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最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた~ぷるぷる相棒が実は最強すぎる~  作者: ローナ


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選択肢を創る俺、だが“消えかけの境界”で相棒の声に引き戻される

 光になった。


 いや、正確には——境界そのものにほどけた。


 ユウの輪郭は粒子よりも細かく、意味よりも曖昧に拡散していく。

 上下も前後もない場所で、“選択”という行為だけが形を持っていた。


「……ここが」


 声はない。だが“意思”は通る。


 無数の分岐が、細い川のように流れている。

 選ばれたものは太く、捨てられたものは砂のように崩れる。


 そして——


 選択肢が、削除されている。


「露骨だな」


 ユウは“見て”笑う。


 さっきまで確かにあった分岐が、跡形もなく消えている。

 世界そのものが、“都合の悪い未来”を間引いている。


「最適化」


 あの声が、再び届く。


「不整合の排除」


「俺が不整合ってか?」


「肯定」


 容赦がない。


 だが、ユウはむしろ楽しそうだった。


「いいね」


 薄く広がった自分を、さらに押し広げる。


「なら——」


 消された場所に、手を差し込む。


 何もない“はず”の空間。


 だが——


「“無い”って決めてるだけだろ」


 ぐ、と力を込める。


 概念に対して、物理みたいなやり方で。


 ねじ込む。


 こじ開ける。


 “可能性”を掘り起こす。


 パキッ。


 音がした気がした。


 そして——


 一本の分岐が、生まれる。


「……できたな」


 ユウが呟く。


「不正生成、検知」


 世界の声がわずかに揺れる。


「いいじゃん」


 ユウは笑う。


「ルール外ってのは、こういうことだ」


 さらに広げる。


 一本じゃ足りない。


 十本。


 百本。


 千本。


 選択肢を“創る”。


 世界が、ざわつく。


「負荷、増大」


「処理遅延、発生」


「効いてるな」


 ユウの“存在”が、わずかに濃くなる。


 分岐を作るたびに、自分が“戻ってくる”。


 だが——


「……ユウ」


 声が、届く。


 遠く。


 薄く。


 だが確かに。


「……戻って」


 スライムだ。


 ユウは、わずかに動きを止める。


「……何だよ」


「そのままだと——」


 声が途切れ途切れになる。


「完全に……向こう側に……」


 言い切れない。


 ユウは、少しだけ考える。


 そして——


「別にいいだろ」


 あっさりと。


「こっちの方が自由だ」


 分岐をさらに増やす。


 世界が、歪む。


「……ダメ」


 スライムの声が、少し強くなる。


「それ以上行くと——」


 一瞬、沈黙。


「“戻る場所”が消えます」


 その言葉で。


 ユウの動きが、止まる。


 完全にじゃない。


 ほんの一瞬。


 だが——


 確実に。


「……戻る場所?」


 視界の奥。


 無数の分岐の中に——


 小さく、揺れる一点。


 王都。


 街。


 そして——


 スライム。


 ぷるっとした、小さな存在。


「……ああ」


 ユウは、わずかに笑う。


「まだ残ってんのか」


「……はい」


 弱い声。


 だが確か。


「ここにいます」


 ユウは、しばらく黙る。


 分岐を創る手を、止めたまま。


 そして——


「……面倒くせえな」


 ぽつりと呟く。


「せっかく自由なのに」


 だが。


 その“面倒”を。


 嫌だとは言わなかった。


「ユウ」


「なんだよ」


「……戻ってきてください」


 短い言葉。


 だが、それで十分だった。


 ユウは、ため息をつく。


「……仕方ねえな」


 そして——


 作った分岐を、掴む。


 “戻るためのルート”。


「これ使うぞ」


「はい」


 スライムの声が、わずかに安定する。


 ユウは、一歩踏み出す。


 分岐の中へ。


 その瞬間。


 世界が、強く反応する。


「逸脱行為、確認」


「修正、開始」


 分岐が、消されていく。


「……邪魔すんな」


 ユウが舌打ちする。


 だが——


 今のユウには。


 “創る力”がある。


「消すなら——」


 もう一度、作る。


 強引に。


 何度でも。


「その分、作るだけだ」


 世界と、押し合う。


 消す力と、創る力。


 拮抗。


 だが——


 ユウは、進む。


 一歩。


 一歩。


 “戻る”方向へ。


 光が、収束する。


 存在が、再び“形”を持ち始める。


「……もう少し」


 スライムの声。


 近い。


 かなり近い。


 だが——


 最後の瞬間。


 世界が、全力で“拒否”する。


「最終排除、実行」


 すべての分岐が、一斉に消える。


「……っ!」


 ユウの体が、再びほどける。


 戻れない。


 そのとき。


「——ここです」


 スライムの声が、はっきりと響く。


 そして——


 小さな光が、伸びる。


 一本の線。


 ユウへと繋がる。


「……お前」


「繋いでます」


 震える声。


「あなたと、私を」


 その線は細い。


 今にも切れそうだ。


 だが——


 確実に、“繋がっている”。


 ユウは、笑った。


「いいじゃん」


 その線を、掴む。


 そして——


「帰るぞ」


 一気に引き寄せる。


 世界が、揺れる。


 拒否が、間に合わない。


 光が、収束する。


 形が戻る。


 意識が、戻る。


 そして——


 ユウは、“こちら側”へ帰還する。


 だが。


 その代わりに。


 “何か”が、確実に変わっていた。


 物語は、最終決戦の核心へ。


 “世界”と“選ぶ者”の戦いは、次の段階へ進む。

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