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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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80.王都への道中。世間は狭い。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



時系列は現在、聖龍歴500年5の月2日に戻る。


昨日、俺達の間で一騒動起きたが、しっかり話し合ったのがよかったのだろう。

朝起きれば、いつもの俺達に戻れた。起きたときに、軽い頭痛があったが、枕が合わなかったのだろうか?


「ま、ちょっとした喧嘩、ね。大丈夫、もう解決したし!」

「そう、良かったわね。ナデシコさん」

胸を張るナデシコに老婦人、デライラさんは笑顔を作る。事情を知らないはずだが見透かされているような気もする、それとも微笑ましい、と思われてるのだろうか。


「うん!…デライラさんは、王都に行くところ?それとも帰るところかしら?」

「私は帰る所ね。ラケル行きは、王都から馬車で来たのだけど、この『アースリザード』での運送が再開したから、こちらを利用したのよ」

『アースリザード』による運送、実は諸事情によりここ1ヶ月程休止して居たのだ。


『グレートアースリザード魔物化事件』、ラケルの物流を支える『アースリザード』の大型種である『グレートアースリザード』が、魔物に変わった事件だ。

動物の魔物化は、理論上あり得る程度の大変珍しい現象で、加えて人気ひとけの無い時期の鉱山の近く出没したのは、近隣都市の一部で話題になったそうだ。

なぜ、一部の話題程度で終わったのか、それは、出現直後にあっという間倒され、被害も軽微だったからだ。


その討伐者は、七天将星しちてんしょうせい、赤のアーテナイ。と、いうことにしてもらった。

実は俺達もこの時にアーテナイと共闘したのだが、変な実績はお腹いっぱいだったのだ。

実際、アーテナイは各所からの聞き取りなどがあったとうんざりしていた。

結局、『アースリザード』は緊急検査、物流、特にラケルからの輸出や出立は狭き門となった。


「ラケルと王都間は馬車だと、10日間くらいと聞いたんだが……」

この世界の都市間の移動は、安全ではない。盗賊は出ないが、魔物が居るのだ。

小規模の車両だと、安全地帯から安全地帯へ縫うように走って、遠回りになるのだ。

実際、俺達が出立を遅らせたのも、これが一因だった。


他にも、アーテナイとの修行や、『ある品』の完成を待っていたから、というのもある。

結局、ラケルには1ヶ月間滞在した。今なら、ある程度の魔物にも対応出来る、そうお墨付きもアーテナイからもらった。

もちろん、ムチャはするな、との小言もオマケでついていたが。


俺達も目的は、元の世界に帰る事、その為には自衛以上の力が要る。

トラブル続きの俺とナデシコの共通認識であり、この一ヶ月は無駄ではなかった。


「そうね。私が来た時もそのくらいだったかしら?」

「やっぱり、片道三日で行く『アースリザード』は凄いわね。かわいいし」

ナデシコも俺も爬虫類は好きな動物に入る。それに、魔物化した『グレートアースリザード』に比べれば可愛いものだ。


大規模商隊は、魔物の出現地帯を通る代わりに一直線に向かえる。

護衛も居るが、大半の魔物より早く走れ、小型程度なら踏み潰して進む。

『アースリザード』は脅威ではない魔物は恐れず、御者に従順らしい。

その幼体の『リトルアースリザード』は臆病で、すぐに隠れてしまうのだが、可愛げはある奴だった。


「ん?そう言えば、わざわざ『アースリザード』の規制中にラケルに来たのか……。いや、無作法だった、すまない」

ふとした呟きだったが、これでは来た理由を探るように聞こえるだろう。慌てて謝る。しかし、デライラさんの笑顔を崩れなかった。


「いいのよ。ふふ…実はね。……私、アーテナイ様のファンなの」

「そうなの!?」

ナデシコは俺達とアーテナイが知り合いだったからこその驚きだったが、デライラさんは別の驚きに写ったようだ。

「ええ、王都出身は皆、ユディット様のファンだと思われるのは当然よね。実際、ユディット様の事も尊敬しているわ。でも、私の一推しはアーテナイ様ね。ちょっとした知り合いの影響なのだけど…。それで、前々からラケルには行きたい、と思っていたの。丁度、時間も空いたから、元気な内に行きたいと思ってね」

「元気な内に…?」

なにかあるのかと、つい心配そうにしてしまった。しかし、デライラさんは笑顔のままだ。


「ああ、別に病気ではないのよ?ただ、最近、足腰が弱ってきてね」

そう言いながら、デライラさんは足をさすりながら苦笑する。

「前は一日中歩いても平気だったのに、今は半日で精一杯ね」

……いや、めっちゃ元気じゃん。


「ねぇねぇ、アーテナイ…様とは会えたの?」

「ふふ、それはバッチリよ。その辺の飲み屋を紹介された時は流石にビックリしたけど…」

アーテナイは庶民派なのだ。最近一週間は、俺達とご飯を食べた後、時々吞み歩いていたと他のドワーフから聞いていた。

アーテナイは酒好きだが、俺達と居る間、吞んだ所を見たことがない。子供扱いされていたのだろうか。


「遠くから見れればよかったのだけど、私の視線に気付いてくれて、『おっと、ラケルにお客人かい?一緒に吞もうじゃないか』って誘ってくれたのよ?」

少し自慢げにデライラさんは語る。アーテナイのファンサがエグい。


「その後は、お互いの身の上話を肴にね。……アーテナイ様は、私の少し理想とは違ったけど、とっても頼りになる素敵な女性だったわ」

「……ああ、そうだな」

「……ええ、私も大好きよ、アーテナイ、様のこと」

俺達が知る誰より強い、世話好きなアーテナイを思う。



「ちなみに、その時にアーテナイ様から聞いた最近面倒を見ている二人、に二人の特徴がバッチリあってるのだけど…偶然かしら?」

「「あ、ははは…」」

曖昧に笑う事しかできない俺達。もしかして、俺達に親しげだったのって……。まぁ、いいか。

言えることは一つだ。世間は狭い、思った以上に。


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