更新処理に侵入した俺、ついに“世界のコアロジック”を書き換える
空間が、悲鳴を上げている。
王都地下の中枢区画。
壁はひび割れたように歪み、光のラインは途切れ途切れに点滅する。
原因は一つ。
世界の更新処理が破綻しかけている。
「……いい感じに壊れてるな」
ユウはゆっくりと歩く。
足元はもはや“床”ではない。
処理の残骸。未完了の計算。宙に浮く断片。
「負荷、急増」
スライムが告げる。
「現在、世界側の修正処理が暴走しています」
「つまり?」
「“整えようとして、余計に崩れている状態”です」
「最高だな」
ユウは笑う。
今なら届く。
いつもは触れられない場所に。
「……あそこか」
視界の奥。
すべての処理が流れ込む一点。
コアロジック。
世界のルールを決める“中枢”。
「通常、干渉不可領域」
スライムが言う。
「ですが現在——」
「ガバガバだろ」
「……はい」
ユウは一歩踏み出す。
その瞬間。
空間が、拒絶する。
「アクセス禁止」
世界の声。
「コア領域への侵入を拒否」
「遅い」
ユウは、手を伸ばす。
ビリッ。
拒絶層を、引き裂く。
「不正アクセス、検知」
「だから何だ」
さらに押し込む。
手が、“内側”に入る。
瞬間。
膨大な情報が流れ込む。
ルール。
優先順位。
存在定義。
世界の“動かし方”。
「……えぐいな」
ユウが呟く。
「全部ここで決めてんのか」
「はい」
スライムが答える。
「世界の基準点です」
「なら——」
ユウは笑う。
「ここいじれば終わりだな」
「危険です」
「知ってる」
ユウは手をさらに奥へ。
“コア”の中心。
そこにあるのは——
選択テーブル。
何を優先し、何を排除するか。
世界が判断する基準。
「……これか」
ユウの目が光る。
「俺が弾かれてる理由」
項目を“見る”。
・整合性維持
・安定優先
・異物排除
「完全に敵じゃん」
「はい」
スライムが静かに言う。
「あなたは現在、“異物”として最優先排除対象です」
「なら——」
ユウは、指を動かす。
「変えればいい」
「……それは——」
「できる」
断言。
そして——
“異物排除”の優先度を、触る。
ほんの少し。
ズラす。
「——変更」
その瞬間。
空間が、止まる。
世界が、沈黙する。
「……処理停止」
スライムが呟く。
「コアロジックの更新が止まりました」
「いいね」
ユウは笑う。
「次」
さらに触る。
“存在定義”。
そこに——
自分を追加する。
「……これで」
指を滑らせる。
「俺も“内側”だ」
カチッ。
何かが、はまる。
その瞬間。
空間の圧が、消える。
拒絶が、消える。
すべてが——
受け入れる側に変わる。
「……適合」
スライムが言う。
「あなたは現在、“世界内存在”として再定義されました」
「だろ?」
ユウは軽く肩を回す。
さっきまでの重さが、嘘のように消えている。
「快適だな」
だが——
その瞬間。
コアの奥で、“何か”が動く。
「……検知」
スライムの声が、低くなる。
「これは——」
一瞬の間。
「“最終防衛”です」
空間が、震える。
コアのさらに奥。
今まで触れていなかった領域。
そこから——
“意思”が、立ち上がる。
「対象:黒崎ユウ」
今までよりも、はっきりとした声。
「許容範囲、逸脱」
「最終プロトコル、起動」
ユウは、笑った。
「まだあるのかよ」
だが、その目は——
完全に戦闘モード。
「いいね」
拳を握る。
「全部出してこい」
次の瞬間。
コアロジックが、強制的に再起動する。
そして——
ユウを中心に、“世界そのもの”が形を取り始める。
人でもない。
物でもない。
“ルールの集合体”。
「……ラスボスって感じだな」
ユウは笑う。
ついに現れた。
世界の“最後の壁”。




