15・終戦
「おかげさまで助かりました。ありがとうございました」
愛鷹が人魚の古宇利にお礼を言って、他の者と共に洞窟から出ると
夜明け間近で海には戦艦の明かりが光っていた。
*
「みな、くる。こっち。自分がたすける」
手当をしてもらっていたアメリカ兵が声をかけた。
「交渉してくれるってさ。人間さんたちは行くといい。
我々はそれぞれの場所へ帰るよ」
宝永に言われて、人間たちはアヤカシたちに手を振って
アメリカ兵について行った。
「助けておいてよかっただろ?」
不二が愛鷹に笑いかけた。
アヤカシたちも、それぞれに帰っていく。
本土から来たアヤカシは、地元のアヤカシに匿ってもらうために
山に、森に、海に、別れて行った。
「帰ったら、人間じゃない生き物に助けられた。ってアメリカで言うのかな?」
愛鷹が不二に聞いた。
「仲間の元へ帰ったら、アヤカシの事は忘れるように呪っておいた」
しれっと言う不二に、宝永が
「の…呪い?不二ぃぃ」と焦った。
「間違い。呪いかけておいた。呪いも呪いも紙一重なのっ。
助けたのは日本人って事になってる。日本人側にもそうしておいた」
「ここでの戦は終わったが、本土はまだ続いているらしい。
さて、どうしようか。 やっぱり捕虜の道が安全かな?
…と、羽根のある愛鷹はそうはいかないか。
うーん、我々もどこかのアヤカシさんに匿ってもらうか…」
不二が空を仰ぎ見た。
*
米軍の「戦争、終わりました。出てきなさーい」という
拡声器の呼びかけが時々聞こえた。
「出てきたら殺さない。出てきなさい」と、言い続けていた。
しばらく森を歩いていた時だった。
「きゃああ」と女性の声が響いた。
大木の向こうで3人の米兵が二人の少女に襲いかかっている。
戦が終わったと聞いて、洞窟から出てきた学生を襲っているのだった。
落ちていた太い木の枝を拾って、愛鷹が素早く米兵の足に打ち込んだ。
胴に、頭に次々打って、あっという間に3人を倒してしまった。
「…俺の出番が…」 弓を構えた宝永ががっかりしてうなだれた。
「あらま、さすが先代を継いだ子。戦い慣れしているな」不二が笑った。
「で、宝永はその弓どこから?」
「洞窟に武器庫を作って置いておいたのさ。念のために」
「なるほどね」
*
不二は倒れている米兵に近づくと、下半身に手を置いて何か処置した。
「何した?」
「もう悪さができないように、血管と神経をいじって
男として一生役に立たなくした。えっへっへっへ」
「ひぃいいい。やめて差し上げて」
「もうやっちゃった。殺さないんだから優しいよね、わたし。
二度と女の子を襲おうなんて思わないはず」
不二がニコニコと笑った。
「何?何の話?」
不思議そうな愛鷹に、「子供はまだ知らなくていいんです」と
宝永は情けない顔をした。
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