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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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83.賛辞は大歓迎。食に感謝。



「というわけで、私達が『フォレストタートル』をぶっ飛ばしたわけですが!」

「魔石も素材も商隊長に譲って、皆の手元の酒と食い物に変わったわけだ」


現在は夕刻、『フォレストタートル』を討伐してから、予定時刻通りに二番目の宿場街に到着していた。

そして、その宿場街の飲食店で同じ客車の乗客や護衛達を集めて、お疲れ様会を開いた。

費用は、『フォレストタートル』の魔石と素材の売却代金。


『フォレストタートル』はその甲羅が、魔物を討伐した後に残される身体の一部、素材として残った。

加工品の素材として、高値で取引されるらしい。俺達の知る『べっ甲』のようなものだろう。


「いいぞー!」「よくやった!」「太っ腹!」「ご馳走様です!」「流石アーテナイ様の弟子!」「金鉱脈の発見者!」「さすらいの料理人!」「人形達の産みの親!」「シェーヌ様の胃痛の種!」「クプファ工房長の頭痛の種!」「ラケルの騒動に二人の影あり!」「罰掃除当番!」


「なんか後半、悪口無かったか?」

まぁ、全部事実なのだが。しかし、ナデシコは皆の賛辞にすっかりご機嫌だ。

「まぁ、いいじゃない!ぶれーこーよ!カンパーイ!」


「「「カンパーイ!」」」

…護衛連中は明日もあるから、程々にな?



「ふふ、二人って、私が思っているより、ずっと有名人だったのね」

「まぁね!なんたって、アーテナイの弟子なんだから!」

「ああ、そこに喜んでいたのか、ナデシコ」

俺達も三人掛けのテーブルに着いた。俺とナデシコとデライラさん、客車と一緒だ。


「ま、私達も成長したってわけ。前だったら、勝手に魔物を討伐して怒られてただろうから」

「そうだな。報告と相談は大事だ、って叩き込まれたからな」

ラケルの文官、エルフのシェーヌからは口頭で、アーテナイからは物理的に頭に。


「今日はご馳走様になるわね。それでどうかしら?この辺の宿場街はラケルの料理より、王都の料理が出るけど、苦手なものはないかしら?」

デライラさんには料理の注文を頼んでいた。

テーブルに並んだ料理を眺めると、

「私達は二人とも、好き嫌いは殆どないわ。ラケルの料理に比べると…なんだか野菜が多いわね」

「ラケルは根菜が多かったけど、王都は葉物が多いのか」

サラダには見たことのない形の葉っぱもある。スープにも葉物野菜が使われているが、ラケルでは見たことがない。メインは厚切りベーコンだが、野菜のソテーも付いている。


「ええ、王都は水源が豊富で、土も豊かなの。野菜も農場の他に各家庭の裏庭でも作られるくらいよ。ラケルはとにかくお肉が多かったわね。あれも美味しかったけど、やっぱり私はこちらの方が食べ慣れてるわ」

「王都については少し調べたけど、やっぱり生の声には敵わないわね」

「確か、色んな作物を実験的に作ってると聞いたような。王都の外れに農業研究所があるとか」

この施設には、水田もあり、なんと『米』もあるらしい。

情報源が、赤ら顔の酒屋の主人なので、いまいち確証が持てていなかったのだが。


「よく調べてるわね。ユディト様の提言で王都では、色々な種類の植物を採算度外視で育ててるのよ。いつか誰かの役に立つかも知れない、そのため、生育方法を絶やしてはならない、ってね」

それこそ、中々出来る事じゃない。なるほど、アーテナイの仲間、かつて世界を救った英雄の一人。俺達は、その一端を見た気がした。


「…っと、このままじゃ、料理が冷めてしまうわね。食べましょうか?……ヤマトくん、お願い出来る?」

「じゃあ……恵みに感謝し………」

「「………」」

両手を握りしめ目を伏せ沈黙、それがこの世界の食前の祈りの仕草。

そして、生活魔法『可食判定』を使い、食べられるものか探る時間でもあるらしい。

どちらも、この世界で世話になった人たちに習った習慣だ。

「頂きます」

食事を始める。世界は変わっても、食に対する感謝は変わらないのだった。



「……それでね。アーテナイは言ったの、『ナデシコ、アンタは一つを極めるより、色んな手札から一番、楽しい事を選びな。それが相手からしたら、一番厄介だから』って」

「俺は逆だったな。『ヤマト、アンタは剣、いやカタナを極めな。それ以外の、魔法も牽制程度で十分だよ』って」

「まぁ、アーテナイ様は二人をよく見ていたのね」

「うん!」

「ああ、そうだな」

デライラさんは聞き上手で、アーテナイとの修行の様子をよく聞いてくれた。楽しげな笑みと、適切な相づちでついつい話が弾んだ。すでに、食事を終え、食後のお茶を飲み、日も沈んだ。

何人かは、俺達に一言、「ご馳走さま」や「ありがとう」と言って、宿屋へ戻っていった。

この世界では特に締めの挨拶などはないようだ。それは、ラケルの時からそうだった。


「二人とも、ご馳走様でした。お話も食事も、とっても楽しかったわ。でも、なんだか悪いわね。もらってばかりで」

「ううん、私も楽しかったわ!デライラさん!」

「明日も一緒だし。王都やアーテナイの話、聞かせてもらえると嬉しい」

「ふふ、そうね。明日もよろしくね」

デライラさんとも別れ、まだ飲んでいるドワーフたちを尻目に、白い髭の商隊長に後は任せて、宿場街を散策することにした。


こちらの世界にも、街灯がある。俺達の世界より控えめで、温かみがある。

この宿場街は、泉のほとりにある。二人で目標をそこに定めて、歩き出した。


「さ、行きましょ?ヤマト」

「ああ。お手をどうぞ、ナデシコ」

「ふふ。よく分かってるじゃない!」


二人手を取り、歩き出す。ほんの少しの夜更かしのつもりで。


そして、そこでの出会いが、忘れられないものになることを、今はまだ知らない。

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