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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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60.その声に誓う、どこまでも翔る、このツバサ



「ガァアアアアアアアアア!!??」

初めて、魔物の声を、苦痛の呻きを聞いた。


だが、危機はまだ終わっていない。自由落下を続ける、母娘を助けなければ、何の意味も無い。

手には、『姫桜』、先ほどの一撃の代償か、空中で体勢を大きく崩した。


木を切ってクッションにするか。

いっそ落下点を斬れば少しでも衝撃を和らげられるか。

視界にチラリと写る桜色はなんだ?

思考は止まらない。考えろ、打開案を、現状を改善出来る案を……止まるな!諦めるな!

手札はなんだ、何が切れる!?



その時、白い風が吹き抜けた。


それは、物理法則にさえもNOを叩き付ける、最高にワガママな切り札。


ナデシコが空を翔る。ツバサを広げて。


「行けええええええええ!ナデシコォオオオ!!!」


その背に、声を投げる。思いを託すように。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


少女は、ナデシコは、幼い頃から、追いかけっこが好きだった。

それは、ナデシコに孤独を教えるものにもなったが、いつまでも付いてきてくれる存在が、ヤマトがその遊びの楽しさを思い出させてくれた。


ナデシコはそんなある時、不意に気付いた。

捕まった瞬間が一番、嬉しく、楽しいことに。

それからは、自分から捕まりにいった。


「もう…これじゃ、おいかけっこにならないよ?」


ヤマトは呆れながら、ナデシコを抱き留める。ツッコミが増えて行ったのは、この頃だった。

ヤマトの腕の中の心地よさに、ナデシコは胸が一杯だった。

その頃に交わした『ある約束』も、ナデシコを幸せにしてくれた。


その背に感じるものが、隣に感じるものになり、隣で歩き、隣で走る。

手を繋ぐのが好きで、よくお願いした。

年を重ねるうちに、言い訳は増えた。それでも、一度も断られた事が無いのは、ナデシコの自慢であり、ヤマトの長所だと思っている。

からかうものは返り討ちにしているうちに、暴れん坊などと呼ばれるようになったが、小さなことだった。


一方、幼いナデシコはある不平等を感じていた。


「わたしのほうが好きすぎる!」


わがままにも願う。同じくらいの思いが欲しいと。

遊びや、おやつに誘うのも自分からな現状に、遺憾の意を示していた。

実際は、ナデシコの行動力と並外れた身体能力の賜物なのだが、そこまでの理性を持ち合わせてはいなかった。


故に、ヤマトの好きなものを聞き始めたのだ。『彼ら』に出会ったのは、その時だった。


『ヒーロー』、物語の中で人と異なる力を持ちながら、それを守る為に使う存在。

折れず、曲がらず、ひねくれず、護り、生き抜く、その生き様に憧れた。

好意の対象は、ヤマトで埋まっていたため、ひたすらに憧憬の対象だった。


力を使いこなす為の遊び、戦いごっこ。

それにのめり込んだのも、これが理由だった。

ヤマトも居たことで、それは日常となった。


思いっきり遊んだ後に、空を見る。

巨大ロボットが、巨大ヒーローが、自分を見て、頷いてくれた気がした。

迷子を助ける、困ってる人に手を貸す。

等身大のヒーローが、サムズアップをしてる光景をみた。


そんな自分が大好きで、いつも隣で自分に付き合って人助けをするヤマトも、ますます好きになった。

だから、一度、完全に心が折れた時は、自分が大嫌いになった。

そして、そこから助けてくれた、自分だけの勇者。


その勇者は、諦めず、空中へ身を投げた、その背中を見た時の気持ちをナデシコを、スローモーションになった世界で探した。


(ああ……負けたんだ、おいかけっこ…)


隣に居たその背を見る。絶望に負けず、足掻き、抗うその背中が、遠い。

何も出来ない、こんな自分は………


『ふざけんな!お前がいないと困るんだよ!俺が!』


俯きかけた、視線を上げる。全身に力が籠もる。魔力は高まり、今にもこの心臓を突き破りそう。


『格好つけるさ!お前と二人でならどこまでもな!』


地面を蹴る。追いつきたい、違う!追い抜く!助ける!手が届かないなら、手の届く所まで行けばいい!


『ずっと一緒だ』


考え無し、ノープラン、散々言われた。それは自分の長所だ!前を見れば、ヤマトが、刀を掴んでいる。


「―――桜然閃さくらぜんせん!!」


ヤマトの髪が、桜色に変わった。そして、刀を振るのが見えたと思ったら、魔物の手が落ちた。

不思議と驚きは無かった。それくらい、自分の勇者なら出来て当然。


(さあ、選択の時間よ。

 1、このままヤマトがなんとかするのを、お利口なヒロインとして見ている。

 2、なんともならない。現実は非情である。

 3、なんとかする)


己の背に何かを感じていた。疼き、魔力の蠢動、そして、空の懐かしさ。


(1、最高ね。その他大勢ヒロインの仲間入り。チートハーレムの一員。反吐が出るわ)


魔力が形を成す。ナデシコは知らない。己の髪が白く染まり、魔力が溢れその背から決壊を迎えているのを。


(2、最悪。二人で泣いて、慰め合う?おあいにく様、そんなの私じゃない、私達じゃない!)


魔力が象るのは、ツバサ、空を切り裂き、顕現する。ナデシコの落下が止まった。


(3、これだ。これしか無い。だから、さっさと……力を寄越せ!!)


ナデシコが己の中に呼びかけた時、ツバサが空を掴んだ。

次の瞬間、まるで打ち出された弾丸の様に、落ちていく二人を目掛け、加速する身体。

その衝撃に声も出ない。それでも、


「行けええええええええ!ナデシコォオオオ!!!」


なにより心強いそのエールは、さらにツバサを加速させた。


(もう二度と、私は私を嫌わない…!私の勇者ヤマトに誓って!!)


ナデシコは、空を翔る。ツバサを広げて。誓いと共に。

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