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最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた~ぷるぷる相棒が実は最強すぎる~  作者: ローナ


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4/40

役立たず扱いされた俺、奪ったスキルで評価が揺らぎ始める

 翌日の朝は、昨日よりも少しだけ空気が軽かった。


 体が慣れてきている。


 足の運び、呼吸のリズム、視界の捉え方。すべてが“噛み合い始めている”感覚。


「定着率、上昇」


 足元でスライムが小さく揺れる。


「《俊敏》は準常時化。《怪力》は短時間維持が可能」


「便利だな」


「当然」


 相変わらず淡々としているが、わずかに誇らしげだ。


 ユウはギルドへ向かった。


「遅い」


 中に入ると、ミアが腕を組んでいた。


「まだ時間前だろ」


「準備が遅いって意味」


「はいはい」


 軽く流す。


 レオンは壁にもたれて地図を見ている。リナはその隣で、少しだけ気まずそうに立っていた。


 昨日の戦闘以降、空気が変わった。


 “無能”ではなくなったが、“信用”には程遠い。


 ちょうどいい距離だ。


「今日の依頼だ」


 レオンが顔を上げる。


「少し奥に入る。ゴブリンに加えて、オークの目撃情報もある」


「オーク?」


 ミアが眉をひそめる。


「Eランクじゃないでしょ」


「単体ならD寄りだな。だが数は少ないはずだ」


 リスクはある。


 だが、報酬も上がる。


「どうする?」


 レオンが三人を見る。


 ミアは一瞬だけ考え、肩をすくめた。


「やるしかないでしょ」


 リナは小さく頷く。


 そして視線が、ユウに向く。


「俺は問題ない」


「……そうか」


 レオンは短く答えた。


 完全には信用していない。だが、戦力として“無視できない”ラインに来ている。


 森の奥は、昨日よりも静かだった。


 鳥の声も少ない。


 その分、気配が濃い。


「気をつけろ」


 レオンが剣に手をかける。


 その瞬間。


 ドン、と重い足音。


 木の陰から現れたのは——


「……でかいな」


 オークだった。


 人型だが、明らかに人間ではない。


 太い腕。分厚い皮膚。鈍い目。


「一体だけだ!」


 レオンが叫ぶ。


「囲んで削る!」


 ミアが詠唱を始める。


 リナは後方に下がり、回復の準備。


 ユウは——


 一歩、遅れて動いた。


(観察)


 オークの動きは遅い。


 だが、重い。


 一撃をもらえば終わるタイプだ。


 レオンが斬りかかる。


 だが——


 ガキン、と音がして弾かれた。


「硬っ……!」


 ミアの火球が直撃する。


 だが、皮膚を焦がす程度。


「効きが悪い!」


「下がれ!」


 オークが腕を振るう。


 レオンが吹き飛ばされる。


「ぐっ……!」


「レオン!」


 リナが回復を飛ばす。


 状況が、一気に悪化する。


(……いいね)


 ユウは静かに息を吐いた。


 こういう瞬間が、一番“うまい”。


「前に出る」


「待て、ユウ!」


 レオンの声を無視する。


 オークがこちらを見る。


 ゆっくりと、だが確実に距離を詰めてくる。


「接触を推奨」


 スライムが囁く。


「わかってる」


 タイミングを測る。


 一歩。


 二歩。


 オークが腕を振り上げる。


(今)


 地面を蹴る。


 《俊敏》が全身に広がる。


 視界が加速する。


 振り下ろされる腕を紙一重で避ける。


 そのまま——


 触れる。


 分厚い皮膚に、指先が触れた瞬間。


 ビリッ、と強い衝撃。


 頭の奥に、重い情報が流れ込む。


 ――《硬化》解析完了


 ――《怪力(上位)》一時取得


「……きた」


 次の瞬間。


 体が変わる。


 重さが増す。だが、動ける。


 ユウは拳を握った。


「お前の力、借りるぞ」


 オークの腹に、拳を叩き込む。


 ドン、と鈍い音。


 巨体が、わずかに揺れる。


「は……?」


 ミアの声。


 ユウはそのまま、もう一撃。


 今度は、明確に効いた。


 オークが後ずさる。


「嘘でしょ……」


 リナが呟く。


 レオンは、言葉を失っていた。


「続ける」


 ユウは踏み込む。


 今度は、逆にオークの攻撃を受け止める。


 衝撃。


 だが、耐えられる。


(これが《硬化》か)


 理解する。


 そして——


「終わりだ」


 全力で拳を叩き込む。


 オークの体が、後ろへ吹き飛ぶ。


 木にぶつかり、そのまま崩れ落ちた。


 静寂。


 誰も動かない。


 風の音だけが響く。


「……お前、本当に何なんだ」


 レオンが、ようやく口を開いた。


 その目は、昨日とは違う。


 警戒と、そして——


 明確な“恐れ”。


「さあな」


 ユウは肩をすくめる。


「俺もよくわかってない」


 半分は嘘だ。


 だが、全部を話す必要はない。


「……ふざけるなよ」


 ミアが睨む。


「そんなの、ありえないでしょ」


「そうかもな」


 否定しない。


 できない。


「でも、結果は出てる」


 オークの死体を指さす。


「問題あるか?」


 ミアは言葉に詰まる。


 リナは、ただユウを見つめていた。


 何かを確かめるように。


「……助かったのは事実だ」


 レオンが低く言う。


「だが、正直に言う」


 一歩、近づいてくる。


「お前は危険だ」


 その言葉に、ユウは少しだけ笑った。


「今さらだろ」


「……そうだな」


 レオンも苦く笑う。


 帰り道。


 空気は重かった。


 誰も多くを話さない。


 だが——


 変わっていた。


 明らかに。


 “無能”ではない。


 “得体の知れない何か”。


 それが、ユウの位置になっていた。


「評価が変化」


 スライムが小さく囁く。


「恐怖と依存の混合状態」


「いい感じだな」


「長期的には不安定」


「それでいい」


 ユウは空を見上げた。


 雲がゆっくりと流れている。


「その方が、崩れるときが面白い」


 スライムが沈黙する。


 そして。


「理解した」


 短く答えた。


 町に戻る。


 報酬を受け取る。


 ギルドの中で、視線が集まる。


 オーク討伐の話が、すでに広がっているらしい。


「……あいつか?」


「スキルなしって聞いたけど」


「嘘だろ」


 ざわめき。


 ユウは気にしない。


 むしろ、好都合だ。


「なあ、ユウ」


 レオンが低く言う。


「明日も来るか?」


「当然」


「……そうか」


 その一言に、いろいろな意味が込められている。


 歓迎ではない。


 拒絶でもない。


 ただ——


 必要とされている。


 その曖昧さが、一番いい。


 外に出る。


 夕焼けが町を染めている。


「次の最適解を提示する」


 スライムが言う。


「より高ランクの対象との接触」


「だろうな」


「このパーティでは限界が近い」


 ユウは少しだけ考える。


 そして、笑った。


「もう少しだけ使う」


「理由は?」


「決まってるだろ」


 ギルドの方をちらりと見る。


「“タイミング”がある」


 スライムが、ゆっくりと揺れる。


「……追放、か」


「そう」


 短く答える。


「一番うまい瞬間だ」


 風が吹く。


 町の喧騒が、どこか遠くに聞こえる。


 ユウは静かに歩き出した。


 その時を、待ちながら。

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