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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『間ノ章① あかいおまけ』

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番外 冒険者とヤマトナデシコ 7


「…言っておくけど、本来依頼人に戦わせるなんて、あってはならないことなんだからね?」

「…ボク達だから、二人だから、今回は例外ってこと、忘れないでね?」

「分かってるわ!…じゃ、危なくなったらよろしく!」

「『双杖』で倒したってことにしといてくれ」


俺達の視界の先には、先ほど倒した『ベノモススネーク』に似た『ブラウンスネーク』が居る。

この蛇型魔物、『ベノモススネーク』の下位種らしく、毒はないが、大きさは5m程で、俺達が知る蛇より太い。

野生動物はおろか、人間すらひとのみだろう。


前線は木刀を手にした俺。その後ろにナデシコは控え、『双杖』は万が一のフォローと周囲の警戒を頼んだ。

最初に発見したのは、ナデシコ。そして、先ほどの講義の実践をしたいと言ったのは俺。

二人は渋々了承してくれた。


『ブラウンスネーク』は、まだこちらに気付いていない。


俺は先ほどの講義、魔力の制御、について思い返していた。



魔力の制御、それは単純な『節約』と『溜め』。


まずは『節約』。

ペンを拾うのに、重量上げの如く力を入れる者はいない。

つまり、魔力を使うとは、この世界にとっては日常動作のひとつに過ぎないのだ。

逆に俺達にとって、魔力を使うとは、競技に挑むような緊張感と、戦いに結びついたものだ。


常に全力、故に緩急もなく、単調。

最大球速が同じでも、常に同じ速度のピッチングマシンと緩急を付ける投手、どちらの球を打ちやすいか。

無論、ピッチングマシンだ。タイミングさえ覚えれば、MAX160kmでも打てる。


『節約』は、常日頃から使ってる異世界の人間からすると前提。

戦いの場に合っても、常に全力ではガス欠を起こす。


しかし、俺達は、常に全力でも魔力切れを起こしたことがなく、アーテナイとの修行では、体力や時間の方が先に限界にきてしまうのが常だった。

それを話した時、『双杖』には呆れられたものだ。


では、込める魔力の大小で緩急をつけ、『節約』をしたとしよう。

それで、アーテナイに届くのか。否だ。多少、翻弄程度にはなるだろう。しかし、まだ足りない。

だからこそ、一時的にでも自身の全力を越えることが必要になってくる。


『溜め』がここで出てくる。


魔力を循環させ、圧縮し、打ち出す。

実は俺達は、コレを一度見ていた。

それは、『双杖』の二人が、アーテナイに挑んだ時だ。


あの時、リニーは魔力を『節約』しながら数でアーテナイを牽制し、ベンは魔力を『溜め』てアーテナイの木槌にヒビを入れる結果を生んだ。


アーテナイに挑むなら、『節約』と『溜め』、この二つが出来ることは前提だ。

身に付けて当然、使いこなせてスタートライン。


だから俺達は、今日、ここで身につける。



改めて、魔物に向き直り、少しだけ魔力を高める。

魔物は、肉の身体を持たず、その身は魔力で構成される。

そして、魔力ある生物を襲ってくる現象に近い存在、魔物は俺達に気付いた。


本来の蛇なら、威嚇や逃げることで生存の可能性を高める、戦闘とはリスクなのだ。

だが、魔物『ブラウンスネーク』は違う。

俺に向かって真っ直ぐに襲いかかってくる。這い回る事そのものがフェイントになっている。

接近を許した、その顎の二本の牙は鋭利。


「まずは半分、くらいか」


木刀に込める魔力をいつもの半分くらいに調整した。そのまま横に薙げば、『ブラウンスネーク』は近くの木まで飛ばさされた。


「シャー!!」

魔物に脳振盪はないらしい。初めて鳴き声を上げた『ブラウンスネーク』。残念なことに、俺が打った方の牙が折れている。そのことに動揺する魔物ではない。構わず、俺に向かう。


「じゃ、3割………2割……1割…5分。これくらいだな」


意外と力加減が難しい。力を込めすぎれば、吹き飛ばしてしまう。それでは訓練にならないので、徐々に力を落としていく。

いつもの5パーセント程度で飛ばさず、手加減が出来るようになった。まだ余裕があるが、あまり落としすぎても、事故が怖い。魔物が脅威とは忘れてはいけない。


『ブラウンスネーク』は、果敢に俺を責める。頭部を使った噛み付き、尻尾を使った下段なぎ払い。

俺の魔力を付与した木刀は折れず、身体能力を強化した状態で打ち込めば、その動きを止めることが出来る。

人外の動きだが、十分に対応出来た。そして、時間稼ぎは十分やった。後ろから立ち上る魔力を感じながら、そう思った。


「はぁぁ……!」


ナデシコンの息吹を感じる。ナデシコが最も得意とするのは、『強化』。魔力による身体能力向上。

その魔力を『溜め』、右手に集約している。


「…ナデシコ。周囲に魔物は居ない。でも、それは強すぎるな。下方向しろよ?」

『節約』は意外な効果があった。冷静に状況を判断出来るのだ。精神的な余裕が出来た故だろう。


「分かったわ…!」

逆に、ナデシコはどうしても力が入っている。やりとりが出来るだけ、まだ判断力は残っている。


込める魔力は一割、俺にとっては少ないが、先ほどまで倍の魔力だ。

『ブラウンスネーク』は不意打ちを受けたように、下段からの打ち上げに対応出来ない。

『ブラウンスネーク』は宙に浮かぶ、その時に後ろに下がる。

代わりに出てくるのは、ナデシコ。視線だけを交わす。…まったく、楽しそうにしやがって。


「溜めて…打つ…!」


技名さえ付いていない、その拳の打ち下ろしは、正確に『ブラウンスネーク』を捉える。


その日、ラケルの森に半径2メートル、深さ5メートルの穴が開いた。

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