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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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73.誓うは再会、このすばらしい人達と


今日は、聖龍歴500年5の月1日。

今日までに、俺達もずいぶんこちらの常識を身に付けた。日付も今ではすぐ思い浮かぶ。

場所は、ラケルの門。時刻は朝にも関わらず、アメリアちゃん一家も、アーテナイにシェーヌ、『双杖』の二人まで来てくれた。

出発の時間までは、余裕はある。

装備は、駆け出し冒険者といった軽装だが、その一つ一つが、ドワーフ職人からの誕生日プレゼント、という名目で貰った一生物の一品だ。

特に、アーテナイがくれた足甲と手甲は、値段の付けれないものらしい。


「道中気を付けるのじゃぞ?」

「二人とも、忘れ物はないかい?」

「…お弁当、食べてね?」

アレクさん、カレブさん、シャーロットさんは、どこか不安げだ。


「大丈夫!荷物は全部入れたし、私に掛かればお弁当も朝飯前よ!」

「いや、朝飯はもう食べただろが……。俺も、ナデシコも荷物の点検はやった、それから」

「「本当に、お世話になりました!」」

三人に頭を下げる。衣食住どれも、本当にお世話になった。

根無し草だった俺達が、この街に留まれたのは、この大人達のお陰だった。

顔を上げた時、三人の笑顔があった。



「…学園、行くんですって?せいぜい気を付けなさい。面倒臭い貴族に目を付けられないようにね。……大丈夫、規格外なアンタ達には、二つの世界くらいで丁度いいに決まってるもの」

「…困ったな、リニーが素直だ。……二人とも、旅の無事を祈ってるよ」

二人とも優雅な礼をする。恐らく、冒険者の作法ではない。最大の敬意を持って、送りだそうとしてくれているのだろう。


「当たり前よ!ガンくれる奴が居たらきっちり黙らせるわ!」

「しっかり止める。安心してくれ」

「いつか、二人の家にも遊びに行くから」

「「覚悟してろ!」」

俺達は、いつかの闘技場の控え室のように拳を突き出す。

『双杖』の二人は、苦笑して、冒険者が仲間を称えるように、その拳に自分の拳を当てた。



「お二人は、知識、作業能力もとても優秀です。生活や行き場に困ったら、いつでもラケルで雇用しますよ」

「しみったれたこと言うんじゃないよ、シェーヌ!……いいかい、何かあったらアタシを呼びな。どこでも駆けつけるさ」

シェーヌは、背中を叩かれていた。ちょっと身体が浮いたが、大丈夫だろうか?

アーテナイは俺達の前に来て頭に手を伸ばそうとしたが、途中で止めて、俺達を抱きしめた。


「早く行っちまいな!そんで、また会おう!今度の勝負はアタシが勝つ!分かったかい!この、生意気でクソガキな勇気ある我が友よ!」


力強い抱擁だった。耳元の声は大きく、魂まで揺さぶられるようで、なにがあっても忘れられそうにない。


「上等よ!参った、って言わせて見なさい!また会いましょう!この…!……この!」

ナデシコは、なかなか言葉が出ない。言葉に詰まってしまうようだった。

「行ってくる!そして、また会おう!喧嘩っぱやい、お節介焼きで、強くて、優しい我が友!」

「……私たちの、大好きなアーテナイ…!」


俺たちにとって、アーテナイは英雄か。と問われれば、それはきっと違う。

友だ。友達だ。恩人だけど喧嘩友達で、強いのに不安を抱えた親友。

ずっと助けてくれてるのに、いつかは助けたいと思ってしまう、この世界での友達。

抱擁が解れた。お互いの目は潤んでいたが、にやりと笑い、それぞれが額を突き合わせる。

痛みより、残ったものがそこにあった。



「………………おにーちゃん、おねーちゃん。………ぽんちゃん、かえすね」

「アメリアちゃん?」

「その、どうして…?」

道中は元気だったのに、立ち止まってからはシャーロットさんの後ろに隠れていた。

後ろから出てきたと思ったら、その手には、昨日贈った『ぽんちゃん4世』。

昨日は飛び上がらんばかりに喜んで、ずっと手に抱えたままだったもの。

今は、それで顔を隠している。


「さよなら、いらない!!ずっと!うちに居て!!」


アメリアちゃんは、頭のいい子だ。度胸もあれば、器も大きい。

昨日、今日は泣かない、とアメリアちゃんから約束した。

でも、小さな子供だった。

潤んだ瞳で、俺たちを睨む。

その涙の防波堤は、昨日の約束。

そのぬいぐるみは、別れの象徴。


シャーロットさんが駆け寄ろうとする。それを俺達は、目線で止めた。

ある意味、熊より、アーテナイより、巨大魔物より、ずっと強敵だ。

でも、絶対に逃げずに、立ち向かい、向かいあわなければならない。

俺たちは、二人でアメリアちゃんを抱きしめた。


「……アメリアちゃん、さよならじゃ、ないわ」

「うそつき!!」

「嘘じゃない。嘘にさせない。…また会える、絶対」

「…きょうのおひるは?きょうのよるは?」

「それは、さすがに間に合わないわね。…だけどね、次会うときは、もっと、もーっと!楽しいことしましょう!たくさん!すごくたくさんよ?」

「………やくそくする?」

「約束するよ。それに、ナデシコはツバサがあるし、俺はかけっこ、めちゃくちゃ得意なんだぜ?ピンチの時にはすぐに駆け付けるさ」

「…わすれない?」

「忘れないわ。…そうだ、アメリアちゃん。これ、預けるわ」

「…これ、おねーちゃんの……」


三人の抱擁を解き、ナデシコは赤いリボンを差し出す。


「大切なリボンよ。とっても大事なもの。だから、預かってくれる?次、会ったとき、返してね?」

ナデシコは、アメリアちゃんにリボンを結んだ。

側頭部に結んだ長いリボンは、アメリアちゃんの視界にも入る。

その表情は、笑みに変わる。目が細められたときに、一粒の涙が落ちた。


「うん!またね!ヤマトおにーちゃん!ナデシコおねーちゃん!」


思い出の中に、それと重なる笑顔あった。そして、思い出した。

俺はかつて、あのリボンを追って、森の中を走っていた。

泣いている子の、『その背を追う』、その時に。


「ええ!絶対!また会いましょうね!」

「ああ、また会おうな!」


「……もう、一回、いい?」

アメリアちゃんは、手を広げた。上目遣いで、何かをねだるように。


「「もちろん!」」


再び、アメリアちゃんを抱きしめる。

出発の時間ギリギリまで、その抱擁は解かれることはなかった。


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