70.この後めちゃめちゃ怒られた
あの後、結局夕方近くまで雑談などをしながら過ごしていた。
アーテナイは、夕方の、つまり先ほどの宣言があるので、闘技場に向かうとのことだった。
それに同行して、俺達はこの特等席でそれを眺めることになった。
「……なんかムカついきたわ」
「どうした急に」
帰る人の町並みを見ながら、ナデシコはポツリと呟いた。
スルーしてもいいのだが、内容が内容なだけにツッコミをしなければなかった。
「なーんで、私達が『切ない』とか『寂しい』なんて、ツマンナイもの抱えてお祭りを終わらないといけないのよ!」
「情緒不安定過ぎないか、流石にさ」
立ち上がった、ナデシコは吠える。高さの関係で下に聞こえてないのが、唯一の救いだ。
「だって、誕生日で、お祭りよ?ハッピーでないともったいないじゃない!」
「いや、もったいないって………まぁ、確かにそうか?」
いかん、流されてきた。けどま、いいか。お祭り騒ぎとも言うし。
「さぁ!チート全開で行くわよ!」
「よし!何をやる?」
「今から考える!」
「つまり、作戦会議だな」
そうして、俺達は悪巧みを考える。正義のヒーローが現れなかったということは、『ワル』ではあっても『アク』ではないのだろう。
俺達は話し合う。今までの手札を見返して、その『ツマンナイもの』をやっつける為に。
鍵は、チートアイテムと誕生日。
「『取り寄せバックパック』。よく聞きなさい。私は誕生日プレゼンを決めたわ」
ナデシコは、言い聞かせるように宣言した。そして、手を入れる。
「だから、おじいちゃんの、アナログカメラとフィルム一式、アレは私のものよ!」
自分のものしか取り出せない、電化製品は取り出せない。その縛りがあった。
だから、普段携帯端末で写真を済ませる俺達は、カメラを出すなんて発想がなかった。
しかし、今日は誕生日。
だったら、あの孫に甘い爺さんが、ナデシコの欲しがるものをくれない理由がない。
ナデシコは、手を取り出す。その手に、二つのものを掴んで。
「よし、通った!」
「うん。俺とナデシコの入学前の写真を撮ったものと一緒だな」
だったら、俺も使い方が分かる。珍しいカメラだったので、爺さんに使い方を聞いていたのだ。
嬉しそうに俺に教える爺さんを思い出す。多趣味な爺さんでよかった。
背面を開ければ、フィルムはないので、セットする。
「あとは撮るだけなんだが、テストに一枚、撮っとくか」
「じゃ、二人でね!」
夕日をバックに一枚。フイルムはその場で確認出来ない。それでもいい。
異世界の記憶が、記録になった瞬間だった。
「じゃ、後は下にいくか?」
「………ねぇ、ヤマト。私と相乗りする勇気ある?」
「ま、まさか…!」
俺達の作戦は、こうだった。
ナデシコが、誕生日プレゼントとして、カメラを貰い。俺が撮る。
異世界にない技術を持ち込むのだ、故に悪巧み。
みんなの記録を残して『ツマンナイもの』をやっつける。
しかし、ナデシコは最短の道を行こうとしている。少し悩んだが、俺は相乗りを選んだ。
「ああああああ!」
「大袈裟ね?空を飛ぶのは初めて?私は二回目」
「だから!不安なんだよ!」
ナデシコの髪は白く背中にはツバサがあり、俺は頭ピンクだ。違った、桜色です。
俺まで変わる必要があったかと言えば疑問だが、『姫桜』の柄を握って覚悟を決めたら、こうなったので仕方ない。戻るよな?
