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最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた~ぷるぷる相棒が実は最強すぎる~  作者: ローナ


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9/40

闇の力を得た元仲間が、俺を狙って動き出す

 その日の夜。


 町の空気は、どこか湿っていた。


 昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、石畳に足音だけが響く。


 ユウは、宿へ向かって歩いていた。


「監視感知」


 足元でスライムが囁く。


「三方向。距離は近い」


「……早いな」


 思ったよりも、動きが速い。


「排除するか?」


「いや」


 ユウは立ち止まらずに言う。


「向こうから来るなら、その方がいい」


 逃げる理由はない。


 むしろ——


(強いやつほど、価値がある)


 口元がわずかに上がる。


 路地に入った瞬間。


 気配が、変わった。


「——止まりなさい」


 聞き覚えのある声。


 ユウは足を止めた。


 ゆっくりと振り返る。


 そこに立っていたのは——


「……ミアか」


 だが、昼間とは別人だった。


 ローブの色は黒に変わり、目の奥に光がない。


 周囲の空気が、わずかに歪んでいる。


「ターゲット確認」


 スライムが小さく揺れる。


「魔力反応、異常値」


「だろうな」


 ユウは一歩だけ前に出た。


「何しに来た」


「決まってるでしょ」


 ミアが笑う。


 その笑みは、以前のものではない。


「取り返しに来たのよ」


「何を?」


「全部」


 短く言い切る。


「私の立場も、力も——」


 視線が突き刺さる。


「あなたから」


 空気が震える。


 魔力が膨れ上がる。


「……へえ」


 ユウは軽く息を吐いた。


「強くなったな」


 素直な感想だった。


 昨日までのミアとは、明らかに違う。


「当然よ」


 ミアが一歩踏み出す。


「私は“選んだ”の」


 その足元に、黒い魔法陣が浮かぶ。


「力を」


 次の瞬間。


 炎が爆ぜた。


 だが、それは以前の火球とは違う。


 黒い炎。


 揺らぎながら、空間を歪ませる。


「——っ!」


 ユウは横に飛ぶ。


 着弾。


 石畳が、溶ける。


「……危ねえな」


 軽く笑う。


 だが、目は笑っていない。


「解析開始」


 スライムが囁く。


「高密度魔力。属性変質あり」


「コピーできるか?」


「接触が必要」


「だろうな」


 ユウは足を踏み込む。


「逃げないの?」


 ミアが歪んだ笑みを浮かべる。


「馬鹿ね」


「逃げる理由がない」


 短く答える。


 そのまま、一直線に距離を詰める。


「来るなら——」


 ミアが両手を広げる。


「消し飛びなさい!」


 黒炎が広がる。


 道を塞ぐように。


 だが——


 ユウは止まらない。


(見える)


 流れ。


 隙間。


 魔力の“薄い場所”。


 体が勝手に動く。


 《俊敏》。


 《強靭》。


 《硬化》。


 重ねる。


 突破する。


「なっ……!?」


 ミアの目が見開かれる。


 次の瞬間——


 ユウの手が、彼女の腕に触れた。


 ビリッ。


 強烈な衝撃。


 今までとは違う。


 深く、重い。


 頭の奥に、何かが“流れ込む”。


 ――《黒炎魔法》解析開始


「……っ!」


 思わず息が詰まる。


 情報量が多すぎる。


「負荷、増大」


 スライムが警告する。


「無理するな」


「……いや」


 ユウは歯を食いしばる。


「いける」


 流れを掴む。


 制御する。


 押し込む。


 そして——


 抜き取る。


 ――《黒炎魔法》一時取得


「……取った」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 ミアの表情が、崩れた。


「……は?」


 信じられないものを見る目。


「今、何したの……?」


「言っただろ」


 ユウは手を開く。


 そこに——


 黒い炎が灯る。


「借りるって」


 ミアの顔が青ざめる。


「そんなの……ありえない……」


「だろうな」


 否定しない。


「でも」


 ユウは一歩前に出る。


「悪くない力だ」


 黒炎を軽く振るう。


 空気が歪む。


「返してほしいなら——」


 視線を合わせる。


「取り返してみろよ」


 挑発。


 明確な一線。


 ミアの中で、何かが切れた。


「……ふざけるなああああ!!」


 魔力が爆発する。


 路地全体が揺れる。


「次、来るぞ」


 スライムが告げる。


「大規模攻撃」


「いいね」


 ユウは笑った。


 楽しそうに。


「それ、全部もらう」


 夜の路地で。


 二人の衝突が、さらに激しくなる。


 その中心で——


 ユウは、確信していた。


(やっぱり——)


 強いやつほど。


 “奪う価値がある”。

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