22・エピローグ
タタタタ… タタタ。
眼帯の箱を持って、美和は愛鷹の炭焼き小屋へ向かった。
「ここまで来るのは珍しいな」
愛鷹が作業の手を止めて美和を迎える。
「は…はあ、はあ…。さすがに息切れた。」
「どうした?」
愛鷹の顔を見たら、とても切なくて言葉が出なくなった。
「あの…あのね。志乃おばあちゃんからいろいろ聞いて…それで…」
「志乃がいたの?」
「うん。たまに村の中を歩いていて、わたしが来ると声をかけてくれて
それで、今日は昔の話をたくさんしてくれて…」
愛鷹の服の袖を掴んだら、ポロポロと泣けてきてしまった。
「…愛鷹が生きていて、よかった…」
「泣くような事じゃない」
「泣くような事だよ」
愛鷹がはめていた軍手を外して、ゆっくりと美和の頭をなでた。
*
美和は箱を差し出した。
「志乃おばあちゃんから。渡しそびれていたんだって」
「革細工か。いつの間に」
黒皮の眼帯はぴったりと馴染んだ。
「似合う。カッコいい」うんうんと美和がうなずいた。
「…多嘉良に託さなかったのは、俺がからかわれると思ったからかな。
…志乃はいないのか?」
「うん、渡せるから満足したみたい」
「いつまでも死人が現世にいるものじゃないからな。
届けてくれてありがとう。さて、帰るか」
美和を抱えて愛鷹は飛んだ。
「もう日が暮れるからな。その様子だとライトも何も持ってないだろう?」
「えへへ。正解です」
「小さい頃、よく飛んでもらったね」
「美和が泣くたびに藤子に渡されたからな。なぜか飛ぶと泣き止んだ」
「お母さん、愛鷹の事を一番信用してるからわたしを預けたんだよ。
わたしも空から見た景色が好きだったの。
ずっと先まで見えて気持ち良かった。今もね」
「…愛鷹は、昔は志乃おばあちゃんのお兄ちゃんで、弟で。
今はわたしのお兄ちゃんだね」と笑う美和に
「そうかもな」と、愛鷹は答えた。
*
「おー、飛んどるなぁ」
そんな様子を100歳近くなった源太が仰ぎ見て
大江先生の塾から帰る、河童族の早瀬と梓が「こんばんはー」と
声をかけた。
村は、今日も平和だ。
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