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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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57.その二人に静寂は訪れない


「おにーちゃん、おねーちゃん、おはよー」

「おはよう、アメリアちゃん。今日も元気ね」

「おはよう、シャーロットさんとカレブさんはどうしたんだ?」

店の前でアメリアちゃんは、いい感じの棒を振るっていた。俺の真似だろうか。なかなかの太刀筋、将来は立派なサムライかもしれない。


「二人がとまってる部屋ですることがあるから、遊んでてだって」

「なにかしら?」

「別に荷物もおいてないしな。掃除もきっちりしてたが……」

ナデシコのよそ行きの服に、アーテナイと喧嘩したときにボロボロになった服を置いていた位だ。

ベットメイク?ホテルじゃあるまいし。気になったので、こっそりお邪魔した。小さな同行者も、抜き足差し足だ。


部屋で何やら動きがある。引きずる音、力む声。扉をそっと開ける。


「「………ヨシ」」

二つのベッドがくっついていた。間にあった小物置きは部屋の隅へ行っている。


「「ヨシ、じゃないが?」」

何をしてるのだろう。二重奏には二重奏のツッコミでご挨拶。


「あ、あら、二人ともお帰りなさい…。その、ごめんなさい。やっぱりベッドが狭かったのよね…?」

シングルベッド以上に何を望むというのか、というかくっつけたら、むしろ狭くなるのでは?

何故か照れながら、シャーロットさんは謎の謝罪。


「うん。二人は恩人で若人だからね。…ウチでは自由に過ごしてくれていいんだよ?」

相当自由にやらせて貰ってる筈なのだが、カレブさんは俺の肩を訳知り顔で叩いた。


………どういうことだ?


少なくとも、昨日別れる前までは、シャーロットさんは普通だった。

謎を解く鍵は、そこだろう。

昨日別れてから、今朝までにあったこと……。


「ねぇ、昨日アーテナイは伝言でなんて言ったの?」

同じ推理にたどり着いたナデシコが尋ねる。証言者は、アメリアちゃんだった。


「『二人は今日は私も知ってる所で、外泊するから心配ないさ。長引かなければ、二人で昼頃には戻るんじゃないかね?』って、言ってたよ?」


場所を濁したのは、アーテナイの家は政府の施設みたいなものなので、心配をさせない為だろう。

長引かなければ、この言葉は、アーテナイは俺達の気まずい雰囲気を知っていての注釈だったのだろう。


この発言をふまえた上で、二人の言動を振り返る。

アメリアちゃんを外してのベッドの接岸。照れるシャーロットさん。若人、自由、肩を叩くカレブさん。


「この部屋は意外と防音もバッチリさ。今夜は元気が出る物を食べよう!」

「…………その、程々にね?ちゃんと睡眠もとるのよ?」


「「それは違うよ!!」」


誤解が産んだ悲しい事件だった。

ナデシコがアメリアちゃんを外に避難させ、俺は事情を説明し始めた。

無論、お風呂場の件は誤魔化して。アーテナイが紛らわしいことを言ったことにした。


俺達は、内装を元に戻した後、借りてる部屋で休むことにした。

アメリアちゃん一家も、今日は家で休んでいる。アメリアちゃんは、昨日の狐面がお気に召したらしい。

外では付けれないので、家の中で眺めたり、紙に描き写しているらしい。


ナデシコはノートに書き物、俺はというと針仕事だ。

「なに作ってるの?」

「んー、ぽんちゃん4世…」

「……なにやってるのよ」

ナデシコは白い目でこちらを見てくる。

ちなみに材料は端切れ布、ジャージを貸した対価にカレブさんに貰ったものだ。丁度茶色の布もあったので、タヌキにぴったりだ。針と糸は、授業で使ってたやつだ。


「アメリアちゃんが気に入ってただろ?プレゼントしようと思ってな」

「いや、何で作れるのよ?」

「姉ちゃんがぬい活にハマってな。推しは人気キャラらしく、全然店頭になくてな。作れると思ったんで、作ってみた。そして、贈ったんだよ」

「いい話ね」

「日に日に機嫌が悪くなる。俺にも転売通報を手伝わせる。そんな日々を終わらせる為だった」

「神話の神様みたいね、姉さん」

違いない、とんだ荒魂だ。

「結局、シリーズ一通り作って献上して鎮めたってわけだ」

「姉さんのSNSに乗ってた、手作りぬいの作者って……」

「まぁ、俺だな」

自作ぬいなんてタグが付いてたが、自分の弟が作ったのを自作と言うのは、無理があるとは思ってた。

「…苦労したのね」

「途中からは結構楽しかったぞ?材料費はあっち持ちだし、報酬も出たしな」

最終的には目などは刺繍で描いていた。日中ナデシコと走り回って疲れた後に、気を落ち着ける時間だった。

「報酬?」

「ドーナッツとか、パンとかだな。甘味が主だ」

ちょっといいメロンパンやマカロンなど、自分では手を出さないものも、貰うと嬉しい。

「……ちなみに、私が初耳な事についてなにか一言」

「ナデシコにとってのソロバンレースみたいなもんだろ」

「全然違うじゃない」

「そうかな?」

「そうよ。自慢とかしなさいよ。……私もなにか頼めばよかった…」

もし頼まれたら、断らなかったと思うが、それより…

「だったら、今から一緒に作ってみるか?ナデシコは器用だし、すぐ覚えられるだろ?」

俺はその時も、一緒にやろう、と誘ったと思う。

「そうする!型紙から作ればいいの?」

そして、ナデシコは機嫌よく、俺の隣に座った。

「ああ、それはな……」

こうして、穏やかな時間を過ごした。



「た、大変じゃあ!」

玄関からアレクさんの声が聞こえた。

30分程の穏やかな時間、終了のお知らせ。

でも今日は凄いぞ、半日近くも平和だった。あれ、目頭が……。


「……そう言えば、居なかったわね」

言うなナデシコ、俺もそう思ってたけど。

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