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最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた~ぷるぷる相棒が実は最強すぎる~  作者: ローナ


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無能扱いのはずの俺、実力差を見せつけて主導権を握り始める

 翌朝。


 ギルド前に立った瞬間、空気の“温度”が昨日と違うとわかった。


 視線が集まる。


 露骨ではないが、確実に向けられている。


「……あいつだ」

「オーク倒したって」

「でもスキルなしなんだろ?」


 ひそひそ声。


 好奇と警戒が混じった視線。


 ユウは気にしない。むしろ、その反応が心地いい。


「注目度、上昇」


 足元でスライムが淡々と告げる。


「行動の影響範囲が拡大している」


「いいことだ」


「リスクも増大」


「知ってる」


 軽く答え、扉を押す。


「来たか」


 レオンが先に気づいた。


 その声に、ミアとリナも振り向く。


 昨日までの“無関心”は消えていた。


 代わりにあるのは——


 測るような目。


「……遅くないのね」


 ミアが腕を組んだまま言う。


「遅刻したら文句言うんだろ?」


「当然でしょ」


「なら問題ない」


 短い会話。


 だが、どこかピリついている。


「今日の依頼だ」


 レオンが地図を広げる。


「森のさらに奥。オークの巣の調査」


「……昨日より危なくない?」


 リナが不安そうに言う。


「ああ。だからこそ報酬も高い」


 レオンは一瞬だけユウを見る。


「戦力が増えたからな」


 はっきり言った。


 昨日までは“数合わせ”。今日は“戦力”。


 わかりやすい変化だ。


「どうする?」


 レオンが全員を見る。


 ミアはため息をついた。


「やるしかないでしょ。ここで引いたら、昨日の意味がない」


 リナも小さく頷く。


 視線が、最後にユウへ。


「俺は賛成」


「……決まりだな」


 レオンが地図を畳む。


 森の奥は、昨日以上に静かだった。


 空気が重い。


 音が吸われるような感覚。


「気配が濃い」


 スライムが囁く。


「複数個体を確認」


「数は?」


「五以上。オークを含む」


 悪くない。


 むしろ、都合がいい。


「慎重に行くぞ」


 レオンが剣を抜く。


 その瞬間——


 木々の奥から、影が動いた。


「来る!」


 ゴブリンが三体、続けてオークが二体。


 数が多い。


「分断する!」


 レオンが叫ぶ。


「ミア、後衛を狙え!」


「わかってる!」


 火球が飛ぶ。


 だが、数に押される。


 ゴブリンが回り込み、リナへ向かう。


「きゃっ——!」


 危ない。


 その瞬間、ユウは動いていた。


 地面を蹴る。


 《俊敏》が自然に発動する。


 もう“意識しなくても使える”レベルだ。


 ゴブリンの前に回り込む。


 腕を掴む。


 ビリッ。


 ――《短剣術》解析完了


「へえ、こういうのもあるのか」


 そのまま、動きをなぞる。


 刃の軌道。体の使い方。


 ゴブリンの武器を奪い、逆に首元へ。


 一撃。


 静かに倒れる。


「速すぎ……」


 リナが呟く。


 だが、まだ終わっていない。


 オークが突っ込んでくる。


「ユウ、下がれ!」


 レオンの声。


 だが——


「問題ない」


 ユウは前に出る。


 オークの腕が振り下ろされる。


 避ける。


 触れる。


 ビリッ。


 ――《硬化》再取得


 体が重くなる。


 だが、もう慣れている。


「遅い」


 踏み込む。


 拳を叩き込む。


 ドン、と音が響く。


 オークがよろめく。


 その隙に、レオンが斬り込む。


「はああっ!」


 連携。


 自然と成立する。


 もう“雑用”ではない。


「ミア、今!」


「任せて!」


 火球が炸裂する。


 オークが倒れる。


 残り一体。


 ユウは一瞬だけ考えた。


(主導権、取るか)


 そして——


「レオン、右から来る」


「は?」


「三秒後に振る」


「……!」


 レオンは迷わなかった。


 言われた通りに動く。


 次の瞬間。


 オークの腕が、まさにその位置を薙いだ。


「……当たるところだった」


「だから言った」


 ユウは淡々と答える。


 そのまま接近。


 触れる。


 コピー。


 拳。


 終わり。


 戦闘が終わる。


 誰もすぐには動かなかった。


「……今の」


 ミアが口を開く。


「予測、したの?」


「まあな」


「そんなの……」


 言葉が続かない。


 レオンがゆっくりと剣を収める。


 そして、ユウを見る。


「お前、戦い方が変わったな」


「そうか?」


「昨日までは“強いだけ”だった」


 一歩近づく。


「今日は、“支配してる”」


 核心を突く言葉。


 ユウは少しだけ笑った。


「いい表現だな」


 否定はしない。


 する必要もない。


「……指示、もう一回出せるか?」


 レオンが言う。


「さっきみたいに」


 完全に、立場が変わった。


 指示を出す側と、従う側。


「いいけど」


 ユウは軽く肩をすくめる。


「従うのか?」


「合理的ならな」


 即答だった。


 ミアは少しだけ不満そうに顔をしかめるが、何も言わない。


 リナは、どこか安心したように笑っていた。


「じゃあ、次からは俺が見る」


 ユウは周囲を見渡す。


 気配。風。音。


 全部が情報になる。


「来る前にわかる。動きも読める」


「……本当に何なんだよ」


 ミアが呟く。


 ユウは答えない。


 答える必要がない。


 帰り道。


 空気は、昨日とは別物だった。


 緊張はある。


 だが、それ以上に——


 依存がある。


「主導権、移行完了」


 スライムが囁く。


「パーティの意思決定に影響を与えている」


「だろうな」


「このまま支配するか?」


 少しだけ考える。


 そして、首を振った。


「まだいい」


「理由は?」


「頂点で崩した方が、面白い」


 スライムが一瞬だけ沈黙する。


 そして。


「理解した」


 静かに揺れた。


 町に戻る。


 ギルドの視線が、さらに増えている。


 噂は早い。


「なあ、ユウ」


 レオンが言う。


「次も一緒にやるか?」


「もちろん」


「……そうか」


 短い返事。


 だが、その中に確かな信頼が混じっている。


 それが、少しだけ可笑しい。


(あと少しだな)


 ユウは空を見上げた。


 夕焼けが広がる。


 綺麗だ。


 そして——


 壊れる前の空気に、よく似ている。


「準備は整いつつある」


 スライムが言う。


「何の?」


「崩壊の」


 ユウは笑った。


「だろうな」


 そのときは、近い。

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