19・帰郷2
「昨夜、慎太郎の夢を見たわ。源ちゃんが帰ってくるって」
春が朝食を取りながらそう言った。
「だから源ちゃんは会いに出てこなかったんだね」
志乃は少し嬉しそうに外を見た。
*
昼過ぎになって、国民服を着て荷物を持った源太がやってきた。
もう、帽子に錨のマークは付いていない。
「おばちゃんっ」
縁側にいた春に駆け寄って、荷物を放り出して土の上で土下座した。
「ごめんっ。俺だけ生き残ってごめんなさいっ」
「なんで『ごめん』なのよ。『ただいま』でしょう」
縁側から降りて、源太の背中をさすった。
「よく帰ってきたね。あんた、船が沈んで、でも仲間を二人も抱えて
何キロも泳いだんだって? 慎太郎はね、ちゃんと見ていて教えてくれたよ。
さすが河童の末裔だ。大手柄だわ」
「おばちゃん…た…ただいま」
「お帰り。 自分の家には行ったの? 父さんと母さんに
同じように、ただいまって言うんだよ」
「…うん」
「源ちゃんだ」 「源太っ」
志乃が源太に飛びついて、愛鷹は隣にしゃがんだ。
「ただいまっ」源太は二人を抱えて、思い切り息を吸った。
親友を亡くしたこの苦さは、しばらく続くだろう。
自分が、慎太郎の分もこの家族を守らねば。
そう思う源太だった。
読んでくださってありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。




