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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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58.祭りの間も働く、その理由


『リトルアースリザード』の牽く車体は、鉱山『地竜の背びれ』に向けて木々の間をひた走る。

そこに乗るのは4人。俺とナデシコ、行者のシャーロットさんとアメリアちゃん。


「はやーい!」

「確かに、結構早いのね。あの短い手足で」

「乗るのは二回目だが、一昨日は駆け足だとしたら、今日はダッシュって感じだな」

整備された道は凹凸も少なく、荷台の俺達も普通に話す事が可能だ。


「二人ともありがとう。お祭りの途中なのに荷運びの手伝いなんて」

御者のシャーロットさんは少し申し訳なさそうだ。

「いいの、いいの……2割位、私達が原因だし…」


どうしてこうなったかというと、今回ばかりはアレクさんが主な原因だったりする。



昨日の飲みの席で、知り合いや商売仲間と飲んでいた時に、ついつい孫自慢をしてしまったらしい。

無理も無い、あれだけ可愛いアメリアちゃんが孫なのだから。

周りも、審査員として頑張ったアメリアちゃんを褒めた。アレクさん、ますます酒が進む。

そんな時、俺達は何者かが話題に上ったそうだ。謎の放浪の料理人、つまり俺達の話は酒の肴にぴったりという訳だ。

上機嫌なアレクさんは、俺達に助けられた事話して、今の服も自分の店だと話したそうだ。

それは別にいい。

問題は、それを鉱脈を開拓する商人に聞かれたことだ。


当たり外れのある鉱脈、その開拓をする商人は縁起や運を重要視する。

さて、この都市でもっとも有名な縁起物とは?答えは伝説の英雄アーテナイだ。

坑道の入り口には、槌や斧を飾る。最初の一振りはアーテナイが鍛えたツルハシや槌を使う。

果てはアーテナイが好きな酒をみんなで一杯やる。そんな風習すらあるそうだ。


そんな中現れたのは、アーテナイに気に入られた審査員と、アーテナイと引き分けた俺達。

そして、そんな3人の服の作成者は…。

というわけで、アレクさんの店の服は、いい縁起物になった。

しかも、都合のいいことに、作業服を扱う店だったという。

かくして、大量の発注、いやウチに1着でもという商人にもみくちゃにされ、可能な限り受けた結果。



「在庫分だけでも、祭り明けに間に合うように納品して欲しいなんて、初めてだわ…」

休日返上で、馬車を走らせることになった、シャーロットさんはため息をついた。

アレクさんとカレブさんは、祭り明けの調整に今日は一日使うそうだ。


元々、祭り返上で一家全員で今日は納品、明日は調整をするつもりだったそうだ。

それを俺達が黙って見てられる訳もなく、明日の祭り最終日を遊べるようにするため、荷運びの手伝いを買って出たのだ。


原因としては6割アレクさん、残りを俺達とアメリアちゃんで2分して2割と言った所だ。

え?根本のお料理対決は10割俺達?……それはそう。


地竜の背びれは近づく程にその大きさが分かる。

まるで壁、これを掘り進み、その鉱脈を当てる。それは、途方もない賭け事に思えた。

ラケルの街は、俺達基準から見ても豊かな街だ。分の悪い賭けではないのだろうが、縁起物に頼る気持ちも分かる気がする。


「見えてきたわ。共同倉庫よ。あの場所に納品すればお仕事おわり……帰ったらみんなでお昼を食べましょ?」

「うん!」 「そうね」 「そうだな」


壁のような鉱山から目を落とせば、小さな倉庫がある。いや、比較対象が桁違いなだけで、大型倉庫に分類されるものだろう。

時刻は昼前、車両一杯の服だが、所詮小型車両に乗る量、俺とナデシコに掛かれば朝飯前だ。いや、朝飯は食べた後なのだが。

アメリアちゃんのバフもある。がんばれ、って言われたら一瞬で終わってしまうだろう。



「おう!アンタらが連絡のあった作業服の納品者だな!祭りの最中に実にご苦労!……ん?顔になにか付いてるか?」

門番、アイゼンさんのそっくりさんが居た。もしかして、このタイプが平均的ドワーフなのだろうか。

「いや、実に鍛えられた身体。さすがラケルの街の鉱夫だなと」

「……どっかで聞いた台詞ね」

ナデシコが俺にだけ聞こえるように呟いた。


「ん~?ガハハ!よくわかっとる!ラケルの鉱夫と言えば街の顔!よろしくな兄弟!」

本当にどっかで聞いた台詞だった。


今にして思えば、あの時のアイゼンさんのザルに思える検問も、この世界の人の良さを信じた結果だったのかも知れない。だったらその信頼に応えるように振る舞おう、改めてそう思えたのだった。



「ここでいいのよね?」

「『作業服置き場』って書いてるな」

「おう!ご苦労さん!二人とも人間なのに大したもんだ!どうだい?鉱夫として一旗…」

「遠慮するわ」 「遠慮する」

「そうか!それもまたヨシ!」


資材などが置かれた倉庫の奥へに、俺達作業着を運び終わった。メンツは、俺とナデシコ、そして鉱夫ドワーフだ。力持ち三人なので、一度で済んでしまった。

シャーロットさんは運ぶつもりだったのだが、鉱夫ドワーフは自分が運ぶと聞かなかった。

「子供は親とおらねばならん!」とは、鉱夫の弁。

納品書のような物もすでにシャーロットさんに渡してしまった。

今は入り口付近で、母娘二人で待ってる事だろう。

手を大きく振って応援したアメリアちゃんに三人で応えた。


広い倉庫の中はそこそこ入り組んでおり、急遽スペースを作った納品場所までそれなりの時間があった。

服を運ぶ道中、10分程の時間、ドワーフの身の上話がBGMだった。

祭りの間の倉庫番は、給料がいいらしく、今度子供が生まれるそのドワーフは少しでも稼ぎたかったらしい。しかも宴会翌日は誰も立候補しないので、特に高額になるそうだ。


なるほど、アメリアちゃんとその母、シャーロットさんに気を遣うわけだ。

他の倉庫番も今はおらず、夕方に交代して最終日は身重の奥さんとゆっくり過ごすそうだ。

お幸せに、と二人で言っておいた。

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