20・戦い終わって
戦争が終わって復興の日々が始まって
愛鷹たちが通っていた小学校は、もっと街に近い場所にある
他の小学校と統合された。
近くの村からは仕事がある都会に大勢の人が越して行き
やうと村からも上の学校へ進む者や仕事をするために
街へ都会へと行く者がいて、源太もその中の一人だった。
志乃や他の人間の子供たちは、源太をはじめ大人たちが
お金を出し合って借りた数軒の家で一緒に住み、共同生活をし、通学した。
村の学校の跡地には登山客のための山小屋とバス停ができて、
経営はやうと村のアヤカシと人間が行い、愛鷹が作る炭や狸族が作る小物が
お土産として並んだ。
鬼の大江は村に残って、空き家を塾にして愛鷹や雪丸たちに授業をしてくれた。
*
都会は生活が便利になっていった代わりに空気が汚れ
綺麗な水と空気がないと生きていけないアヤカシは、
もう近づけないうえにアヤカシの血を引く人間たちも
空気の悪さから具合が悪くなって村に戻ったり、
空気がきれいな街へ移り住んだりした。
*
不二さんと宝永さんはどうしているだろう。
愛鷹はたまに思い出すのだが、なんだかあの二人なら、
どこにいても何とかしてしまうのではないかと思うのだった。
やがて、アヤカシは村以外では伝説になっていった。
*
中学を卒業した後、縫物の学校へ行き街で働いていた志乃は19歳になり
嫁入りが決まった。
志乃は大人の女性らしくなっていたが、
愛鷹はまだ小学校の高学年くらいにしか見えない。
縁側に座って話し込む二人は、かつては兄と妹。
今は姉と弟のように見える。
「鞍馬さんの所へは行ってる?」
「ああ。修行は続けるよ」
「愛鷹も華菜ちゃんっていう子とー…」
「それはいいんだっ…けほっけほっ。声が…かすれる」
「人間だと声変わりの時期だと思うけど、同じ?」
「多分。けほほ」
「水分取って、喉を痛めちゃうから大声も出さないで。
落ち着くまで時間がかかるって」
「わかった」
「…母さんを頼んでいい?」
「もちろん。」
「たまに帰ってくるから」
「ダメだ。嫁に行くなら里帰りはほどほどに。
姉は弟の言う事を聞くものだ」
「あはは。そうだね」と、志乃が答えた。
愛鷹の声変わりが始まって、まわりの生活や物が変わっていったのを
志乃は少し寂しく思いながらも、新しい生活に期待をしていた。
*
「幸せに」
そう言って、昔のように愛鷹は志乃を抱えて、バス停まで送った。
「重い?」
「…ちょっと。でももう少し俺が大人になったら、きっと楽に抱えて飛べる」
「それ、楽しみに待ってる」
「ああ」
*
村に戻ると、入れ替わりに雪丸が旅に出る両親を見送っていた。
バス停とは反対の山へ向かったらしい。
「空弥さんたちはどこへ行ったんだ?」
「気ままな旅だって。わたしが祖父から名を継いだから、あとは頼むって
…つまり、両親は無期限で遊びに出かけた」
「継いだ名前は?」
「戸隠っていうんだ」
「そうか。これからもよろしく、戸隠」
読んでくださってありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。




