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最弱スライムと契約した俺、気づけば全スキルを支配していた~ぷるぷる相棒が実は最強すぎる~  作者: ローナ


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初めて奪ったスキルで無双した俺、早くもパーティに拾われる

狼を倒したあとも、しばらく自分の手を見つめていた。


 さっきまで“何もなかった”はずの手だ。けれど今は、確かに何かを掴んでいる感覚がある。


「確認。《俊敏》は一時的に書き込み済み」


 足元で、青いスライムが淡々と告げる。


「時間経過で消える。ただし、繰り返し使用すれば定着する可能性がある」


「……なるほど。使い込めば“自分のものになる”ってことか」


「その通り。効率的な成長が可能だ」


 効率、ね。


 会社で何度も聞いた言葉だが、今は妙に前向きに響く。


 ユウは倒れた狼を見下ろした。さっきまで自分を殺しかけていた存在が、今はただの“素材”にしか見えない。


(これ、売れるのか?)


「売却可能。皮、牙、魔石。総合価値は低いが、初期資金としては十分」


 考えを読んだかのようにスライムが答える。


「……お前、便利だな」


「当然。最適化を支援する存在だからな」


 ぷる、と誇らしげに揺れる。


 その見た目でドヤるのはやめてほしい。


 ユウは狼の死体を担ぎ上げ、町へ向かった。


 町の門は、それほど大きくなかった。


 石造りの壁と、木製の重い扉。門番が二人、槍を持って立っている。


「止まれ」


 片方が手を上げる。


「身分証は?」


「ない。さっき来たばかりだ」


「……転生者か」


 ちらりと視線を向けられる。


 その視線に、興味はない。ただの確認だ。


「スキルは?」


 少しだけ間が空く。


「……なし」


 門番の表情が、わずかに緩む。


 ああ、その顔。見覚えがある。


 “下を見つけたときの顔”だ。


「通っていい。ただし問題を起こすなよ」


「了解」


 あっさりと通された。


 価値がないと、逆に楽だ。


 町の中は、思ったよりも活気があった。


 石畳の道。並ぶ露店。行き交う人々。


 鎧を着た冒険者、ローブ姿の魔法使い、荷物を運ぶ商人。


 異世界、という言葉がようやく現実味を帯びてくる。


「まずは換金だな」


「賛成。資金確保は優先事項」


 スライムが小さく跳ねる。


 目立つからやめろと言いたいが、言ってもやめない気がする。


 ユウは“冒険者ギルド”と書かれた看板を見つけ、中へ入った。


 中は騒がしかった。


 酒の匂いと、笑い声と、怒号。


 いかにも、という空間だ。


 カウンターへ向かう途中、何人かの視線がこちらに向く。


 正確には——


「……スライム?」


「連れて歩いてんのかよ」


「趣味悪くね?」


 隣の相棒に、だ。


 スライムは気にした様子もなく、ぷるんと揺れる。


「無視でいい。ノイズだ」


「はいはい」


 カウンターに到着する。


「すみません」


 受付の女性が顔を上げる。


「はい、どうされましたか?」


「これ、売りたい」


 狼をどさりと置く。


 女性の目が少しだけ丸くなる。


「……お一人で?」


「ああ」


 ちらりとスライムを見るが、何も言わない。


「少々お待ちください」


 奥へ持っていかれる。


 数分後。


「査定が終わりました。こちらでよろしければ——」


 提示された金額は、予想よりも多かった。


「いいな」


「では、こちらをどうぞ」


 革袋に入った硬貨を受け取る。


 重みが、妙にリアルだ。


(これが、この世界の“最初の稼ぎ”か)


「次は登録をおすすめします」


 受付が続ける。


「冒険者として登録すれば、依頼を受けられます」


「……スキルなしでも?」


 少しだけ意地悪に聞く。


 だが彼女は首を振った。


「問題ありません。最低ランクからになりますが」


「そうか」


 登録用紙を受け取る。


 名前を書くだけの簡単なものだ。


「これでいい」


「確認しました。黒崎ユウ様。これであなたはEランク冒険者です」


 木製のプレートを渡される。


 軽い。だが、確かな“身分”だ。


「おい」


 背後から声がかかる。


 振り向くと、三人組の男女が立っていた。


 剣士風の男、ローブの女、軽装の少女。


 いかにもパーティ、という組み合わせだ。


「さっきの狼、お前がやったのか?」


「そうだけど」


「一人で?」


「一応な」


 男は少しだけ目を細める。


「スキルは?」


「……なし」


 その瞬間、三人の表情がわずかに変わる。


 疑い。戸惑い。軽い軽蔑。


 だが、完全に否定はしない。


 さっきの結果を見ているからだろう。


「……面白いな」


 男が口元を歪める。


「うちのパーティ、今一人欠けててな。人手が欲しい」


「雑用でもいい。入らないか?」


 予想通りの展開。


 そして、予想通りの温度感。


 期待ではなく、“使えたらラッキー”程度。


「どうする?」


 スライムが小さく囁く。


「判断材料を提示する。パーティは経験値効率が高い。一方で——」


「裏切られる可能性も高い、だろ?」


「理解が早い」


 ぷる、と揺れる。


 ユウは三人を見た。


 悪くない。


 だが、信用する理由もない。


 それでも。


「いいよ。入る」


 短く答える。


 この世界の“流れ”は、ある程度読めている。


 パーティに入る。無能扱いされる。追放される。


 そして——


(そのときが、一番うまい)


 内心で、少しだけ笑う。


「決まりだな」


 男が手を差し出す。


「俺はレオン。剣士だ」


「ミア。魔法担当」


「リナ。回復」


 順に名乗る。


 ユウは軽く頷いた。


「黒崎ユウ。……雑用担当、でいいよ」


 わざとそう言う。


 その方が、都合がいい。


 ギルドの外に出る。


 夕方の光が町を染めている。


「初任務は明日だ」


 レオンが言う。


「今日は休め」


「了解」


 三人と別れる。


 足元のスライムが、静かに揺れる。


「なぜ受けた?」


「決まってるだろ」


 ユウは空を見上げた。


「効率がいいからだ」


「具体的には?」


「強いやつと一緒にいれば——」


 少しだけ、口元が上がる。


「奪えるものが増える」


 スライムが、一瞬だけ静止した。


 そして。


「最適解だ」


 静かに、肯定した。


 風が吹く。


 新しい世界での最初の一日が、終わろうとしている。


 だが——


 本番は、ここからだ。

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