表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/149

63.ある人物の来訪

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時は、ヤマトとナデシコが去った後のアーテナイ邸。


アーテナイは、食料庫にて、つまみを探していた。

二人と別れた後、朝酒をして夜まで昼寝を決めるつもりだった。


今日は、咎める物も居ない。

昨日、酒で潰れた親衛隊の面々、シェーヌを含む文官連中。

今頃、夢の中のはずだ。


「確か、コンソメスープだったかい?アレには……コレだね」


腸詰め、ソーセージを出した。少し残ったスープで茹でていただくつもりだ。

期待に胸を膨らませて、食料庫から調理場へ。


「…おはよう。アーテナイ。…久しぶりだね」


残りのコンソメスープを皿にとって、優雅に飲んでいるのは一人のエルフ。

アーテナイに比べれば小さいが、長身細身の女性。

白金のような金髪が波を打ち、光を反射し燐光を纏っているようだ。

髪色と同じ長いまつげ、気だるげな垂れ目は翠の色。

旅装に身を包んだ、そのエルフの名は…


「ユディット!?なんでアンタが…!?」


七天将星しちてんしょうせい、緑のユディット。

曰く、魔法の知識・技術に関しては世界一。

曰く、都市整備等の戦後の世界を救った人物。

曰く、アーテナイよりマイペース。


「…閉山祭のオークションは、興味深い素材が出品されるからね。…今回は特に、直前に出品された『魔物になりかけ』という珍しい品も出ていた。…有難く、研究材料にさせてもらうよ」


スプーンすら止めずに、ユディットは淡々と告げる。


「いや、アタシの家に居ることを聞いてるんだよ!?というか、そのスープは…!」

「…うん、とても、いいね。…持ち帰り分はないのかい?」

「無いよ!てか、アタシのだ!!」

「…そうか、残念だ。…では、一つ借り、としておこう」


鞄から、容器を取り出したユディットは、残りのスープを注ぐ。


「なにやってんだい?」

「…研究しようと思ってね。…ちなみにこれは、長期保存を可能とした保温容器。…生活魔法、『抗菌』の研究過程で生まれてね。…なかなかの名作だ。……制作予算に目を瞑れば」

「ほんとに何やってんだか……いや、ちょっと待ちな。アンタが料理の研究?何の冗談だい?」


アーテナイの印象の中のユディットにとって食事とは、口に入ればなんでもいい、栄養補給目的以上の行為で無かった筈だ。


「…………美味しい物を、一緒に食べたい人が……出来たんだ………」

その頬が、若干、赤くなる。


「……………………………本当に、ユディットか、アンタ」

アーテナイは自分の目を疑った。感じる魔力はユディット本人。

なのに眼の前の、まるで恋する乙女は誰だと。

「…本人だとも」

その頬には、すでに赤みがない。まるで何事も無かったようだ。


「まあ、いいか。アンタの考えが読めないのは、今日に始まった話じゃ無いしね。……いや、違う!何しに来たんだって、質問に答えて無いよ!」

「…ここに来たのは、キミの顔を見るため、とでも言おうかな?」

流し目のユディットは微笑む。男女関係なく、ときめかせる魔性の笑みだ。

「気味の悪いこと言ってんじゃないよ」

アーテナイは苦い顔だ。外なら唾でも吐いていたかもしれない。

「…冗談だ。…貸しを作りに来たのだが、スープで帳消しでいいさ」

一枚の紙をテーブルに置く、まるでスープの代金のように。


「一応、聞いておくけど、どうやって、いつ入ったんだい?」

アーテナイは、対面に腰掛ける。身長差で見下す形になるのだが、ユディットは意にも介さない。

「…魔力は隠蔽して、タイミングは『彼ら』を見送った後、かな?…流石に驚いたよ、『彼ら』を撫でるキミは…とても楽しそうだった、からね…」

ユディットは微笑む。それは、自然な笑みで、先ほどの流し目より、よほど魅力的だ。


「フン!…そうだ。アイツらのことで、アンタに一つ頼みたいことが…」

「…いいとも」

「内容くらい聞いたらどうだい」

「…『彼ら』に、魔法を教える、かな?」

「まさか、昨日から屋敷に居たなんて言わないだろうね?」

「…簡単な事だよ。…『彼ら』の魔力、今はその本来の一割程度かな、使えているのは…。…人の才能をもったいないと思ったのは、久しぶりだ。…ここでキミに潜在魔力と顕在魔力の講義をしてもいいのだけど、聞くかい?」

「分かってることを、聞くんじゃ無いよ。……まぁ、魔法の教授だけじゃ無いが、後はアイツらがアンタと上手く交渉するだろうさ」

「…『彼ら』を信頼しているんだね。…本当に驚かせられる。…この件は貸し借りに含めなくていいよ。……ワタシもか『彼ら』に興味がでた」

「研究対象、なんて言ったらブッ飛ばすよ?」

「…長年の友人の、新たな『仲間』に対する興味さ」

「…………」

「…種族、寿命を越えた関係など、よくある話さ。…照れなくていいとも」

「照れちゃいないよ!!」

赤い顔のアーテナイは、机を叩くが、ユディットは食器を冷静に持ち上げるのみだ。


「…『彼ら』には推薦状でも、持たせたまえ。…キミの推薦状があれば、周囲も贔屓だとは、思わないさ。…少なくとも向こう半年は、王都とその周辺にはいる。……そろそろ、帰るよ」

自身が使った食器をきっちり洗って、ユディットは、食堂の出口へ向かう。

「そうかい。気を付けて帰りな」

「…ワタシの心配をしている、のか?」

「まさか。アンタがやらかす事に対する心配に決まってるだろ?『ラケル』はアタシの縄張りだって、忘れるんじゃないよ?」

「…全く、ワタシほどの平和主義者は、居ないというのに」

肩をすくめるユディット。アーテナイは、疑わしい目でそれを見る。


「…では、ワタシも自分の縄張りに、『王都魔法学園』に帰るとしよう。…頑張りたまえ、アーテナイ」

そう言うと、風のように去って行った。残されたのは、紙が一枚。


「ん?頑張れ?…訳が分からないが、アイツの思考を考えるだけ無駄さね。どれどれ……」

嘆息と共に、紙を手に取る。そこに達筆な文字で書かれていたのは…


【 鉱山方面に魔力の異常あり。魔物の可能性:大。推奨:Aランク以上の冒険者パーティーによる調査。記:ユディット 】


「先に言え!!あのバカ!!」


こうして、親衛隊、文官達は文字通り、叩き起こされることになった。

街の最高戦力、アーテナイは自分の判断で馬車も待たず、鉱山へひた走る。

あくまで、待機鉱員の緊急避難のつもりだったが、念のため武器も持って。


それが、見知った『彼ら』、ヤマトとナデシコとの共闘になるとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