67. 結局その二人って付き合ってるの?
「美味しかったわね。ついご飯に夢中であまり話せなかったわ」
「何か話でもあったの?リニー」
「……なぁ、ベン。お前が夢中だったのは、アメリアちゃんだったろ、ってツッコミを入れていいと思うか?」
「……リニーの機嫌が悪くなると思うよ?ヤマト」
食後のお茶を楽しみながら、リニーは切り出した。それに応えるのはナデシコ。
男子チームはこっそり密談。アメリアちゃんは、果実水を飲みながら、お姉さん二人を興味深げに交互に見ている。
「ちょっとした話よ。貸し借りはなくなったけど、今後の為にも、是非聞きたい話があってね。話してくれるなら、私達の『願い』を話すわ」
「…なにかしら」
リニーの表情は、ちょっとした意地悪をする様だった。ナデシコも少しだけ身構える。
「……キミ達の秘密を聞いちゃって、気まずいからちょっとした情報交換がしたいんだって」
「……なーる」
哀れ、リニー、全部ばらされてる。
「ズバリ、アンタ達の付き合ったきっかけを知りたいわ!」
「つきあう?」
「恋人同士になった時の話が聞きたいってことよ、アメリアちゃん」
「わー、ききたーい!」
リニーは、アメリアちゃんにはだだ甘だ。一方、ナデシコはキョトン顔。俺の方を見るので、俺も肩をすくめるジェスチャーで返すしかない。だって……
「私達、付き合ってないわよ?」
「はぁああああああああああああ!?」
ここが高級店だと忘れたのだろうか、リニーの声はいくら個室とは言え、店中に響くような声量だった。
全く、大袈裟だ。現にベンは、
「……………!?!?」
目を見開き、顎を開け、俺達二人を交互に見ている。あれ?そんなに?
「どうしたんだい?えらく元気のいい声じゃないか?…おお、あんたらかい」
「あ、アーテナイじゃない」
「もしかして、デートか?」
ワインレッドのパンツルックのアーテナイはいつもよりきっちりした格好をしている。
「ご存じの通り顔が広くてね。まぁ、接待みたいなもんさ。今、終わったとこだよ。……で、今度はなにをやらかしたんだい?」
「「してない、してない」」
俺達は、驚きに固まった『双杖』の代わりに応えた。照れもしないとは大人だ。
「えっとね、リニーおねーちゃんが、つきあったきっかけ?を聞いたら、ナデシコおねーちゃんがつきあってない、だって」
「ハハハ、そりゃ、たちの悪い冗談だね」
お前もか、アーテナイ。
「だから、付き合ってないって」
「恋人じゃないぞ」
「…………………異世界では子供でも結婚出来る、とかかい?」
「法律的に無理よ。ちなみに『双杖』の二人にも、私達の事は話してるから安心して」
少なくとも、俺達の住む地域では無理だ。異世界の時点で、戸を閉めて小声になったアーテナイ。
「…異世界では、恋人を隠す風習とか…」
「ないぞ」
聞いたことが無い風習だ。
「なんだってぇええええええ!?」
リニーとだいたい同じリアクションじゃねぇか。
「詳しく……。説明しな。今、アタシは冷静さを欠こうてんだよ…!」
過去に冷静なアーテナイを見たことは少ないのだが、とにかく凄い迫力だった。
先ほどまで平和な食事会場だったのに雰囲気が、一気に取調室だ。
ちなみに流石に店員が注意をしに来たが、アーテナイが一睨みで追い返した。権力の横暴だ。
全員椅子に掛けているが、俺達と三人の対立構造だ。中立はアメリアちゃん。
アーテナイが追加注文したフルーツ盛り合わせに夢中で、援軍は見込めそうにない。
「いや、詳しくって言われてもな?」
「そのままよ?」
それ以外に何を言わばいいのか、今の俺達には理解出来ない。
「……じゃあ、質問に答えてくれるかな?パートナーと聞いて、思い浮かぶのは?」
「ヤマトよ」「ナデシコだな」
冷静さを取り戻したベンの質問、すぐに答えたのに、その頭に浮かぶのは大きな疑問符。
「……好きな人は居る?もちろん、恋愛感情的な意味よ?」
「ヤマトよ」「ナデシコだな」
冷静さを取り戻したリニーの質問、答えた後は顔を覆って天を仰いでしまったが。
「おにーちゃんとおねーちゃんは、いつ結婚するの?」
「そうねぇ、いつ頃かしら?ヤマト?」
「職に就いてからだろ。異世界だと……5年以上先になるだろうな」
アメリアちゃんの質問。大学等の事情は話さなくていいだろうと判断した。結局、4対2になってるな。
「んんん?だったらアンタらの関係は………婚約者?」
「そうよ」「そうだな」
首を傾げながらのアーテナイの質問に答えた。
「「「………先に言え!!」」」
三人は俺達に怒鳴ると、テーブルに身体を預けた。なんだその、全てが徒労に終わったかのような脱力は。
「はぁ、疲れた。…親が決めた婚約者、ってわけ?」
「結婚くらい自分で決めるわよ」
「いつ頃決めたのかな?」
「そうだな…あれは五歳の頃だな」
「話変わって来たね」
「私が、結婚しよう、って言って」
「俺が、いいよ、ってOKした」
「わたしもいわれたー。やだ、って言ったけど」
名も知れぬ少年よ、強く生きてくれ。
「つまり何?……子供の頃の約束を律儀に守って、婚約者ってわけ?」
「すごく、二人らしいね……」
「10年間護り続けてるって言えば、聞こえはいいんだけどねぇ…」
三人ともお茶を飲んでくつろいでる。結構仲いいな、この三人。
「ある意味そうだが、毎年約束し直してるぞ」
「そうそう。私達、誕生日が同じでね。毎年、その日に約束してるの」
「「「……ご馳走さま」」」
胸焼けを抑えるような仕草を終えると、再び三人のお茶が消費されていく。
「あ、そう言えば、今日って、初登校日から3日だから……」
「ああ、肉体的には今日が誕生日だな」
そう、4月初旬。それが俺達の誕生日だ。暦はズレてるけど。
「「「先に言え!このバカ!!」」」
三人はとうとう立ち上がって俺達を怒鳴り飛ばした。
「おにーちゃん、おねーちゃん、おめでとー!」
アメリアちゃんマジ天使。




