番外 冒険者とヤマトナデシコ 8
「「どうしよ……」」
「ホントにね。……魔物のせいにしようにも、魔石も素材も粉微塵だろうし、残ってても魔物の規模と釣り合わないしね。……なによコレ、笑えるわ」
いつも何かしらやらかしてる俺達だが、今回のコレが人様に迷惑を掛ける事は明確だった。
地面に穴を開けた轟音に『双杖』の二人もやってきた。俺達も肩身が狭い思いをしながら、穴に背を向け合流した。
そして、リニーは俺達と一緒に頭を抱え、ベンは穴を観察している。
ちなみに魔石は魔物の核のようなもので、素材は魔物の残留物、どちらも換金できて冒険者の収入源だ。
「……みんな、こっちに来てみて。そう単純じゃないみたいだ。……できる限り魔力を抑えてね」
俺達はベンに呼ばれ、穴の周囲に集合した。
「なによ、コレ……」
リニーの言葉だ。先ほどと同じ言葉だが、深刻度が増している。
穴を覗く、そこには大きな石が落ちていた。ナデシコが開けた穴と同経くらいだろうか?
中は暗くてよく見えないが、地下空間になっているようだ。
そして、なにより中から複数の気配を感じる。
「……魔物の巣窟。……魔力が特定の場所に貯まると複数の魔物が、その場所に発生する。ダンジョンのように場所に縛られず、そこで生まれた魔物は自由に出入りして被害を広げる」
「…教本の丸暗記なんて真面目ね、ベン。……じゃあ、私が続きを言いましょうか。……発見した場合はすぐに撤退が推奨される。そして、速やかにギルドに報告すること」
「ありがとう、リニー。……じゃあ、それはヤマトとナデシコの二人に任せようかな?」
「え?」
「……お前達はどうするんだ?」
二人はいつもの調子だ。ベンはにこやかで、リニーは眉間にしわを寄せている。
「足止め、かな?」
「そうね。護衛依頼は失敗でいいわ」
「何言ってるのよ…!」
覚悟を決めた表情の二人に、ナデシコが食い下がる。
「……この規模、数十は下らない魔物が居る。今はまだ出てこないみたいだけど、街に一直線なんて事になったら大変、だよね?」
「俺達のせいだろ…!」
「それは違うわ。むしろ、アンタとナデシコが居たから被害が出る前に発見出来た。……よくやったわね。ナデシコ、流石私の友達だわ」
「リニー…」
にこやかなで素直なリニーに、ナデシコはその名を呼ぶことしか出来ない。
「さ、行きなさい。出来るだけ、早く報告するのよ?……少し離れてから魔力を使っていいわ」
「二人とも、任せたよ。……ご飯、おいしかったよ」
二人は穴から視線を外さない。その背は語る。ここは任せて、先に行け、と。
「…ナデシコ、行こう」
「ヤマト…!……ええ、わかったわ…」
ナデシコは、俺の顔と視線の先を見て、頷いてくれた。
そして、俺達は駆け出す。穴の中へ。
「「なっ!」」
唖然とする二人、その顔を横目に俺達は、5メートルの滞空時間の後に、ナデシコの落とした岩の上に着地。
周りを見渡せば、感じるのは魔物の気配、『ブラウンスネーク』『ベノモススネーク』揃い踏み。
暗闇の奥には、より大きな気配も感じる。
「ダイナミックお邪魔します、パート2!」
「お宅訪問は初めてか、クソヘビ共!」
俺は日本刀『姫桜』を握る。ナデシコは背中から白いツバサを生やす。
そして、俺の髪は桜色に、ナデシコはそのツバサと同じく白に変わる。
魔力は全開、しかし、魔物はまだ襲ってこない。魔物は狡猾だ。一斉に仕掛け、必殺のタイミングを計っているのだろう。
「何やってるのよ!すぐに戻って来なさい!」
「そうだよ!どれだけの数がいるか分からないんだよ!」
上から二人の言葉が降ってくる。
「チッ、うるせーな!ハンセーしてまーす、よ!」
「今から暴れるから、逃げ出すヘビはヨロシクゥ!」
「「はぁ!?」」
もちろん、一匹も逃がすつもりはない。そして、全部魔石に変えて、二人に押付けるつもりだ。
「さぁ、ヤマト。カッコ良くいきましょう?」
「当たり前だ。……じゃ、アレやっとくか?」
「そうね!」
背中合わせで、言葉を掛け合う。
「朱谷纏、ヤマト。行くぞ!」
「異撫椎子、ナデシコ。行くわよ!」
ヘビの群れへ飛び込むのは、俺達二人。異世界からやってきたヤマトナデシコだ。
「桜然閃、連!!」
「ちょっと小規模!……アマリリス・ストライク!!」
俺の斬撃が連なり飛ベば、魔物の首が落ちる。
赤い燐光を纏うナデシコが地下空洞を駆ければ、魔石のみがその場に残される。
殲滅まで掛かった時間は約一時間。
異世界での魔物相手の無双劇は、なかなかに楽しかった。
しかし、勝者である俺達を迎えたのは、『双杖』の二人を筆頭に、この世界の大人達の説教であるのだが、今の俺達に知る由もない。
次回『番外 冒険者とヤマトナデシコ』完結です




