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9・千里眼

愛鷹あしたか、ちょっと来て」

翌週、帰って来た慎太郎に誘われて愛鷹は山に入った。

しばらく登ると開けた場所があって、そこには炭焼き小屋があった。


「死んだ父さんは猟をしていたけれど、炭も作っていたんだ。

父さんの炭はごく普通のだったけれど、あの山のふもとの木なら

いい炭ができるんだ。

愛鷹なら飛んで取ってこれる。作ってみないか?」

慎太郎は向こうの山を指さした。


「作った方がいいか?」

「みんなが喜ぶよ」

「わかった。やってみる」

慎太郎は父の遺した炭づくりのコツを書いたノートを渡した。


少しずつ炭が出来上がっていった。

「最初にしては上出来」と春に褒められて、炭作りが楽しくなった。



4月になって、志乃たちは進級した。 山の中にはまだ桜は咲かない。

その週末、慎太郎も源太も帰ってこなかった。


「兄ちゃん、忙しいのかなぁ。何してるんだろう?」

縁側で、人形を抱きながら志乃がつぶやいた。

慎太郎からはたまに手紙は来るが、どこで何をしているとは書いていないので

志乃は心配でたまらなかった。


「俺、見てみようか?」

「え?」

「慎太郎がどこにいるか、見てみる」


屋根より高く飛ぶと、あたりをぐるっと見渡して、

慎太郎の姿を探した。



慎太郎は鹿児島にいた。 知覧。 武家屋敷のある街。

整備らしき人間と飛行機の調子を見ている。

飛行機に番号があって、それが慎太郎の飛行機らしかった。


「慎太郎がいた。ここからずっと南にいる」

「遠くて来れないのかな? お守り人形作ったから

兄ちゃんにあげたかったのに」


「俺が届けようか?」

「ほんと?」

「遠いから時間がかかりそうだけど、いいか?」

「うん、うん、お願い」



「慎太郎に会いに行くって?それなら着て行くといいよ」

春はいつかもらった反物で縫った着物を愛鷹に着せてくれた。


愛鷹は人形を受け取り、お弁当を作ってもらって村を飛び立った。



何かがおかしい。そう思ったのは飛び立ってしばらくした頃だった。

眼下に見える大きな町が、焼け野原のようになっていた。


ひとつふたつではない。たくさんの街が焼かれていて

たまに焦げ臭い匂いもした。

「俺が思っていたよりも、おおごとな戦になってるな」


海を越え、たまに慎太郎の姿を確認して飛び続けた。



知覧に着いた頃、夜が明けた。


仮にも軍の基地だから、簡単には入れてくれないだろう。

バサバサという音に、「なんだ、でっかい鳥か」と基地の警備が油断した。

そのスキに中に入ると、掩体壕えんたいごうの中に飛行機が見えた。


慎太郎の飛行機を探して潜り込もうと思ったが、操縦席は狭くてすぐばれる。

追い出されてしまうかも知れない。

朝を待って、追いかけることにした。


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。

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