリア「はははっ!容赦ねぇな、」
ナンテン「急がないと!」
ルクリア「そんなに車に乗せれるのか?」
ナンテン「荷台もあるし、ゴミ詰めこむようなもんだしなんとかなるわ、」
ルクリア「詰め込みやすいように足でも折っておくか?」
相変わらず無茶苦茶な話をしてる二人だったが、こんな時は何とも言えず頼もしかった。
ルクリア「何か手伝うか?」
ナンテン「大丈夫、これは私たちの仕事だから、」
捕まえた6人を鎖で縛ると雑に引っ張っていった。
ナンテン「ごめん!ルーちゃん!アザミちゃん!その子だけお願いしていい?今度ちゃんとお礼するから!」
ルクリア「わかった、早く行け!」
ナンテン「ありがとっ!!!」
ナンテンさんは車に乗り込むとあっという間に走り去ってしまった。
あちこちで事件が起こって保安隊達が走り回ってる今、部外者は余計なことはしない方がいいのだと思った。
わたしたちは助けた女の子を背負ってルクリアさん家に帰った。いつもはわたしが運ぶのだが、ケガをしてる私を気遣ってかルクリアさんが運んでくれた。
アザミ「ナンテンさん、大変そうでしたね・・・」
ルクリア「だろうな・・・」
・・・
家について女の子を部屋におろすが、目を覚ましてからいっこうに泣き止む様子はない。
無理もない、この数時間で一体この子はどれだけのものを失ったのだろうか、わたしにはこの子の気持ちになって考えることはできなかった。
田舎娘「・・・うっ・・・うっ・・・」
アザミ「(どうしよう、こういう時なんて言ってあげればいいんだろう、多分どんな慰めの言葉も今のこの子には届かないだろう、)」
いくら考えても何の慰めの言葉も思いつかなかった。
アザミ「・・・わたしの悩み、聞いてもらっていい?」
田舎娘「・・・えっ?」
アザミ「わたしもちょっと前までね・・・」
わたしは自分の長年虐げられてきた召使いだった過去から、さらわれて、ルクリアさんに助けられて、今に至ることを話した。
あまりしゃべるのは得意ではないし、今までも人と深い話などしてこなかった、させてもらえなかった、ましてや自分が誰かを励ます時が来るとは思ってもいなかった。
・・・・・・
アザミ「・・・それで、今ルクリアさんと一緒に人さらいやってます。こんなこと続けていいものなのかって、」
ルクリアさんの仕事を否定する気など毛頭ないが、自分の他にも辛い境遇の人がいることを知ってもらえれば、少しは支えになるかと思っての事だった。
田舎娘「・・・そうなんだ・・・大変だったんだね・・・うっ・・・うぅっ・・・」
アザミ「いえ、あなたほどではないですけど、」
田舎娘「ううん、・・・そんなことないよ、・・・うっ・・・」
わたしにはもうこれ以上この子にしてあげれることはないと感じ、小声でルクリアさんにお願いをした、
アザミ「ルクリアさん、お願いです、この子を抱きしめてあげてください」
ルクリア「私がか?、おまえの方がいいだろ、いろいろ話してたし、年も近そうだし・・・」
アザミ「・・・たぶん、頼りになる大人の方がいいと思います。」
ルクリア「わ、わかったよ・・・しょうがねぇな・・・」
ルクリアさんは傍に座ると、ぎこちない手つきで泣いてる彼女の背中から手をまわし自分の胸の中に引き寄せてくれた。
田舎娘「・・・うっ・・・うっ・・・」
ルクリア「ほ、ほら、もう泣くな、・・・おまえの好きなものなんでも買ってやるから、」
こういう時の慰めとはちょっと違う気がしたが、ルクリアさんなりの不器用な優しさを感じた。
田舎娘「あだしも・・・みんなのどごろに行ぎだい・・・」
ルクリア「そんなこと言うな、せっかく助かった命だろ、」
田舎娘「でも・・・ゔぅ・・・」
ルクリア「おまえが生き残った事にはきっと意味があるんだ、」
田舎娘「ゔっ・・・ゔぅっ・・・」
間もなくして少し落ち着いたのか、彼女は泣きつかれたように眠ってしまった。
ルクリアさんはそのまま自分のベッドに運んであげて休ませてやった。
わたしにはその光景が少しだけ羨ましく見えた。
わたしも怒鳴られて、辛いとき、守ってくれる人にこうしてもらいたかった・・・




