最終プロトコルを相手にする俺、だが“勝利条件そのもの”を再定義する
コアが、呼吸する。
いや、呼吸に似た“周期処理”が空間を満たしている。
規則的な脈動。一定のリズム。逃げ場のない正確さ。
その中心に——
“それ”は立っていた。
形は人に似ている。
だが、輪郭は常に揺らぎ、内側には無数の式が走る。
目に見えるのは“外殻”。
本体は、その奥にある“ルールの塊”。
「対象:黒崎ユウ」
低く、重い声。
「最終プロトコル、実行体」
「……長いな」
ユウは軽く首を鳴らす。
「もっと短く名乗れよ」
「名称:不要」
即答。
「目的:排除」
「シンプルでいいね」
ユウは笑う。
次の瞬間。
世界が、収束する。
ユウの周囲に、見えない“枠”が形成される。
「戦闘領域、固定」
逃げ場が消える。
空間そのものが“檻”になる。
「……なるほど」
「ルールごと閉じるか」
「正確」
実行体が一歩踏み出す。
その瞬間。
ユウの体が、止まる。
「……っ!」
動けない。
「行動制限」
「優先度:最大」
「対象の自由度、低下」
「うぜえな」
ユウは歯を食いしばる。
さっきとは違う。
これは“拘束”じゃない。
“自由に動くという概念そのもの”を削られている。
「ユウ!」
スライムの声。
「通常の干渉では対抗できません!」
「だろうな」
ユウは、息を吐く。
だが——
「……じゃあ」
目を細める。
「別のとこいじるか」
実行体が、手を上げる。
同時に、世界が反応する。
「削除開始」
ユウの足元が消える。
腕が薄くなる。
“存在の削除”。
「……効かねえよ」
ユウは、笑う。
動けない。
だが——
“考えること”は止められていない。
「勝つためには」
小さく呟く。
「勝ち方を変えればいい」
その瞬間。
ユウの視界に、“条件”が見える。
この空間のルール。
・対象排除で勝利
・抵抗不能で終了
・存在消失で完了
「……これか」
ユウは理解する。
「“勝利条件”」
実行体が、反応する。
「観測精度、上昇」
「対処開始」
削除が加速する。
だが——
「遅い」
ユウは、笑う。
意識だけで、手を伸ばす。
“条件”へ。
「これ、変えるぞ」
「拒否」
即座に、世界が反発する。
「勝利条件は固定」
「変更不可」
「例外作ればいいだろ」
ユウは、強引に触れる。
ビリッ。
ルールが軋む。
「不正干渉」
「排除優先度、最大化」
「いいね」
ユウは笑う。
「やっと本気で嫌がってる」
さらに押し込む。
条件の一部を掴む。
「——変更」
その瞬間。
空間が、止まる。
実行体の動きも、止まる。
「……」
スライムが、息を呑む。
「何を……したんですか」
ユウは、ゆっくりと答える。
「勝利条件をな——」
一拍。
「“俺が存在してるだけで勝ち”にした」
沈黙。
そして——
「……」
実行体が、わずかに揺れる。
「論理矛盾、発生」
「条件不整合」
「処理不能」
空間が崩れ始める。
削除も、拘束も——
すべてが止まる。
「……はは」
ユウが笑う。
「ゲームクリアだな」
だが、その瞬間。
コアの奥から、さらに深い“何か”が動く。
「再定義」
声。
今までよりも、さらに低い。
「勝利条件、再設定」
ユウの目が細くなる。
「……まだあるか」
「“存在そのものを終了させる”」
スライムの声が震える。
「強制エンドです!」
「なるほどな」
ユウは笑う。
「チート対策の最終手段ってわけか」
空間が、収束する。
今度は逃げ場もない。
ルールも通じない。
完全な——
“終了処理”。
「……どうする」
スライムが問う。
だが。
ユウは、すでに決めていた。
「簡単だろ」
目が光る。
「その“終了”も、変えればいい」




