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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第三節 ナデシコの誓いと共闘、そして…

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55.まるで夢の中のような、その朝

朝、目が覚めた。

空の明るさから昨日より、早く目覚めたことを悟る。

温泉と来客用のベッドは疲れをすっかり取ってくれたようだった。

昨日は動揺の方が大きかったが、このベッドも国賓とかが使うものではなかろうか。


ホテルの一室を思わせる部屋、違和感を覚えるのは、壁に剣に斧、槍まで飾ってある。

ラケル自慢の一品なのか、装飾が丁寧だ。朝の日差しにそれらが照らされている。

それでも、美しさでは『姫桜』方に俺は軍配を上げる。

何気なく布袋から取り出し、その柄を握る。


「………おはよう、『姫桜』」


身体に緊張が走る。眠気が飛び、一気に意識が覚醒した。まるで一つのトリガーだ。

身体から力を抜く、ゆっくり呼吸をする。それを意識して二度、三度。

柄が手に馴染む。それを持つことこそが、自然体の様に感じる。

無性に素振りをしたくなったが、流石に自重。布袋にしまい、朝の身支度をした。


「流石に、緊張するな…」


さっきの緊張とは種類が違う。扉の先は、アーテナイの寝室。つまり、ナデシコが寝ている。

時刻は昨日は起きていた時刻より少し過ぎたくらいだ。ナデシコなら起きていると思ったが、見込みが違った。

軽いノックを数回。ノックのマナーもあったと思うが、忘れた。返事はない。


「ナデシコー、入るぞー」


扉を開ける。ベッドの上には、昨日のミノムシスタイルではない、ナデシコ。今は、寝息を立てている。声かけにも反応しない。ベッドに近づく。


「なぁ、そろそろ、起きた方が……」

「………うーん…」


肯定なのか、まどろみなのか分からない。顔を覗き込めば、目は閉じたままだ。つい、まつげの長さや、唇に目が行く。

俺の指が、ナデシコの髪を触れた。無意識だった。

強引に動かせば起こすかもと、自分に言い訳をしてゆっくり梳いていく。


「……ふふ…」

ナデシコはご機嫌だ。目は閉じたままなのに、唇が笑みに変わり、鼻から鼻歌の様な声が零れた。


どちらかを選択すべきだ。起こすのか、立ち去るのか。

なのに、足は言うことを聞かない。指は、ナデシコの髪の感触を覚えている。

もう一度、そう囁いたのは誤魔化しよう無いほど俺の理性以外のものだった。


「…ナデシコ、起きてるのか…?」


手を伸ばした。その手が取られた。

心臓が跳ねた。その手を取った本人は夢の中だ。

無防備な笑み、手の平の暖かさ。それを感じた。やっと理性が、戻ってきた。

その手を、丁寧に離し、足音を立てないように部屋から出た。

静かに扉を閉めた。


「……ばーか」


その声は、俺の耳には届かなかった。



「おはようさん、って、なんだい?こんなところで地面に座って…」

「ああ、おはよう。アーテナイ…ちょっとな…」

アーテナイが玄関に戻ってきた。

玄関で、地面に座って『姫桜』に体重を預けていた俺は、アーテナイを出迎えた。


「反省を少々……」

「え?アンタが?」

「どういう意味だ」

ちょっと元気出た。内心はアーテナイに感謝しておく。立ち上がり、背に『姫桜』を背負う。背筋が伸びた。


「ま、昨日のことは昨日のことさ、切り替えな」

いや、今朝の事なのだが、わざわざ言うまでもないか。

「ああ、そうするよ。…そう言えば、昨日、シャーロットさんにはなんて言ったんだ?」

「昼頃には戻る、って伝えてるよ」

「伝言、ありがとうな。……それにしても、お手伝いさんとか居ないんだな」

「ドワーフの戦士は、身支度くらい一人で出来て当たり前ってね。いつもは、親衛隊の連中と持ち回りで用意してるけど、連中は今頃、闘技場で夢の中さ。アタシは、ほら、『女神の加護』で一度寝ればスッキリ、ってわけさ」

ご覧の通り、と言わんばかりだが、服に砂や土、それにアルコールの匂いを付けている。

深夜まで飲んで、地面で一眠り、からの朝帰りってところか。


「風呂と着替え、済ませてきたらどうだ?……朝飯くらい用意させてくれ」

昨日のお礼もしたいし、なにか俺達の世界の食料でも使おうか。

「だったら、あんたらも食っていきな。厨房の食料は何でも使っていいよ。なあ、ナデシコ、二人で食っていくだろ?」

「おはよう、アーテナイ。そうさせてもらおうかしら。……ヤマトも、おはよう」

ナデシコの声は後ろからした、驚きと共に振り返れば、そこには身支度を終えたナデシコが居る。

一人反省会の時間は、思ったより長かったらしい。


「ああ、おはよう、ナデシコ」

極めて普通に挨拶出来たと思う。自己評価は90点だ。

「………こっちが流してるんだから、もっと自然にしなさいよ」

試験官の採点は厳しかった。ジト目のナデシコは若干、不機嫌だ。

そう言えば今日は髪を結んでいない。せわしなく髪を触っている。


「じれったいねぇ。いっそ、ここで一発、一昨日の夜の『アレ』でもやっとくかい?」

「「やりません!」」


アーテナイに気を遣われて、やっといつもの調子を俺達は取り戻した。

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