番外 冒険者とヤマトナデシコ 5
「という訳で、午前の探索も終わったわね」
「ああ、午前中の反省会だな」
「私達からは、そうね…」
「うん、リニー、一緒に言おうか」
「「大人しくして」」
「「……はい」」
森の中を歩き回った俺達は、森の中の小川のそばで昼休憩をすることにした。
「まず、ナデシコ。私達が、地図で地形を確認した時、アンタなにしたか言いなさい」
「空を飛んで地形を確認しました」
「よし、二度とやるな」
ナデシコはこちらの世界に来てから、背中から自分の魔力を使ってツバサを生やせる。その際に、髪が白くなるのだが、ツバサを戻すと元に戻る。ナデシコ曰く、自由自在に飛行できるらしい。揚力などはガン無視だ。ライト兄弟も真っ青。
もっとも、今、リニーに怒られ小さくなっている姿は自由自在とは言いがたい。
「……一応、理由も言っておくけど、確かにあの羽だか翼は便利よ?けど、無意識かも知れないけど、周りにアンタの魔力が溢れてるの。もし、魔物が近くに居たら寄ってくるような量がね。だから、自重しなさい。でも、もしアンタしか居ない状況かつ、飛行型の魔物がいないなら使いなさいな。逃げるのには、その能力は最強よ」
「…そんな、逃げ足最強って言われても……」
「危ない、そう思ったら逃げなさい。生きる事、それが一番、でしょ?」
「…わかったわ、リニー」
リニーの目は真剣だった。ナデシコも、それを理解して頷いた。
「さて、ヤマト?キミは分かってるよね?」
「……魔物がいたので、仕留めた時に周囲の木を切りました」
「そう、正確には『ベノモススネーク』。毒の牙を持つ、魔法が使えないと少し厄介な蛇型魔物。幸い遠くだったけど、殆ど同時にお互いに気付いて、キミはとっさに剣を抜いて、その斬撃を飛ばしたね。……正直、魔法じゃないのに驚きだけど、今はいいや」
俺は、腰に愛刀の『姫桜』下げている。そして、俺はその刀で斬撃を飛ばすことが出来る。
『桜然閃』、魔力を込めれば鋼鉄さえ切れるそれは、ある種の必殺技であるのだが…。
「話を戻すよ?…うん、やりすぎ。木の後ろに隠れた『ベノモススネーク』ごと斬ったのは凄いけど、アレだとどうなるかわかるよね?」
「……ナデシコと一緒だろ?周囲の魔物を集める」
「そうそう。とっさの判断、実行はいいけど、パーティに一声かけてからやるべきだったよね。それとも、ボク達は信用出来ない?」
「い、いやそんなことないが…」
「分かってるよ。今回はまだ距離に余裕があったから声かけが欲しかった。だけどもし、キミしか脅威に気付いてない緊急の危機だったら、その時は助けて欲しい。お願い出来るかな?」
「……分かった。すまなかった、みんな」
「…ごめん、私もヤマトがなにやるか分かってたけど、止めなかったわ…」
「……二人とも戦えるからと言って、冒険者と同じ心構えがあるわけないってのは、考えれば分かることだったのに、見落としてたわ。私の方こそ、謝らせて」
「護衛対象に先に動かれた、ボク達の責任でもある。それは謝らないとね」
「「ごめんなさい」」
結局、四人とも謝った。そして、顔を見合わせる。
「よし、反省会終わりね!」
「飯にしようぜ」
「お昼は二人が作るって依頼文の備考にあったけど、なにかは書いてなかったわね」
「さすらいの料理人の料理か、楽しみだな」
昼前に四人で話していたことだ。反省会が終わったら引きずらない。しっかり頭に入れて、美味い飯を食べよう、と。
ちなみに、さすらいの料理人とは、俺達がお祭りで料理対決をした際に付けられた謎の異名だ。自称になるが割と地に足着けてるし、料理人でもない。
「今日は鳥の照り焼き風サンドよ」
「日本酒と砂糖があればより完璧なんだがな。甘さはタマネギで代用だ」
「傷まないように今日はしっかり焼いたけど、タマネギ効果で柔らかジューシーよ」
「…この匂い、食欲をそそるのよね」
「豪華だなぁ。……乾燥したパンと干し肉に戻れるかな?」
「やめて、ベン。思い出しただけで口が渇くわ」
料理人ではないが、異世界で日本料理の再現はやっていた。皆の食いつきがいいのだ。
ちなみに、『醤油』と『みりん』は代用品をこちらの世界で見つけている。
「まぁ、でもアンタらも『可食判定』は忘れないでよね」
「水は『飲水生成』でボクが作るよ。水を汲んでくるね」
「『かしょくはんてい』…?」
「『いんすいせいせい』…?」
「「………?」」
ポカンとする俺達に、その反応に首を傾げる二人。
「……二人は、生活魔法について、どれくらい知ってるのかな?」
「ええっと、ドワーフが付与、エルフが魔法を得意なように、人間が得意なのよね」
「具体的に何があるかは分からないな」
「あー、なるほどね。基本過ぎて、誰も教えてないってことね。……マジで?」
「「マジで」」
「「そっかー」」
どうやら、ご飯の間も語り合いは続きそうだ。




