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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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75.この誓いを重ねる



「……おにーちゃんと、おねーちゃんのへやに行ってくるね」


昼過ぎ、眠りから覚めた少女は昼食を食べると、家族にそう言って、元は客室だった場所に向かう。

涙はない、薄く笑みさえ浮かべている。しかし、階段を降りる音は、軽快とは言えない。

今日は、教会での学習もないことが幸いだった。


「……大丈夫かしら?」

「……きっと、大丈夫だよ。ただ…」


元気を取り戻すには、少しだけ時間が掛かるかもしれない。それは言わなかった。

きっと、大人になる階段の途中で、少し立ち止まってるのだ。そして、それは必要なことだと両親は知っていた。


「お手紙の書き方でも、教えましょうか?」

「そうだね。それはいい考えだ」


宛先は、王都の魔法学園でいいのだろうか。

早く両親の元に帰るべきだ、と思うと同時に、もう少しだけこちらに居て欲しいと思ってしまう。

自分の矛盾に苦笑していると、階段を駆け上がる音が響く。

まるで二人が居たときの騒動の序曲のようだ。


「おかあさん!おとうさん!おにーちゃんとおねーちゃんがいた!」


「「えぇ!?」」


思わず立ち上がった。そして、気付いた。アメリアの手の中にあったもの、それは……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「今頃、見つかってるかしら?」

