表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/150

74.贈りもの、贈るもの


俺達が乗るのは、ラケルから出発する輸出品の商隊。各宿場町と王都を経由して、大陸各所に行くらしい。

輸出品は多岐に渡り、香辛料や加工肉、武器、各種鉱石を加工した加工品やインゴットなど、ラケルの名産品の数々。

複数のアースリザードが牽く、大型車両からなる一団。王都への到着は3日後の予定だ。

ラケルの精鋭ドワーフ兵、そのカバーに護衛の冒険者も同行している。魔物の出現など、いざという時も安心という訳だ。

商隊の中には、客車もある。そこに俺達の席があるのだが、今日だけは最後尾の貨物車の屋根が俺達の指定席だ。少しでも、ラケルを目に焼き付けたかったのだ。

商隊長も、この一ヶ月で知り合ったドワーフだ。事前に許可も取った。


「アンタら、これも持っていきな!」

「おっと…!」

「アーテナイ、なにこれ?」


出発直前、アーテナイが投げ寄越したもの、指先ほどの大きさのそれは、赤い星を象られた記章だった。


赤星章せきせいしょう、アーテナイ様に挑戦し、勝利した物へ贈られるものですよ。ちなみに、長らく与えていなかったので、アーテナイ様が一から作り直すことになりました」

「余計な事言ってんじゃないよ、シェーヌ。……ま、記念だ、取っときな!」

「ありがとな、アーテナイ!」

「ありがとう!……アーテナイバッジ、ゲットだぜ!」

そこは我慢しろよ、ナデシコ。


アーテナイから受け取ったものは、本当に数知れない。

この異界の空を照らす赤い導きの星。その象徴が、俺達の胸元に宿った。


「みんなー!またねー!」

「行ってきまーす!」

貨物車の上から、皆に向けて大きく手を振る。

先頭車両は走り出している。間もなく、動き出す。


「再会を楽しみにしておるぞー!」

「いつでもおいでー!」

「絶対、無事でお家に帰るのよ!」

アレクさん、カレブさん、シャーロットさんの温かい声。


「かましてきなさい!二人とも!」

「王都もキミ達でめちゃくちゃにすればいいと思うよ!」

『双杖』の二人のからかうような激励。


「王都で父に会ったら、頼ってみてください!お気を付けて!」

シェーヌは一礼する。見送りの時まで、助言とは、性格が出ている。


「ヤマトおにーちゃん!ナデシコおねーちゃん!またねー!ぜったい、またねー!」

ぬいぐるみを抱きしめ、小さな身体から精一杯の声をだすアメリアちゃん。

俺達は、何度も頷き、手を振る。アメリアちゃんを頼んだぞ、ポンちゃん四世。

……ん?いま、ぬいぐるみが敬礼の姿勢をとったような……気のせい、だよな?


「…………」

アーテナイは、言葉を発さない。俺達を見て不敵に笑っている。

ああ、そうだな。続きは、また会ったときに時に語ろうな。

そして、こちらに拳を向けた。俺達は、それに拳を向ける。


受け取ったもの、それは勇気。残していく物、それは約束。


車両は動き出す。徐々に加速する車両は、皆の人影を小さくする。

ラケルの大門が視界に収まった。


「俺達が来たのがこの街で良かった!みんなに出会えて、嬉しかった!」

「ラケル!みんな!愛してるわ!」

「「ありがとう!」」


感謝。それが、俺達がこの都市に贈った言葉だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


車両は、あっという間に小さくなっていった。見えなくなるまで見送った。

それでも、まだ手振る少女がいた。

「アメリア……」

少女の母が、声を掛けても、その手は止まらない。


「どうしたんだい?……アメリア」

大きな手が、少女の頭の上に乗る。ヤマトとナデシコにするのとは違い、優しい手つきで。


「……おみおくりのとき、はなかないって、やくそくしたの。でも、やめたら、こぼれちゃうの……」

もう、終わった。そう言える人は、この場に居なかった。


「そうかい。よし!じゃあ、新しい約束、いや勝負をしようかね」

「しょうぶ?」

少女は、アーテナイの方を向いた。勝負、それは二人がよくやっていたもの。手は、思わず止まった、潤み出す瞳。アーテナイはその少女を持ち上げ、その瞳と向かい合う。


「そう、先に泣いた方が負け!勝った方は、好きに泣いてよし!じゃあ!始め!」

「え?えぇー!?」

待ったも、同意もなく、始まった勝負に少女は、困惑のままだ。

そして、気付いた。一筋の涙が、その英雄の瞳から零れたのを。


「あーあ、負ちまった。アタシの友達のアメリアは強いねぇ…」

「……っ!」


その勝者は、火が着いた様に泣いた。

敗者は、自分の衣服が濡れるのも構わず、抱きしめて、その背中を擦る。

やがて、勝者が疲れて眠りに落ちた頃、その母親がやってきた。

ゆっくりと、譲り渡す。


「…ありがとうございます。アーテナイ様。私は、貴方を誇りに思います」

「アンタら母娘には負けるけどね」

「…もう、あまり、からかわないでくださいね?……二人が居なくても、また遊びにきてください。……私も、アーテナイ様を、友人の一人と思ってもいいですか?」

「もちろんさ。シャーロットさん、いやシャーロットには一回、負けてるからね。五分のダチさ」

「わかったわ、アーテナイ。……今までも、今日も本当に、ありがとう」


こうして、一同はそれぞれの帰路に着く、今日という日は始まったばかりだ。


それぞれ、思わぬ物を受け取ることになるとは知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