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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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86.夜食の調達。古の恋物語②。


「……じゃ、ご飯食べに行く?」

「行くー!」

「そう言えば、さっき荷物を取った時、財布が見当たらなかったんだが」

「無いよ!この辺のお店なら、わたしのウインク一つでご飯食べれるからね!」

「「なわけあるか!」」


などというふざけたやりとりの後、俺達は二手に分かれることになった。

俺は、先ほどの店に戻って、なにか持ち帰りの料理を包んでもらうことにした。

ナデシコは、案の定宿もなかったコルネリアさんを俺達の取った宿に連れて行き、お湯でその身体を拭き、暖めることに。


「ねぇねぇ!ナデシコちゃん達の出会いの話聞きたーい!」

「ま、さっきの歌に免じて、道すがら話してあげるわ」

「やったー!」

別れ際、ナデシコはコルネリアさんのおねだりに折れていた。

案外、ウインク一つで飯が出てくるというのはウソじゃないかも知れない。


食事処で、別料金を払って、スープを手持ちの容器に入れ、パンにベーコンと野菜のソテーを挟んだものを購入した。歌の代金だと思えば安すぎるが、手軽に食べられるものがいいだろう。

ちなみにドワーフたちは、まだ吞んでいた。ホントに明日は大丈夫だろうか?



「戻ったぞ、ナデシコ」

別れてから30分ほどで宿屋に戻ってきた。俺達の部屋のドアをノックして、声を掛ける。

「入っていいよー。ヤマトくん!」

「ダメよ!ヤマト!」

どちらを信じるか考えるまでもない。俺は待つことにした。

そこから、さらに10分後。


「お腹すいたー…ごはんー」

少し元気がない、コルネリアさんが内側からドアを開けた。

格好は俺達の中学の芋ジャージだ。まだ出番があったのか、ジャージ。


しかし、これは酷い。腕も丈も余りきっているのに、胸部は爆発寸前だった。まさに布地への虐待、チャックの耐久試験。

「…………私より小さくてあちこち細いのに……どうして……」

ナデシコはなにか疲れていた。

ちなみにナデシコも平均は超える『もの』を持っているのだが……。


「ゆっくり食べろよ?」

「わー!ヤマトくん!ありがと!」

コルネリアさんに食料を渡した俺は、ナデシコを撫でることにした。

なんと声をかけていいか、分からなかったのだ。


「え!?スープが温かい!……魔法?……違うみたい」

祈りを済ませたコルネリアさんは食べ始めたが、スープを一口飲むとジロジロと容器を観察し始めた。

なんと応えたものか、魔法は魔法でも、俺達の世界から持ち込んだ『魔法瓶』なのだ。真空を利用した二重構造、などと解説はできるが、それをどうやって作ったのか、と聞かれると困る。


「私達はラケルの『方』から来たのよ」

そんな、消防署の方から来ましたみたいな古い詐欺もような文言でナデシコは返した。

「そっかー…。ラケルも、もう100年くらい行ってないもんねー。ビックリ!」

スケールの大きい驚き方だった。

その後も元気に食べて、あっという間に食べ終わってしまった。


「ふー、お腹いっぱい。…ご飯ありがと!」

「どういたしまして」

「熱くなっちゃった、脱いでいい?」

「いいけど、ローブを羽織りなさいよね?じゃないと潰すことになるわ、ヤマトの目を」

「とばっちりじゃない?」

「はーい」

コルネリアさんはローブを羽織ると、その中からジャージが出てきた。

妙にスッキリした顔をしている。

…………ちょっと待て。そのローブの下一体どうなって………。


「じゃ、二人の出会いも聞かせてもらったし、続きね」

どうやら、俺達の出会いはすでに聞いたようだ。


いや、ローブの下……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



結局、その男、エサルカの立ち入りは認められなかった。


しかし、エルフ達の一人はエサルカにこう告げた。


「なかなかいい歌だった。今は入国は認められないが、その歌を歌い続ければ、心動かされる者もいるかも知れない」


その日から、毎日同じ時間にその下手な歌はエルフの国の海岸を騒がせることになった。

それ以外の時間は、男は海岸にあった洞窟で、生活しているらしい。

そう警備のエルフが零したのを、一人の少女、コルネリアが聞いた。


「どうして、やめないんだろ?」


コルネリアは、天才だった。

教えられたことはすぐに覚え、かつてあった芸術の技巧すら数日で身につけた。

エルフはその少女をもてはやし、始祖の再来とすら呼ぶ者さえいた。


しかし、コルネリアにはそれらに関心がなかった。

教えられたことはすぐに覚えるが、覚える以上のこと、研究や探究に興味はなかった。

あらゆることを表現出来る技能を持ちながら、表現したいものがない。


故に、いつまでも下手な男がそれを続けることが不思議でならなかった。


コルネリアも、苦手な分野はあった、剣術や武器術だ。

エルフは長身細身、それが前提で作られた体術は小柄な少女に向かない。


始めに周囲も無理をする必要がないと言ったし、コルネリア自身もそれを不要と断ずるに数時間もかからなかった。

これは、エルフとしては異常なことだ。時間を持て余したエルフは、とりあえず続けるという選択をする。惰性である。


この即断即決は、当時コルネリアのみが持っていて、共感出来るものは居なかった。


この頃、コルネリアは一冊の本を読む。何気なく書架から取り出した各種族の特徴をまとめられたものだ。そこで、初めてエルフ以外の種族の寿命を知った。


「え!?人間って50年くらいしか生きないの!?」


50年、エルフにとって瞬きに等しいその時を生きる人間。


「なのに…。『もう5年も』歌ってる……?」


コルネリアには想像力があった。父を弔う、その為に上達もしない歌を歌い続ける。

ああ、なんと……。


「無駄!どうしてちゃんと練習しないの!?」


気付けば、屋敷を抜けだし、海岸に向かっていた。

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