「どうだろうな?……まさか、自分を模した人形を作ることになるとは、さすが異世界」

「いや、異世界関係ないし」


俺達は、貨物車の上で寛いでいた。

最後尾のこの貨物はあまり揺れがなく、林の中は木陰になって心地がいいくらいだ。


「ま、伝言役には丁度いいだろ」

「アメリアちゃん一家には、お礼の手紙と『ぬい』たちね」


俺達は、各個人に当てた贈り物を残していた。お礼の手紙はみんなに。


アレクさんには異世界の車両のイラストを、カレブさんには覚えてる限りの服の三面図。

シャーロットさんには、料理のレシピ。それから、一度返された仮面。もしかしたら、また役に立つ時がくるかもしれないし。

そして、アメリアちゃんには、俺達とアメリアちゃん一家を模したぬいぐるみ。自分の目を作ってる途中で正気に戻りそうだったが、やり遂げた。


「冒険者ギルドの受付さんは、ちゃんと渡してくれたかしら?」

「俺達のファンを自称してたし、大丈夫だろ。……少し苦笑してたようにも見えたけど」


ベンにはリニーの、リニーにはベンのぬいぐるみを贈った。あの二人はもっと匂わせるべきだと思う。


「…アーテナイの屋敷は苦戦したわね」

「というか、思いっきりバレたしな。親衛隊に」

「買収に応じる柔軟さがあって…よかった、のかしら?」

「ノーコメントで」


親衛隊とシェーヌ、文官の皆さんには、より詳しいアーテナイぬいの作成方や、『ぬいさま』用の小物類の作り方をまとめたもの。

シェーヌには、役立ちそうな書式のテンプレを贈った。手書きなので、地味に枚数が多くなってしまった。

他にも、工房長に俺達が知る伝説上の武器をまとめたものなど。


「……アーテナイはどう思うかしら?呆れる?怒る?」

「どうだろうな。でも、アメリアちゃんとおそろいと分かったら……」

「次会うときまでに、強くなりましょう」

「それ、もっと格好いい場面で使いたい台詞なのに」


アーテナイにも、合計6体のぬいぐるみが同梱されてる。

内訳はアメリアちゃんに贈ったものと一緒だ。


アーテナイへの感謝の手紙が一番長くなったかもしれない。

二人、それぞれ書いたが、これまでの振り返りや、その時の心情まで勢いで書いてしまった。

二人合わせて、紙束みたいになってしまった。


「…本当に、次に会うときが楽しみね」

「ああ、全くだ」


帰る前には、もう一度手紙を書こう。

確証もないのに、漠然と未来を思う。

そう言えば、お酒が好きと言っていたのに、俺達との食事の席では飲んだところを見たことがない。

子供扱いは、ずっとされてた。それは少し面白くない。

四年くらい掛かるが、お酌くらいさせて貰えるようになりたいものだ。


「ところで、ナデシコ。誕生日プレゼントなんだが……」

「春休みに二人で買ったやつがあったわね。『むこう』に」


毎年、両家の集まるちょっとしたホームパーティーでプレゼント交換をしていた。

だから、交換は帰ってから、そう二人で決めていた。

俺は自分のポケットを漁りながら、言葉を続ける。


「いや、異世界での誕生日もあっても、いいんじゃないかと思ってな。4の月1日がこちらで誕生日ってことで」

「ヤマトの次の台詞は『これを贈らせてほしい』、ね?」

「これを贈らせてほしい……ハッ!」

いや、何をやらすねん。


「……まったく、似たもの同士ってのも、困りものね」

ナデシコに目を向ければ、ナデシコも小さな革袋を取り出してる。俺も取り出せば、サイズ感まで一緒で驚く。


「せーの、で出しましょうか?」

「いいだろう」

「「せーの!」」

お互いに袋の中身を取り出す。お互いの手にあるのは、銀色の指輪。


「いや、めっちゃ被るやん」

「コントがしたいわけじゃないんだけどね」

どうしてこうなった。ラブストーリーをやらせてほしい、コメディはほどほどで。


「ちなみに俺は、工房長の工房で教えてもらいながら作ったんだが……」

「私はアーテナイの個人工房借りて」

「「アーテナイんちのお泊まり会の時に…」」

たまにナデシコはアーテナイの家に泊まりに行っていた。アメリアちゃんと一緒に。

作ってるタイミングまで一緒だった。


「先行はもらった!さぁ、ヤマト!手を出しなさい!」

指輪を交換する婚約者の台詞か、これが…。

左手を出す。ナデシコは少し動揺した。どうやら、一歩リードしたようだ。


「……薬指は、『あっち』に帰ってから、ね?」

はにかみながら、俺の人差し指に指輪を付けるナデシコ。

見事な上目使いと、笑み。身長差を利用した見事な一撃だ。

顔に血が集まるのが分かる。


「決まったわね?さあ、ヤマトのターンよ?……それとも、時間が必要かしら?」

「………くッ」

勝ち誇った顔だ。クソッ、顔がいい…!

先ほどの動揺で、ツッコミでペースを取り戻すことが出来ない。

ならば、もうヤケだ。


「…………?……!?」

俺は、あえて、何も言わずに指輪を人差し指へ。その様子にナデシコは首を傾げる。

油断したな?……俺は、ナデシコの手を自分の口元に運ぶ、ナデシコは僅かに動揺するが、されるがままだ。


俺は、左手薬指の根元へ口付けをする。


「……ここ、予約したからな?」


もう少し、気の利いた事が言えたら良かったのだが、血液は心臓と顔へ回り、脳が働いていないことが自分でもわかる。

はたして、ナデシコの反応は……。

と、伺おうとしたのだが、俺はいつの間にか、車両に仰向けに倒れていた。


「……え?」

「…………反則負けよ、ヤマトの」


いつの間にやらマウントポジション。俺以上に顔の赤いナデシコは、魔力を漲らせている。

わー、初日の夜みたいだー。……じゃない!?


俺達は、アーテナイの元で修行した。

その結果、様々分野で互角だった俺達は、はっきりと得意科目が出来た。

いや、前置きはいい。

俺が言いたいのは、もう体術でナデシコに勝てない、というこの事実。


「あのー、ナデシコ、さん……?」

「……悪い唇、塞いだほうがいいわよね?」

ダメだ。声が届かない。俺は抵抗を放棄した。


「……せめて、優しく、してほしい……」

「……ッ!」




初めてのキスは、俺から。二回目は、お互いに。

そして、三回目から先、数え切れない程の回数は………。


だが、誓って、絶対に、夜想曲ノクターンが奏でられる前に終わったと、言っておく。








Q:どうしてナデシコを煽ることを言ったんですか?

A:坊やだからさ


ご覧の小説サイトは、『小説家になろう』です。

決して、『ノクターンノベルズ』ではありません。

次回、エピローグです。(作者)


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