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最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた~ぷるぷる相棒が実は最強すぎる~  作者: ローナ


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選ばない自由もある世界で俺、最後に“何者でいるか”を決める

夜。


 王都の灯りが、星みたいに瞬いている。


 騒がしさは残っているのに、どこか静かだ。

 誰もが“自分で選んでいる”というだけで、空気はこんなにも違う。


「……落ち着かねえな」


 ユウが屋根の上で寝転ぶ。


「慣れていないだけです」


 ルミが隣で小さく揺れる。


「そのうち“普通”になります」


「それもそれで怖いけどな」


 ユウは夜空を見る。


 この世界は、もう“完成”している。


 敵もいない。

 支配もない。

 ルールも、強制ではない。


「……で」


 ぽつりと呟く。


「俺は何なんだ?」


 ルミが、少しだけ動きを止める。


「……役割、ですか?」


「いや」


 首を振る。


「役割じゃない」


 一拍。


「“何者でいるか”だ」


 風が吹く。


 遠くで笑い声がする。


 誰も、ユウを必要としていない。


 それは——


 悪いことじゃない。


「……自由ですね」


 ルミが静かに言う。


「そうだな」


 ユウは目を閉じる。


 思い返す。


 戦っていた頃。

 奪っていた頃。

 世界に抗っていた頃。


 あの時は、常に“理由”があった。


 だが今は——


「理由がねえ」


「はい」


 ルミは否定しない。


「だからこそ、選べます」


 ユウは、ゆっくりと起き上がる。


「……選ぶ、か」


 視線の先。


 街の中で、何かが起きている。


 人が集まり、ざわめいている。


「行くか」


「はい」


 二人は屋根から飛び降りる。


 人混みの中心へ。


 そこには——


 一人の少女がいた。


 小さな体。

 震える手。


「……どうした」


 ユウが声をかける。


「……選べないの」


 少女は、泣きそうな顔で言う。


「どっちも大事で……」


 手には、二つの紙。


 ひとつは“家族と残る”。

 もうひとつは“夢を追って旅に出る”。


「……なるほどな」


 ユウは、少しだけ笑う。


「いいじゃん」


「え?」


「どっちも正解だろ」


「でも……一つしか選べない」


「そうか?」


 ユウはしゃがみ込む。


「“今は残る”って選んで」


「あとで“出る”って選べばいい」


 少女が、目を瞬かせる。


「……そんなの、あり?」


「ありだろ」


 ユウは軽く笑う。


「この世界、そういう仕様にしたし」


 少しの沈黙。


 そして——


「……うん」


 少女は、紙を一つ折る。


「今は……ここにいる」


 顔に、少しだけ笑顔が戻る。


「ありがとう」


 走っていく。


 人混みも、少しずつ散っていく。


「……」


 ユウは立ち上がる。


「今の」


 ルミが言う。


「あなたの役割に近いですね」


「かもな」


 ユウは空を見る。


「選べるけど、迷うやつはいる」


「それをちょっとだけ押す」


「それくらいがちょうどいい」


 ルミが、静かに揺れる。


「では」


「あなたは“選ばせる者”ですね」


「……違うな」


 ユウは首を振る。


「選ばせるんじゃない」


 一拍。


「“選べるって思い出させるだけ”だ」


 ルミが、ほんの少し嬉しそうに揺れる。


「……それが、あなたですね」


「そういうことにしとくか」


 ユウは笑う。


 肩の力が抜ける。


 もう、戦わなくていい。


 奪わなくていい。


 それでも——


 やることはある。


「行くか、ルミ」


「はい」


 二人は、また歩き出す。


 選択が溢れる世界で。


 迷う誰かのそばへ。

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