↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翼よ、眠れ~アヤカシの末裔・外伝~  作者: 遠野まみみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/22

21・天寿

何十年か、愛鷹あしたかと春のふたりの生活が続いた。


1年に一回ほど志乃が帰ってきたり、春が志乃の子供に会いに

出かけたけれど、ほとんどふたりの生活だった。

畑を耕し、炭を焼き、猟をして、村の人と物々交換をする

静かで平和な日々だった。



ある日、夕食に春は赤飯を炊いた。

「どうしたの? お祝いでもあった?」

「愛鷹がうちの子になって20年のお祝いよ」


言葉が出なかった。 

目の前の春は年を取ってすっかり老人だったが、昔のように嬉しそうにほほ笑む。


「あ…。ありがとう…母さん…」

最後が蚊の鳴くような小さな声になったのは、照れくさくて、恥ずかしくて

言っていいのか迷ったから。


春は瞳を潤ませて「いっぱい食べて」とだけ言った。



「愛鷹、今までありがとう…」

赤飯を炊いた日から、さらに年月が経ったある日のこと。

自宅の部屋で横になって愛鷹の手を取った春の声は弱々しく、

人生の幕が下りるのを予感させた。


「俺こそ、感謝してもしきれないほど良くしてもらったよ。

ありがとう。 春母さん」

「あなたは自慢の息子だわ」



やがて春は夫と慎太郎のところへ逝った。

天寿を全うして亡くなるのは、寂しい気もするが、悲しくはなかった。



「凄いわ、愛鷹! なんていい眺め」

春の葬儀が終わって、志乃より背が伸びて高校生くらいになった愛鷹は

約束通り志乃を抱いて空を飛んだ。


「兄ちゃんも、こんな風景を見たのかしら?」

「飛行機はもっと高く飛んだよ」

「そっか」


しばらく無言で眼下の景色を見た志乃は

「わたしも、もっと年をとったら愛鷹より先にいなくなるわ。

すでに、すっかりおばちゃんだし。愛鷹が寂しくなったらどうしよう。

わたしの家族はアヤカシなんて伝説だって言うの。

…いっそ村に連れてきちゃおうかしら」


「見世物はごめんだな」

「そうよねー」

「それに心配しなくても、ここには仲間がいる。それより志乃は天寿を全うしろ」


「うん。頑張る。 そうだ、もしもわたしが生きているうちに、

家族の誰かに比十の能力が出たら、そのときはアヤカシの話をするわ」



そのまま志乃を抱えてバス停まで飛んで、そして別れたのが

元気な志乃を見る最後になった。



愛鷹が志乃たちと暮らした家の手入れをしながら

炭焼き小屋の近くに小屋を建てて暮らしはじめた頃、

街と村を行き来していた村人が志乃の入院を教えてくれた。


「会いに行けよ」

戸隠に背中を押されて、愛鷹は志乃の入院先に向かい最後の別れを惜しんだ。



読んでくださってありがとうございました。

次回、最終話です。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。