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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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62.喧嘩も勝負も越えて、その三人で


「いいかい、魔物は出来るだけ殺す選択肢を選び続ける。弱い者から狙ったり、嫌がることをしたりね。しかも、自分の命を勘定に入れずに、だ」

アーテナイは、俺達に語りかける。


「あの魔物になった『グレートアースリザード』。どうやら、魔法の類い、遠くの敵を狙う術は持ってないみたいだね。だが、とんでもない再生力だよ。ああやって、動かず再生に専念して、アタシの魔力切れを狙ってるのさ。魔力が切れる前に、この檻は壊して、ぶっ殺すけどね」

炎の檻に捕らわれた赤い瞳は、俺達を見下ろしている。己の身体が焼かれてようが関係ない。


「なるほど、分かった」

「後は、アメリアちゃんとシャーロットさんの事だけど…」

「ああ、もちろん…」


「「「二人のことは任せた!……ん?」」」

三つの声は重なった。そして、顔を見合わせる俺達。つい、場違いにも笑った。

お互いに表情を引き締める。


「さあて、アンタ達との喧嘩も勝負も、十分やった!」

「そうね。まだ勝負の途中だけど、私達の背中を預けるならアーテナイがいい!」

「じゃあ、共同戦線、ってのには人数不足だな。……共闘だァ!」

「「上等!!」」


「じょーとー!」

「も、もう、アメリア……」

子供の前での言葉遣いには注意しよう。そう思った。


短い作戦会議の後、二人はアーテナイが先ほど作った岩のオブジェの後ろに居ることになった。

いつのまにか、『リトルアースリザード』もさらにその後ろに居た。

どうやら、難を逃れていたらしい。森の時もそうだったが、逃げ足、隠密に関しては凄いトカゲだ。

俺達は、その場所を背に魔物に向かい歩き出す。

背水の陣、不退転の覚悟、何でもいい、ここから何一つ、誰一人後ろに行かせない。


「じゃあ、一番手、赤のアーテナイ。行かせてもらおうかね」

アーテナイは、昨日の短い槌を持っていた。そして、炎の檻を解く。

次の瞬間、『グレートアースリザード』が取った行動は、地面への潜行。


『グレートアースリザード』の能力は、再生力と地面への潜行。

どちらも、アースリザードの生物としての特性。その特性を、魔物と化した『グレートアースリザード』は、魔力を以てその特性を凶悪なまでに特化させている。

現に、俺達も気を取られていたとは言え、潜行を見逃し、車両を危険にさらした。


「今こそ、勇気、女神に示せ!!」


アーテナイが、地面に槌を打ち付ける。地面に駆けるのは、アーテナイの赤き魔力。


これは、後からアーテナイ聞いた話だ。

ドワーフの武器とは、なにか?

槌か、斧か、どちらも否。それは手に収まる程、小さくない。

鉄か、鋼か、どちらも否。それは加工できる程、柔ではない。

炉か、炎か、どちらも否。それはそれより熱き物を含むもの。


「―――『アース・ギガント』!その腕で捉えな!!」


ドワーフの武器、それはこの世界の大地そのもの。

そして、それに魔力を付与し、意のままに操る。

それぞ、ドワーフの付与が最強と言われる所以。


かくして、ドワーフの縄張りに逃げこんだ哀れな不届きものは、巨大な腕に掴まれ、大地からつまみ出された。

全身を掴まれた姿は、まるで断罪を待つ罪人。日の下に晒される。


「ガァルゥア!?」


そして、続くは日ノ本より来たる二人。


「二番手、朱谷纏アケヤ・マトイ、ヤマト。行くぞ!」

「三番手、異撫椎子イナデ・シイコ、ナデシコ。行くわよ!」


俺は、アーテナイが生み出した腕を垂直に駆ける。

ナデシコは、どこまでも自由に白い光のツバサで空を翔る。


「―――桜然閃さくらぜんせん、斬首……承る!!」

俺は、魔物と化した『グレートアースリザード』の首の上で『姫桜ひめさくら』を抜刀。

『姫桜』の全長、約70cm。その首を落とせるわけが無い、本来なら。


―――チンッ


納刀の音、それを合図とするように、巨大な首は落下を始める。断末魔も無かった。

俺も、その後を追うように飛び降りる。

『グレートアースリザード』の身体は崩壊を始めるが、頭部はそうでは無い。

断面が蠢いてる。そして、赤い目は、その邪悪な光を失っていない。

生命の定義から外れた存在、魔物。そして、その魔物の核、魔石は頭部にあるようだ。


天空からの聞き慣れた声がする。


「よし!ただ今、命名完了!……アマリリス・ストライク!!」


白いツバサに赤い燐光を纏わせて、落下速度でナデシコが俺を追い抜いた。

すれ違いざまにこちらを見た。その姿勢は、見事な跳び蹴りの姿勢。

……わかったよ、後で褒めるって。いや、なんで赤い光を出してんだろ。


赤いアマリリス、その花言葉、『輝くほどの美しさ』や『誇り』。ナデシコによく似合う。


ナデシコは、『グレートアースリザード』の頭部に追いつき、地面への落下を加速させる。

まるで地面との挟み撃ち、加速された着地の衝撃をナデシコが居る事で、逃さない。

爆発、小規模のクレーターを作って、その頭部は砕け散った。

血肉は無い。皮も残らない。ただ、そのクレーターの片隅に残った、真っ二つに割れたスイカ大の魔石が、その魔物の存在を証明するのみだ。


「あー、スッキリした!」


ナデシコはクレーターの中心で、大きく伸び、そのまま仰向けで倒れた。白いツバサは、解ける様に消え、その髪も戻る。

俺もその頃には地面に到着。その瞬間、力が抜けた感覚があり、視線を前髪に移せば、黒くなっていて一安心。身体の重さが数倍にもなったような感覚、だがそれがすぐにいつもの感覚だと理解した。



「お疲れさん、ナデシコ」

ナデシコの隣に、座り込む。正確には、身体を支えれなくなった、という方が正しいかもしれない。

「お互いさま、でしょ?」

手を差し出された。意味は、なんとなく分かった。その手を握り、俺も仰向けに。



大地に体重を預け、二人で見上げた異世界の空は、青く遠い。


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