帰還した俺、だが“世界に拒絶された存在”として狙われ始める
——落ちる。
光が収束し、分解されかけた意識が一気に“形”を取り戻す。
感覚が、雪崩のように戻ってくる。
重さ。
温度。
音。
そして——
痛み。
「……っ!」
ユウは床に膝をついた。
王都地下、封印装置の中枢。
見慣れたはずの場所が、どこか“遠い”。
「帰還、確認」
スライムの声が響く。
だが、前よりも近い。
外からじゃない。
内側から。
「……無事、か?」
ユウが息を吐く。
「はい」
一拍。
「ただし——」
「だろうな」
ユウは苦笑する。
自分でも分かる。
何かが、決定的に変わった。
視界にノイズが走る。
壁が一瞬だけ透け、別の層が見える。
空間の裏側。
処理の流れ。
「同期率、上昇」
スライムが言う。
「現在、62%」
「上がりすぎだろ」
「分岐領域との接触により、統合が進行しました」
ユウは、ゆっくりと立ち上がる。
その瞬間。
ビリッ。
空間が、わずかに“拒む”。
「……は?」
ほんの一瞬。
足元がズレる。
存在が“弾かれる”感覚。
「……確認」
スライムの声が低くなる。
「世界側の拒絶反応です」
「拒絶?」
「はい」
一拍。
「あなたは現在——」
「“この世界に適合していません”」
沈黙。
ユウは、ゆっくりと笑う。
「はは」
「ついに来たか」
違和感はあった。
戻ってきた時点で、すでに。
「異物認定ってやつか」
「近い概念です」
そのとき。
封印装置が、再び動き出す。
「対象、再認識」
さっきまで味方だったはずの装置が——
「不整合、拡大」
冷たい声。
「排除優先度、最大」
「おいおい」
ユウが肩をすくめる。
「さっき仲良くなったばっかだろ」
「無効」
即答。
「世界優先」
光が収束する。
今度はさっきよりも強い。
明確な“殺意”。
「来るぞ」
「はい」
スライムが即応する。
「回避推奨」
「却下」
ユウは、一歩踏み出す。
光が放たれる。
だが——
「遅い」
“ズレる”。
攻撃の“処理順”を見て、その隙間に移動する。
光が、空を裂く。
「……これ」
ユウが呟く。
「もう読めるな」
分岐を見た影響。
世界の処理が、少しだけ“先に見える”。
「対応能力、向上」
スライムが言う。
「だろうな」
ユウは、そのまま装置に接近する。
「なら——」
手を伸ばす。
だが。
今度は——
触れない。
「……あ?」
見えない壁。
いや——
「拒絶層」
スライムが即座に解析。
「存在不適合対象への接触制限」
「なるほどな」
ユウは笑う。
「完全に“敵”扱いか」
装置が回転する。
さらに強い攻撃が準備される。
「このままだとまずいな」
「はい」
スライムが静かに言う。
「この空間自体が、あなたを排除しようとしています」
「空間ごとかよ」
ユウは、周囲を見る。
壁。
床。
空気。
すべてが、わずかに“こちらを避けている”。
「……面白い」
普通なら詰み。
完全なアウェー。
だが——
「じゃあ逆に」
ユウの目が光る。
「“適合すればいい”」
「……可能ですか?」
「やるしかないだろ」
ユウは、自分の手を見る。
ズレている。
この世界と、噛み合っていない。
「なら——」
目を閉じる。
“世界の構造”を思い出す。
さっき見た。
あの深層。
ルールを選ぶ側。
「少しだけ」
手を、調整する。
存在を、寄せる。
世界に。
「——調整」
その瞬間。
ビリッ。
拒絶が、弱まる。
「……いけるな」
もう一度、手を伸ばす。
今度は——
触れる。
「成功」
スライムが言う。
「適合率、上昇」
「じゃあ——」
ユウは笑う。
「もう一回、奪うか」
装置の中枢へ。
今度は、“拒絶された側”として。
強引に、入り込む。
だがそのとき。
空間が、さらに歪む。
「追加干渉、確認」
スライムの声が、緊張する。
「これは——」
一瞬の間。
「“世界そのもの”の直接介入です」
沈黙。
ユウは、笑った。
「いいね」
拳を握る。
「逃げる理由がない」
装置。
空間。
そして——
世界。
すべてが敵。
だが——
「全部まとめて、相手してやる」
物語は、最終決戦へ突入する。
“拒絶される存在”と“世界そのもの”の、真正面からの衝突が始まる。




