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翼よ、眠れ~アヤカシの末裔・外伝~  作者: 遠野まみみ


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12/22

12・野戦病院

ときどき、うめき声が聞こえた。

松明の薄明りの中、何人かのアヤカシらしき者が横になっていた。

狸、狐、鬼も烏天狗もいる。


その中に右目から頭にかけてと、腰と足にも包帯をグルグルに巻かれた

愛鷹あしたかも寝ていた。


消えそうな松明に青白い炎を灯す狐族がいた。


「狐…雪丸…?」

愛鷹がつぶやくと

「わたしは葛の葉。狐族の、何代目かの葛の葉」と答えが返ってきた。


「痛いところはない? 痛ければすぐ不二さまを呼ぶ」

「だい…じょうぶ…」

かなりの重傷だったが、痛みはほとんどなかった。

いつか春がしてくれたように、痛み止めをしてくれているらしい。



洞窟はいくつも通路が分かれていて、愛鷹のいる場所とは反対側からも

声が聞こえた

そちらが人間のスペースと思われた。


上半身を起こしてお粥がすすれるようになった愛鷹に

「かなり良いみたいだね」と宝永ほうえいが声をかけた。


「ありがとうございます。…あの、慎太郎は?」

「あー…あの男の人か。うん…何て言ったらいいか…。つまり…」

言いにくそうな宝永を察して、

「死んだんですね?」

と愛鷹が確かめるように言った。


「うん。 魂がここに来て、君を助けてくれって言ってた」

「そう……」


お粥のお椀を握りしめた手が震えた。

慎太郎の優しい笑顔と、健康そうな白い歯が浮かんだ。


ぽと…  ぽとん…ぽとん…。

椀の中にこぼれ落ちる涙を、ぬぐう余裕などなかった。


こんな想いは3度目だ。 両親と慎太郎と…。

天寿を全うせずにいなくなる。 もう、こんなのは…嫌だ。


宝永は黙って愛鷹の背中をゆっくりとさすった。



慎太郎はもういない。

慎太郎が褒めてくれた千里眼も、もうない。


しばらく、眠れない日が続いた。



読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。


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