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翼よ、眠れ~アヤカシの末裔・外伝~  作者: 遠野まみみ


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20/22

20・戦い終わって

戦争が終わって復興の日々が始まって

愛鷹あしたかたちが通っていた小学校は、もっと街に近い場所にある

他の小学校と統合された。


近くの村からは仕事がある都会に大勢の人が越して行き

やうと村からも上の学校へ進む者や仕事をするために

街へ都会へと行く者がいて、源太もその中の一人だった。


志乃や他の人間の子供たちは、源太をはじめ大人たちが

お金を出し合って借りた数軒の家で一緒に住み、共同生活をし、通学した。


村の学校の跡地には登山客のための山小屋とバス停ができて、

経営はやうと村のアヤカシと人間が行い、愛鷹が作る炭や狸族が作る小物が

お土産として並んだ。


鬼の大江は村に残って、空き家を塾にして愛鷹や雪丸たちに授業をしてくれた。



都会は生活が便利になっていった代わりに空気が汚れ

綺麗な水と空気がないと生きていけないアヤカシは、

もう近づけないうえにアヤカシの血を引く人間たちも

空気の悪さから具合が悪くなって村に戻ったり、

空気がきれいな街へ移り住んだりした。



不二さんと宝永さんはどうしているだろう。

愛鷹はたまに思い出すのだが、なんだかあの二人なら、

どこにいても何とかしてしまうのではないかと思うのだった。


やがて、アヤカシは村以外では伝説になっていった。



中学を卒業した後、縫物の学校へ行き街で働いていた志乃は19歳になり

嫁入りが決まった。


志乃は大人の女性らしくなっていたが、

愛鷹はまだ小学校の高学年くらいにしか見えない。


縁側に座って話し込む二人は、かつては兄と妹。

今は姉と弟のように見える。


「鞍馬さんの所へは行ってる?」

「ああ。修行は続けるよ」

「愛鷹も華菜ちゃんっていう子とー…」

「それはいいんだっ…けほっけほっ。声が…かすれる」


「人間だと声変わりの時期だと思うけど、同じ?」

「多分。けほほ」

「水分取って、喉を痛めちゃうから大声も出さないで。

落ち着くまで時間がかかるって」

「わかった」


「…母さんを頼んでいい?」

「もちろん。」

「たまに帰ってくるから」

「ダメだ。嫁に行くなら里帰りはほどほどに。

姉は弟の言う事を聞くものだ」

「あはは。そうだね」と、志乃が答えた。


愛鷹の声変わりが始まって、まわりの生活や物が変わっていったのを

志乃は少し寂しく思いながらも、新しい生活に期待をしていた。



「幸せに」

そう言って、昔のように愛鷹は志乃を抱えて、バス停まで送った。


「重い?」

「…ちょっと。でももう少し俺が大人になったら、きっと楽に抱えて飛べる」

「それ、楽しみに待ってる」

「ああ」



村に戻ると、入れ替わりに雪丸が旅に出る両親を見送っていた。

バス停とは反対の山へ向かったらしい。


「空弥さんたちはどこへ行ったんだ?」

「気ままな旅だって。わたしが祖父から名を継いだから、あとは頼むって

…つまり、両親は無期限で遊びに出かけた」


「継いだ名前は?」

戸隠とがくしっていうんだ」


「そうか。これからもよろしく、戸隠」


読んでくださってありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

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