14・野戦病院2
時々、遠くで砲撃の音が聞こえた。
そのたびに地上と海からケガをした人間やアヤカシがやって来た。
本来なら、血や膿の匂いで悪臭がしただろうが、
烏天狗が風を起こして空気の入れ替えをしてくれたおかげで
新鮮な空気が吸えた。
食事は?米やパンや野菜はどこから手に入れているのかと思ったら
人間と協力して米軍の基地を襲っているのだと、宝永が教えてくれた。
この頃はまだ、アヤカシを自然に受け入れる人間が沢山いたのだ。
「狐さんは素早いからな。やるもんだろ?やられっぱなしでたまるもんか」と
宝永がにやりと笑った。
「ついでにクラッカーとチョコとかパイナップルの缶詰もいただいてきた。
あとで分けるよ」
宝永の言葉に、久しぶりにクスリと笑った愛鷹だった。
*
「あー、もう少し治療のできる比十はいないのか?人間の医者でもいい。
人手不足もいいとこだ」
不二が愚痴って、そのまま愛鷹の横に倒れ込んだ。
自分の体力を回復する暇もないらしい。
「不二さん?生きてます?」年配の女性が不二の顔を覗き込んで、
心配そうに尋ねた。
「与那覇さん、あとよろしく」
「あなたほどはできないけれど、比十族の意地にかけて頑張りますわ。
だから少し休んでください」
「…少しだけぇ?」
「少しだけです」
「はい…」
*
横になった不二を見ていると、以前に自分の横で寝ていた志乃を思い出す。
つい、髪をなでてしまった。
「ふはは。ちょっと気持ちいいな。
愛鷹、もう少し元気になったら手伝って。 いいかな?」
「はい」
*
包帯が取れた後は眼帯で目を覆った。
「独眼竜だな。強そうだ。
名を継いだなら君の父上と変わりなく強いだろ?」と
不二が愛鷹の頭をポンポンとした。
「父上を知っているんですか?」
「ちょっとだけ。…と、行かなきゃ。 またな」
愛鷹は、独眼竜か。不思議だ。不二の言葉は『何とかなる』という気にさせる。
そう思いながら不二たちを手伝って、患者の輸送、風起こし、
食事の手伝いをした。 隻眼でもできる事はする。
*
「不二さんと宝永さんは、俺の両親を知っているんですか?」
ずっと聞きたかったことを、少し落ち着いたので聞いてみた。
「少しね。一緒に旅した事がある。二人は大人で、頼りになる兄さん姐さんで
わたしはまだ10代前半の、か弱い女の子で~…」
と、なよなよして見せた不二。
「か弱い女の子ぉ? 凶悪な暴れ馬で…」 宝永が訂正する。
「あぁん?」
「…すいません。か弱い少女でした」
「まぁ、とにかく住んでいた山が近かったから、よく会ってたよ。
君が姐さんのお腹に宿って、わたしと宝永は国の中を見る旅に出て
会わなくなってしまって、やがて先代は亡くなってしまった。
簡単に言うと、そんな感じ」
不二の説明は本当に簡単だったが、両親の知り合いに会えたことは
愛鷹にとって嬉しい出来事だった。
*
やがて外が静かになって、「戦が終わったぞ」という狐族の声がした。
読んでくださってありがとうございました。
もう少し続きますので、読んでくださると嬉しいです。




