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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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81.魔物の発見。選択肢は一つ。


雑談などしていると、車両が減速してきた。どうしたのだろうか、二日目の宿場街は夕刻到着予定で、まだ距離も時間もがあるはずだが…。客車全体が少しざわめくが、基本的に待機が原則だ。席を立つものは居ないし、のんきな乗客は伸びなどしている。


「……これは、魔物を発見したのかしら…。なにか説明があると思うけど…」

窓の外をデライラさんは、少し声を潜めて俺達に言う。

デライラさんに倣って窓の外に目をやれば、周辺に随伴していた護衛の冒険者が車両から降りて周囲を警戒している。

ラケルの精鋭達は見当たらないが、


「……ヤマト、任せた」

「ああ、分かった」


目を閉じて、気配を、魔力を探る。脇に置いた日本刀『姫桜』の柄に手を当て、より深い集中へ。

ナデシコは、俺の邪魔にならないように極力魔力を抑えているのが分かった。

他にも、周辺に展開した冒険者の魔力、客車の一番近くにはそこそこ大きな人間の魔力は、護衛のリーダー格の冒険者だろう。

ラケルの精鋭達、ドワーフの魔力は前方、先頭車両付近に集まっている。いや、一人は客車に向かってるな。デライラさんの言葉通りなら、説明役だろうか。


「……なにかあったことは間違いない。戦闘は始まってないし、魔物の気配も俺は感じられないが」

「……そう。少し気になるわね」

「……大人しくしてるか?」

「……冗談でしょ?」

ですよね。

デライラさんにも聞こえないように小声のやりとり、それが終わったと同時に、荷物から必要なものを取り出す。


「デライラさん、私達、ちょっと知り合いを当たってくるわ」

「荷物を見ててくれると助かる」

「……そう。……アーテナイ様の知り合い話だけどね。困ってる人に手を伸ばして人を困らせる天才、って言ってたわよ?…気を付けてね?」

……全く、酒は人の口を軽くするらしい。俺達の名前は出してないだろうが、完全にバレてるな、これ。


「任せてよ、後でアーテナイの話しましょ?」

「俺達、酒に酔ったアーテナイを知らないんだ、聞かせてほしい」

「だったら、私は修行中のアーテナイ様を知りたいわ。……いってらしゃい」

「「いってきます」」

好きなものが一緒の人がいると嬉しい。俺達は、すっかりデライラさんに懐いてしまっていた。



俺達は、こっそり客車から出ると車両の屋根伝いに移動して、先頭車両に到着した。

やはり、ドワーフたちは集まって何か話している。


「どうしたものかの…」

そう言うのは、この商隊の長、白い髭のドワーフ。

「『フォレストタートル』、区分としては中型で討伐出来る戦力もあるが、『あの特性』あるからな」

精鋭ドワーフたちの筆頭、黒い髭のドワーフ。

「……安全地帯の『防魔林』の終わり際、迂回できない厄介なところに陣取りましたね」

商人風の人間だ。地図や、手帳を出して苦い顔をしている。


代表者による対策会議のようだった。会話を聞くに、魔物の発生地帯に厄介な魔物が現れたみたいだ。

道の先を見る。林道はまだしばらく続いているが、その先にあるのは、


「なにあれ、小山かしら?」

「話と名前から察するに、背中に木が生えた亀か?」

遠くてサイズ感も魔力の大きさも掴めないが、ここからでは盛り上がった土に木が生えてるくらいしか分からない。

魔物にも詳しい精鋭達だからこそ、発見出来た魔物だろう。


「仕方ない、安全第一じゃ」

「『アースリザード』達の復帰の第一便、予定通りに行きたかったのですが」

「引き返しても、一日延びるくらいだろうな。行程を見直してから出発しよう。客への説明もこちらでしよう」

どうも、迂回で会議は終わりそうだった。


「待てぃッ!」

やたら凜々しい声で腕を組んで、屋根の頂点で仁王立ちしたのはナデシコ。


「「!?」」

白い髭ドワーフさんと商人は驚いているが、

「……あー、そう言えば、今日乗ってたっけか、アーテナイ様への報告が増えたな……」

黒い髭ドワーフは、頭を抱えていた。アーテナイに近しいもの程、俺達の素行を知っている。


「諦め、常識、それらに捕らわれることなく、進み続けるものが手にするものの軌跡…!人、それを…『突破』と呼ぶ!」


「何奴だ!?名を名乗れい!!」

下に降りていた俺は、お約束を知らないであろう異世界の住人の代わりに叫ぶ。


「「!?」」

その驚きは、むしろいつの間にか横に居た俺に向けられた気がしたが、小さい事だ。

「いや、お前は特に知ってるだろ……」

黒い髭ドワーフはあきれ顔だった。


「貴様らに名乗る必要はないっ!」


飛び上がったナデシコは、きりもみ回転をしながら地面に着地した。土煙が舞い上がる。

……まぁ、全員知ってるからな。


「と、いうわけで、手伝いに来ました」

満足したナデシコは、土埃を払いながら、歩み寄ってきた。

「今のやりとりは特に気にしないでくれ。魔物の情報が知りたい、聞かせてほしい」

一応、フォローをしておく。


「いや、まぁ、その……」

「なんと言いますか……」

「で、何しに来た、問題児共」

二人ほどまだ困惑してるが、黒い髭ドワーフはバッサリだ。複数系か、まぁ、そうなるよな。


「決まってるでしょ?この商隊の荷物は、ラケルからの荷物、つまりアーテナイの、私達の恩人の荷物よ」

「障害物は運んでどかす、邪魔する魔物はぶっ飛ばす。情報と5分くれ、解決して見せる」


「任せなさい」「任せてくれ」


俺達は、不敵に笑って見せた。

自分たちで言うのも恥ずかしいが、参考にしたのはアーテナイの笑みだ。

あの頼もしい、格好いい笑みに近づきたい、そう思っている。


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