俺の両脇にはナデシコの腕、俺の手にはカメラ。急転直下で真下のアーテナイへ。
「はぁ!?アンタら、なんでその格好で!?」
周りの運営も戸惑っている。無理もない。俺も同じ場面にあったら混乱必須だ。
「ナデシコ、ホバーって出来るか!?」
「やってみる!」
「やった事無いなら止めて!落ちちゃう!」
「出来た!」
「出来ちゃうのかよ!?」
そんな訳で空から一枚。アーテナイと親衛隊達を記録した。
「じゃ、アーテナイまたねー」
「ちょっと行ってくる!」
「…………………ハッ、待ちな!」
流石のアーテナイも、すぐには反応出来ないみたいだ。俺達は、ラケルの街を飛ぶ。
「……おや、翼人とはめずらしいね、久しぶりにみた」
「どうしたんですか、父さん?…ここに居るわけ………お二人とも!?」
「どうも、シェーヌさんにはお世話になってます。ヤマトです」
「ナデシコです。ちょっと、お姿記録して大丈夫ですか?」
「これはご丁寧に。私はアイヒェ、構いませんとも」
「何を非常識に常識的なやりとりをしてるんですか!?」
シェーヌとその父親を記録した。
「……ねぇ、リニー、アレ見間違いかな?」
「どうしたのベン、空なんか指さし………ハァ!?」
「よっ」
「高いとこから失礼、またね」
「……いや、待ちなさい!!」
「……追わないとダメかな?」
『双杖』の二人を記録した。
その後も記録は続く、料理対決でお世話になったドワーフに、今日も門の近くにいたツィンクさん。鉱夫ドワーフと身重の奥さん、その近くにいたアイゼンさん。実況ドワーフ、コーレンと飲んでる工房長クプファさん。この町並みそのもの。複数の記録を残す。後、なんか下が騒がしかったけど無視した。
「「アメリアちゃーん」」
「はーい!」
「おや、どこらともなく二人の声が……」
「父さん、上だよ上…ん?上?」
「え!?二人とも何やってるの!?」
アメリアちゃん一家を記録した。
その後、俺達は地面に降りた。俺達の髪色はたちまち元に戻り、ツバサも消えた。
「いやー、みんなの事を、この……なんだろ、異世界の機械で記録に残してたの」
「空からになったのは成り行きだけどな」
俺達は頭を掻きながら、苦笑する。全員ぽかんとしているが、カメラの概念を説明するのは今度にしよう。なぜなら、
「アメリア!そのバカ二人を捕まえな!」
「うん!…えーい!」
俺達は捕まってしまった。あれ?もしかして、ナチュラルにバカって思われてる?
しかし、抵抗は出来ない。振り払うにはその手は、小さすぎた。
「どういうつもりですか!?お二人とも!街は軽く混乱状態ですよ!?」
「……アーテナイ様が走り回ってたのも原因だけどね」
「説明!……はやっぱりいいわ…。それより、しっかり怒られなさいな」
「さっきのは見間違いかの……」
「うーん、二人だからなぁ……」
「もう、また何かやったのね?」
知り合い大集合だ。丁度いい、殆ど驚き顔だったからな。
「ごめんない、みんな。でも…」
「すまないが、説教の前に一つだけ頼みがある」
「「「「「……今度はなに?」」」」」
画角の調整をした後、ゼンマイ式のセルフタイマーをセットした。
俺達は、集合写真を記録した。
現像するまで、その表情は分からない。
でも、きっとみんな笑顔だ。
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しばらくした後、アーテナイの寝室には一枚の書類が置かれた。
書類の類いが苦手なアーテナイが寝室にまで持ち込んだ書類。
わざわざ書類に対して付与まで施し、破れず、文字も消えない様に加工されたその書類の内容は以下の通りだ。
反省文
私達はこの度、ラケルの街を飛び回り、街に混乱を招きました。
被害については、交通遅延や驚いて物を落とした人もいました。
今後は許可無く街で飛び回りません。
反省の証として、これから3日間の祭りの片付けや、街の清掃活動に従事します。
提出日
聖龍歴500年4の月1日・閉山祭最終日
提出者・連名
ヤマト ナデシコ
身元引受人
アーテナイ
【以下、紙の隅に日本語で書かれている】
誰か反省なんかしますかっての!またやります!
ナデシコ
今度は合法的かバレずにやります。
ヤマト




