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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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78.暴走を止める。『欲しい』は止まらない。


今日は、聖龍歴500年5の月1日。場所は、貨物車両の屋根部分。時刻は昼前、といったところだろうか。


「「…………」」

俺達の間にあったのは、沈黙。

別に狩人ハンター試験で問いかけがあった訳ではない。


ナデシコの顔は見えない。両手で顔を覆っているからだ。でも、その真っ赤な耳まではカバー出来ていない。

その左手の人差し指に輝くのは銀色の指輪。俺も似たようなものを付けている。


それは、この世界で交わした約束の証。


特に示し合わせた訳でもないのに、お互いに用意したその似たような指輪は、互いの誕生日プレゼントでもあり、2時間程前に互いに交換したのだ。

その時、なぜか、どちらが相手をドキドキさせられるか、みたいなノリになってしまった。

結果だけ言えば、その勝負でナデシコは暴走し、俺は押し倒されたのだ。

何があったのか?いや、それは……まぁ、いいだろう。


熱に浮かされたような時間の中だった。鼻腔と肺にまだ甘い空気が残っている気がする。


「あの、ナデシコ……」

「!」

なんとか声を掛けたが、鋼鉄歯車メタルギアで見つかったような時のような反応だった。つまり酷い動揺。いや、そもそも隠れてないだろ。

そして、そんな時に貨物車両は停止した。


「おーい、お二人さん!午後からは客車に乗ってくれよー!」

「ああ、分かった!」

貨物車両の御者から声を掛けられた。俺はそれに返事を返す。


この車両はラケルから王都への商隊、ラケルからの輸出品の数々と客車がを運んでいる。

動力は大型トカゲの『アースリザード』。この世界の大地を駆けるものだ。


「……じゃ、私、先に行くから…!」

「え?あ、ナデシコ…!?」


ナデシコは、貨物車両から飛びりてしまった。流石の身体能力、動揺していても鮮やかなスーパーヒーロー着地だ。……膝を地面に付ける必要あったか?


結局、その後ものらりくらりと躱されて、いつの間にか客車に乗り込んでいた。

昼ご飯もお互いろくに食べられず、客車に乗ってからもナデシコは書き物をしていて、話しかけるなオーラ全開だった。

対面に、おばあさんも居たので、強引に話しかけられず、ナデシコを捕まえたのは、その夜だった。



「捕まえたぞ。ナデシコ」

「……残念だったわね。私は偽物よ」

「いや、そんな事言う奴、この世界で一人だから」


今は、宿場町の宿の二人部屋だ。夜は視界不良の為、移動はしない。

客車を申し込む時に説明を熱心に聞いて居たのは、むしろナデシコのはずだったし、一緒の部屋も二人で選んだ。

だから、どうしてもこのタイミングで、二人きりになると分かっていたと思うのだが。


「……なぁ、朝の事だけど……」

「………なによ。悪かったって思ってるわよ?でも仕方ないじゃない?こっちはこっちに来てからの初めての夜から、この感触知っちゃったんだから……ずっと我慢して……最後にシタのも一ヶ月くらい前だったし……」

ナデシコは、自分の唇に指を当てながら、真っ赤になって俯き、視線を彷徨わせる。


「……普段、一緒に居るときは『楽しい』が勝ってるけど……時々、『欲しい』が勝っちゃうの……」


宿屋のベッドに座って、涙目でこちらを見上げている。それこそ、反則だ。

身体の芯が熱くなるような感覚がある。


『欲しい』……ああ、確かに、この感覚に名前を付けるなら、そうだろう。


「……ナデシコ、実は、俺も我慢してるって言ったら信じてくれるか?」

ベッドの前に跪いて、ナデシコを見上げる。


「…知ってるわ。…夜、先に私が寝たとき、ヤマトってば、私の髪、撫でてるでしょ?」

「………バレてたか…」

「分かるわよ…」

「じゃあ、その次の日、髪を結んでないのって……」

「……それくらい、いつでもいい、って意味よ…」


ナデシコの髪を梳く、その感覚はなんとも心地がいい。でも、我慢しないと、一晩中でも続けてしまいそうになる。

そして、それを知られることは、なんだか凄く気恥ずかしい。


今も、許されるならそれこそ顔を隠してしまいたい。

でも、目をそらすと、どこかに逃げてしまいそうだ。ナデシコがではない、今二人の間にあるこの感情が、だ。


「なぁ、ナデシコ。お互い、少しだけ『我慢』止めないか?」

「え?………その、いいの?」

「二人きりの、時は、な?」

「………少しだけよ?」

「そうだな…」

「じゃあ……」

「ああ…」

俺は荷物を置いて、同じベッドに腰掛けた。ナデシコも荷物を足下に置いた。



「まずはやりたい事のリスト化ね」

「事柄、期間、頻度くらいか?」

「…後は、特記事項も作っておきましょうか」

「そうだな」

俺達は、紙を取り出すとお互いにリストの作成を始めた。


「スマホが懐かしいわね」

「PCもあれば、画面共通で作業出来るんだがな」

仕方ない。アナログで我慢しよう。


俺達には、『翻訳』の他にも、いわゆるチートアイテムを持っている。

それが、『取り寄せバックパック』。

俺達の所有物で鞄から取り出せるものを、こちらの世界に持って来れるのだ。

いくつかの制限もあるが、その一つが電子機器の持ち込み不可というものだったりする。

なので、異世界でも変わらずシャープペンやボールペンが使える。


「…手を繋ぐのは、毎日で一回以上で……」

「……髪を撫でるのは、寝る前、っと………」

お互いにペンを動かすのは、さながら勉強会だった。


「頭使うとお腹すくわね」

「昼間食べ損ねた弁当食おうか」

「そうね」


俺達は、宿場町の探索などもせず、この一室で一晩を明かしたのだった。

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