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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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82.貫く木。切り開く道。


『フォレストタートル』、中型に分類されるその魔物は、『ある特性』を持つ。

それを聞いた俺達は、車両を止めた理由になるほど、と納得して、改めて魔物討伐を請け負った。


「じゃ、行ってくるわね!」

「別ルート、検討してていいぜ。無駄になるだろうけどな!」


装備を調えた俺とナデシコは力を込めて跳躍する。

そして、ナデシコは空中でその髪が白く染まり、その背に白いツバサが生える。ま、その時、決めポーズを取るのはご愛嬌。

俺はそこまで派手ではない、空中で日本刀『姫桜』を掴む。すると、髪が根元から毛先にかけて黒から桜色へ変わる。


この力に目覚めたのは、約一ヶ月前、その時の俺達ではどうしても足りない力、それを求めた時に、この変化が起こったのだ。

効果は、ナデシコのツバサは空を駆け、俺は身体能力の向上や魔力の出力の向上などがある。


実は、この一ヶ月間、この現象に名前を付けようとしたのだが、どうもいい物が思いつかなかった。

故に、ナデシコの日記でも『ツバサが生えた』だの『頭ピンク』だの、緊張感がないものになってしまったのだが、版権物と被りたくないとの、ナデシコの強い希望で、検討中だったりする。閑話休題、無駄話もここまでだ。


ナデシコは、俺の腰を持ち、そのまま大空を駆ける。

その描く軌道は、『フォレストタートル』を中心に、弧を描くようにその頭上を目指す。


「ヤマト!90度の扇形の弧の長さは!?」

「直径、掛ける、円周率、掛ける、四分の一だろ!」

「ありがとう!正確な半径が分からないからどれくらいか、いまいち想像出来なかったけど!」

……じゃあ、このやりとり意味あったかな?

空気抵抗はダイレクトに受けてるので、つい大声で会話してしまう。

そんな、無駄話している間に、頭上に到着する。


「さ、問題はここからね。で、ヤマト、私を信じられる?」

「ハッ!今更だろ?着地は任せ」

「じゃ、いってらっしゃい」

「たぞぉおおおおおおおおおいいいいいいいいい!?!?」


急に手を離された、唐突な紐無しバンジー、パラシュートなしスカイダイビング。即ち落下。

地面に居る魔物に急速に近づいていく、そして、確認した。その背の木が、発射されるのを。



『フォレストタートル』、その特徴は、俺達の知識に当てはめれば固定砲台。一定距離に近づいた魔力を持った生命へ、その背の木のような突起を発射する。

移動能力は皆無だが、その突起の質量を伴った弾速は驚異的で、木などもぶち抜く程だそうだ。

しかも、全て打ち終えるまでは、その堅い殻にこもり、生半可な遠距離攻撃も効かない。


対処法は、

1、移動の際に魔法などの遠距離攻撃で素早く仕留める。

2、その突起を回避して、接近して叩く。

3、圧倒的火力で殻の上から殲滅。

くらいらしい。


ラケルの精鋭ドワーフでも、後戻りを考える理由がここにある。

まず、陣取った『フォレストタートル』は、滅多に動かない。食事も排泄もしない魔物との不毛な根比べになり、引き返す方が早い、よって1は無い。


次に、回避する方法だが、突起がどこまで飛ぶか不明。最悪の場合、荷物と人員に被害が出るので、正面からは論外。回り込もうにも、林道の木々が回避スペースを潰している。討伐出来る戦力で大回りしようにも、それにも時間人員を掛けるもの悪手、よって2も無い。


そして、3。ドワーフたちは、近接戦のエキスパートではあるが、種族的に魔法は不得手なのだ。今回のメンバーに魔法の得意な特異なドワーフは同行していなかった。よって3も無い。



しかし、もし、感知範囲外の上空から強襲出来るものが居たら?

加えて、空中で狙われようとも、回避可能な身体能力をもっていたら?


そう、これが一番早いと思います。



「やめときゃよかったかも!!」

俺迫りくる突起達を空中で身体のひねりとそれらを足場にして躱しながら、落下していく。

高い内はよかったが、近づくにつれシビアになっていく。難易度は狂気的ルナティックだ。

そして、どうしも躱せない突起三連撃が迫る。


一つ目を足場に、それも考えたが、間に合わないだろう。

だったら、こっちもその甲羅がどれくらい堅いか分からなかったから、温存してたモノを使われてもらう。例えるならボムだ。


「―――桜然閃さくらぜんせん三連サンレン!!」


日本刀『姫桜』を三度、抜き打つ。それは、意志と魔力を斬撃に換え、桜の花びらのように届かせる一閃、即ち、桜然閃さくらぜんせん。俺が目覚めた技、その形。

三つの突起は、両断され、後方に過ぎゆく。


それが、最後の突起だったようだ。打ち終えた後、『フォレストタートル』は無防備にも首を出した。

むろん、その目に映るのは、貫かれた得物ではない。


「その首!」

「もらったぁああ!アマリリス・ストライク!!」


白いツバサに赤い燐光を纏わせて跳び蹴りの姿勢、落下速度でナデシコが俺を追い抜いた。

そして、その亀の首はその蹴りで大穴を開けられた。

魔石、魔物の核が頭の位置から地面に落ちた、そして魔物の肉体が、崩壊していく。


遅れて落ちてきた俺は、あっけにとられながら、落下前にナデシコに受け止められた。

俺って、弾除け?そう聞けないまま、魔物との戦闘は終了した。


「勝利!やったわね!ヤマト!」

「…そうだな。ま、カッコ良かったぜ?」

「私達が、でしょ!」

楽しそうなナデシコを見ていると、達成感が出てきた。


でも、そろそろ地面に下ろしてほしい。

絵面が抱っこされたままでは、締まらないのだ。



ちなみに、後から聞いたことだが、ナデシコは俺が避けた突起が勢いを失った所を、商隊の通行の邪魔にならない所に蹴り飛ばしていたらしい。

スッキリした顔だと思ったら、ずっとノックを受けてたような気分だったそうだ。お疲れ様、ナデシコ。



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