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翼よ、眠れ~アヤカシの末裔・外伝~  作者: 遠野まみみ


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14/22

14・野戦病院2

時々、遠くで砲撃の音が聞こえた。

そのたびに地上と海からケガをした人間やアヤカシがやって来た。


本来なら、血や膿の匂いで悪臭がしただろうが、

烏天狗が風を起こして空気の入れ替えをしてくれたおかげで

新鮮な空気が吸えた。


食事は?米やパンや野菜はどこから手に入れているのかと思ったら

人間と協力して米軍の基地を襲っているのだと、宝永が教えてくれた。


この頃はまだ、アヤカシを自然に受け入れる人間が沢山いたのだ。


「狐さんは素早いからな。やるもんだろ?やられっぱなしでたまるもんか」と

宝永がにやりと笑った。

「ついでにクラッカーとチョコとかパイナップルの缶詰もいただいてきた。

あとで分けるよ」

宝永の言葉に、久しぶりにクスリと笑った愛鷹あしたかだった。



「あー、もう少し治療のできる比十ひとはいないのか?人間の医者でもいい。

人手不足もいいとこだ」

不二が愚痴って、そのまま愛鷹の横に倒れ込んだ。

自分の体力を回復する暇もないらしい。


「不二さん?生きてます?」年配の女性が不二の顔を覗き込んで、

心配そうに尋ねた。

与那覇よなはさん、あとよろしく」

「あなたほどはできないけれど、比十族の意地にかけて頑張りますわ。

だから少し休んでください」

「…少しだけぇ?」

「少しだけです」

「はい…」



横になった不二を見ていると、以前に自分の横で寝ていた志乃を思い出す。

つい、髪をなでてしまった。


「ふはは。ちょっと気持ちいいな。 

愛鷹、もう少し元気になったら手伝って。 いいかな?」

「はい」



包帯が取れた後は眼帯で目を覆った。

「独眼竜だな。強そうだ。 

名を継いだなら君の父上と変わりなく強いだろ?」と

不二が愛鷹の頭をポンポンとした。


「父上を知っているんですか?」

「ちょっとだけ。…と、行かなきゃ。 またな」


愛鷹は、独眼竜か。不思議だ。不二の言葉は『何とかなる』という気にさせる。

そう思いながら不二たちを手伝って、患者の輸送、風起こし、

食事の手伝いをした。 隻眼でもできる事はする。



「不二さんと宝永さんは、俺の両親を知っているんですか?」

ずっと聞きたかったことを、少し落ち着いたので聞いてみた。


「少しね。一緒に旅した事がある。二人は大人で、頼りになる兄さん姐さんで

わたしはまだ10代前半の、か弱い女の子で~…」

と、なよなよして見せた不二。

「か弱い女の子ぉ? 凶悪な暴れ馬で…」 宝永が訂正する。

「あぁん?」   

「…すいません。か弱い少女でした」


「まぁ、とにかく住んでいた山が近かったから、よく会ってたよ。

君が姐さんのお腹に宿って、わたしと宝永は国の中を見る旅に出て

会わなくなってしまって、やがて先代は亡くなってしまった。

簡単に言うと、そんな感じ」


不二の説明は本当に簡単だったが、両親の知り合いに会えたことは

愛鷹にとって嬉しい出来事だった。



やがて外が静かになって、「戦が終わったぞ」という狐族の声がした。



読んでくださってありがとうございました。

もう少し続きますので、読んでくださると嬉しいです。

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