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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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56.その英雄と朝食を


「あがったよ。……って、なんだい?この香り……」


風呂上がりのアーテナイは、髪を拭きながら食堂に現れた。

食堂は広く、普段の喧噪が察せられる。特別席などないのが、普段のアーテナイの振る舞いを想像出来るというものだ。


食卓には、焼けたパンと野菜の『コンソメ』スープが湯気を立てている。

これは俺が出した、キューブタイプのものを使った。キャンプ道具の中にあったのだ。

あとは、『豚』の塩漬け肉、つまりベーコンの厚切りを焼いたもの。

やはり、この世界の『豚』も大きいみたいだ。

食料庫にベーコンの塊を見つけた、いや見上げた時は、二人でちょっとテンションが上がった。


「俺達の世界の……出汁かな?」

「野菜とか肉とかを煮詰めたスープを固めたものよ。お湯に溶かすと、その味を再現出来るってわけ」

「いいのかい?数も限られる貴重なもんだろ?…しかし、綺麗な琥珀色だね…」

アーテナイは席に着いた。発言は遠慮気味だが、目線はスープを向いている。


「いいんだ。それに、賭けの景品を知っとくのは大切だろ?」

昨日の勝負の約束だ。俺はつまみを用意すると言った。だから、アーテナイにも俺達の世界の味を知っておいて貰いたい。

「そうよ。昨日の夜は……まぁ『お湯』に流した事もあるけど、忘れちゃいけないこともあったしね」

アメリアちゃんの審判。リニーとの約束。アーテナイの誓い、それから新たな勝負。その全てだ。


「それに、私達の世界で『三日』って特別なのよ?刮目かつもくとか、坊主とか、天下とかね」

いや、『三日会わざれば刮目して見よ』は、ともかく、『三日坊主』も『三日天下』も、いい意味ではないだろ。


「分かったよ。じゃあ、有難く頂くとするかね。……そう言えば、そっちの世界でも、食事の前は女神様に祈るのかい?」

祈りをしようとした、アーテナイはその動作を止め、質問をしてきた。

それこそ、主義とか家庭によって違うのだが、女神は居ないとも言えない。宗教はノータッチがベターだ。


「私達の世界、というか私達の住むところでは、こんな風に手を合わせて、いただきます、の一言かしら?」

胸の前で、手を合わせるナデシコ、軽く顎を引き、目を閉じる。

改めて見れば、その動作は祈りそのものだ。

「食べ物そのものや、作り手などの関わった人たち、食べられることの幸運に感謝して、今から食べます、って挨拶だな」

厳密には違うかも知れないが、俺達の認識はこうだ。家庭科の先生は30分くらい語ってた気がする。


「……そうかい。じゃあ、今日はそっちの流儀に合わせるとするかね。それじゃあ…」

すっかり関心した様子のアーテナイは、手を合わせた。その動作は、見たばかりなのに様になっている。

俺もその動作に合わせる。久しぶりの慣れた動作は、なんだかとても落ち着いた。


「「「いただきます」」」

同じ言葉が響く、俺達は感謝を込めて朝食を食べ始めた。


厳かな挨拶の後は、俺達らしく騒がしかった。

アーテナイはコンソメの味に驚き立ち上がったり、俺達は噛みしめたベーコンの脂の濃厚さに驚いたり、それぞれの世界の食材を楽しんでいた。

ほかにも、『ごちそうさま』の話をしたり、昔の食事の話を聞いたりした。歴史の生き証人、アーテナイの話は面白かった。


「「「ごちそうさまでした」」」

賑やかで、楽しい朝食の時間はあっという間だった。



「……世界は違っても、変わらないものもが、あるんだね」

三人で並んで食器を洗っていると、アーテナイがしみじみと呟いた。

「そのまとめ、私が言いたかった」

ナデシコは頬を膨らませた。

「全く…台無しだって、の」

俺はその鼻に、一つの泡を付けることでツッコミとした。

「ハハハ、よく似合ってるよ。ナデシコ」

その泡は中々消えず、アーテナイは笑う。

「……あとで覚えてなさいよ、ヤマト」

言葉とは裏腹に、その笑顔にナデシコは満足そうだった。

「はいよ」

後片付けもすぐに終わったのだった。



「二人とも、今日はどうするんだい?」

玄関にてアーテナイは俺達に尋ねる。そう言えば、最終日以外の予定がなかった。

「とりあえず、シャーロットさんに昨日の報告して考えるわ」


「今日こそ、大人しくしてるさ」

「「……………」」

「……なんか言ってくれよ、自信なくなるだろ?」

不安だ。犬が歩いて棒に当たるとするなら、俺達が歩いたらいつの間にか闘技場だ。どんなバタフライ効果だ。



「ま、祭りは明日までだ。存分に楽しみな。……祭りが終わったら、王都行きの打ち合わせでもしようかね」


アーテナイは笑ってるが、少し寂しそうだ。それはきっと気のせいではないだろう。

俺達も察していたことだ。この祭りが終われば、別れは近い。

アーテナイはこの都市に欠かせない人物だ。離れる訳にはいかないだろう。


この都市で出会った人たちとの別れ、まだ三日目だと言うのに気が重い。

もし、今異世界を行き来する方法を見つければ、毎日でも通ってしまうかもしれない。

バカな考えを、振り切る。


「ああ、また世話になる。アーテナイも、また何か仕事があったら言ってくれよ?くれぐれも勝負事以外で」

「そうね。王都での生活費もほしいしね。……勝負事以外でなら、何でも言ってちょうだい」


「アンタらねぇ……。ま、考えといてやるさ。晩飯、空けときな!朝飯の礼がまだだからね!」


今日もアーテナイに強引に頭を撫でられることになった。

髪型はぐちゃぐちゃだったが、俺達三人は笑顔で新たな約束を交わした。

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