番外 冒険者とヤマトナデシコ 2
「で、どこに行くんだ?」
隣を歩く、ナデシコに話しかける。その足取りに迷いはない。どうやら考えがあるのは間違いないらしい。
「ほら、今日はなんか暇になっちゃったじゃない?」
「まぁな」
今は4の月の中旬。祭りから2週間ほど経過して、街の景色も見慣れたものになっていた。
鉱山勧誘と言うなのストリートファイトも、料理再現というなのレシピ開発も一段落、『ぬいさま』の受注も落ち着いて、騒がしい毎日を送る俺達に不意に訪れた平穏だった。
目下の課題と言えば…
「アーテナイとの修行も三日間の休みが入ることになったけど、私達だけで魔力を使った訓練もしちゃダメって言われたし」
「負け続きだし、そろそろ一本入れたいところなんだけどな。シェーヌ曰く、休息も修行の内らしいけど」
アーテナイ、今を生きる伝説の英雄。俺達は運良く、その女ドワーフにして、鉱山街ラケルのトップと知り合いであった。
今日もアーテナイとの訓練の予定だったのだが、その側近の苦労人エルフ、シェーヌからのストップが入った。
どうもアーテナイの書類仕事が貯まっていたらしい。最近アーテナイは俺達の所に顔を出すか、一緒に修行していたので、さもありなん。
頑張れアーテナイ。お前がこの町でナンバーワンだ。
だから書類も多いのだ。
「そうそう。でも、訓練にも、ちょっとした息抜きにもなって、ついでにお金の使い道にもなる。そんな、アイデアがこちらです」
「ロケかよ。……ここは、冒険者ギルド?」
異世界定番スポットだった。アーテナイの自宅とアレクさんの道の間にあるので、看板は見たことあるが、入った事は無い。
「そうそう、私達の『こっち』での戦いの指南役って、思えば『あの二人』が最初でしょ?」
「『双杖』な。でも、流石に仕事で忙しい……いや、金の使い道っていうと……」
「そう!依頼しちゃいましょう!冒険者の二人に!」
『双杖』のベンとリニー、Bランクパーティで俺達の友人と言ってもいいだろう。
その二人に、異世界から来た俺達は、魔力の基礎を教えてもらった。
今思い出しても、分かりやすい内容だった。
二人のアドバイスで勝てるほど甘くはないだろうが、何かしらのヒントは得られるかもしれない。
「なるほどな。てっきり、冒険者登録でもするのかと思ったぜ」
「まぁ、興味はあるけど、今のところ必要無いんじゃない?お金もあるし、伝説の身元保証人もいるし」
「書類上は保護者アーテナイだもんな」
この街、ラケルにはノー審査で入れたが、いざという時は身元照会などが発生する。
俺達の出生登録・市民登録など、異世界であるここにあるわけがない。
冒険者は冒険者ギルドが保証人にもなってくれるそうだが、幸運なことに俺達の事情を知るアーテナイがラケルの市民登録をしてくれた。加えて、保証人にもなってくれている。
雪だるま式に恩が重なっている。しかも本人は、気にするなと言うのだから、甘えることしか許されない。
「その件は、きっちり一撃入れて恩返ししましょう?」
「アーテナイ以外だったら、仇で返すみたいな台詞だな」
俺達の修行を付けている時のアーテナイは実に楽しそうだ。お陰で遠慮無く掛かっていける。
つい話し込んでしまったが、そろそろギルドに入ろう。人は少ないが、入り口でたむろするのも良くない。
「さて、ここは『頼もう!』でいいのかしら」
「道場じゃないんだから。…普通に入ろうぜ?」
「普通って?」
「……初めてだから分かんないな」
「ダメじゃん」
結局、二人揃って辺りを見回しながら入って行った。
初めて来たが、どこか見覚えもある気がする。様々な創作物で見てきたものと大差ないからだろう。
掲示板のようなものには、依頼と思われる張り紙が貼られ、奥にはカウンター。なんとなく目線をやれば、会釈と笑みを女性職員からもらった。会釈を返す。
同じ建物内に食事処もあるようだ。今は昼前だからか、一つのテーブルで三人が食事だけ、と人も少ない。
「ちょっと感動…。イメージ通りのファンタジーね」
「ドラマのセットに入ったみたいだ」
「どちらかというと、ジオラマ?」
二人、気付けば回りを見回していた。
正直、『こちら』の世界の冒険者そのものへのイメージは、こちらをよく知らないのに勧誘されたりと、そこまで良くなかった。なのに、いざ来てみればテンションがあがる。テーマパークに来たみたいだぜ。
なので、その接近に気付かなかった。
「よぉ、お二人さん。依頼に来たのか?それとも、まさか冒険者登録じゃないだろうな?」
強面の男だったが、なんというか強そうに感じない。魔力が目に見えて低いからか?
にやついているが、観光気分な俺達を注意しに来たのだろうか?
「依頼に来たの」
「初めてだから、勝手が分からなくてな」
「え?…そうなの?」
「「そうなの」」
ポカンとしてしまった強面の男。どうしたのだろうか?
「えーっと……じゃあ、こっちで書類に記入して、カウンターにもって行けばいいから……案内しようか?」
「お願いします」
「助かります」
「あ、そう……。タメ口でいいぞ?」
どうやら案内係の人らしい。ご厚意に甘えることにした。先ほど食事してたように見えたが、親切なひとだ。
俺達は、大人しく案内されることにした。




