最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた〜ぷるぷる相棒と選び続けた果てに
朝。
王都に、やわらかな光が差し込む。
パンの匂い。
遠くの笑い声。
昨日と同じで、でも確かに違う“今日”。
「……平和だな」
ユウは小さく伸びをする。
「はい」
ルミが肩の上で、ぷるりと揺れる。
「非常に安定しています」
「前なら“退屈”って言ってたかもな」
ユウは苦笑する。
かつては、刺激ばかりを求めていた。
戦い、奪い、世界をねじ曲げるほどの力。
だが今は——
「悪くない」
ただそれだけで、十分だった。
二人は街を歩く。
誰かが歌い、誰かが笑い、誰かが迷っている。
「ねえ!」
子どもが走ってくる。
「この前のお兄ちゃん!」
「おう」
「ぼく、決めたよ!」
「何をだ?」
「パン屋になる!」
満面の笑み。
「いいじゃん」
ユウは笑う。
「じゃあ最高のやつ作れよ」
「うん!」
元気よく走っていく。
「……」
ユウは、その背中を見送る。
「どう思いますか」
ルミが聞く。
「何が?」
「この世界」
ユウは少しだけ考える。
そして——
「完璧じゃねえな」
「はい」
ルミも否定しない。
「問題は多いです」
「でも」
ユウは笑う。
「“続く”」
一拍。
「それで十分だろ」
風が吹く。
新しい一日が、始まっていく。
「……ユウ」
ルミが、少しだけ静かに言う。
「あなたは、満足していますか」
ユウは足を止める。
空を見上げる。
長かった。
戦いも、選択も。
だが——
「まあな」
短く答える。
「やりたいようにやったし」
「最後も、選んだ」
振り返る。
「後悔はねえよ」
ルミが、ふわっと揺れる。
「……よかったです」
ほんの少し、嬉しそうに。
「で、お前は?」
ユウが聞く。
「満足してるか?」
ルミは、一瞬だけ考える。
そして——
「はい」
はっきりと答える。
「あなたと出会えたので」
ユウは、少しだけ照れたように笑う。
「それはずるいだろ」
二人は、また歩き出す。
どこへ行くかは決めていない。
何をするかも決めていない。
だが——
それでいい。
選べるから。
何度でも、やり直せるから。
「なあルミ」
「はい」
「次は何する?」
ルミが、少しだけ考える。
そして——
「……面白そうなこと、探しましょう」
ユウは笑う。
「いいね」
空は高く、どこまでも広い。
この世界は、もう誰かに決められるものじゃない。
選び続ける者たちのものだ。
だから——
物語は、ここで終わり。
そして同時に、ここから始まる。
――完――




