表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第二節 グルメバトルと過去、アーテナイの誓い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/150

53.それは明かされることの無いもの

「コイツはいったい、これはどんな素材なんだい……」

「やめなさい!引っ張るんじゃない!沈めるわよ!」

「……俺が後ろを向いてる間に片付けてくれよな」


現在、三人でアーテナイ宅の風呂にお邪魔している。

といっても、広さは公衆浴場並み、お湯の色は乳白色。見事なにごり湯だ。

それからもちろん、裸ではない、俺とナデシコは中学校指定水着、アーテナイは湯浴み着を来ている。

どうして、こんなことになったかと言うと…。


あの誓いの儀式の後、廊下を歩いていると、

「…へくちっ」

ナデシコがくしゃみを一つ。

冷たい果実水にオープンカー、アーテナイの走行で身体が冷えたのかもしれない。


「ウチの風呂に入ってくかい?」

「いや、いいわよ。そこまで世話なるのは悪いわよ…」

「そうだな。公衆浴場もまだやってるだろ」

「いいのかい?ウチの風呂は、源泉掛け流しだよ?」

「「お世話になります!」」


温泉大好きな身としてはとても魅力的な提案だった。

というか、この元ドワーフ王宮、現アーテナイ住居兼公共施設は、先に温泉があって、その場所に作られたそうだ。

かつての戦士達、あるいはドワーフの王族はこの温泉で戦いや鍛錬の傷を癒やしたのだろう。


寒波の季節は一般開放されるが、普段はアーテナイや親衛隊、泊まり込んだ職員で使ってるそうだ。

士気や忠誠心が高い理由の一端が分かったかもしれない。


公衆浴場は場所だったが、こちらは男女を時間別で区切ってるそうだ。

しかし、その決まりもアーテナイからすると些細なものなのだろう。

なにしろアーテナイにとっては、ここは実家の風呂だ。

俺は一緒は無理と言ったのだが、連行されて今に至る。

湯浴み着と水着は交渉の結果勝ち取ったものだ。腕力で負けたが口では勝った、と言いたい。


脱衣所も広くて助かった。

端で速攻で着替え、浴室に直行した。腰に巻くタイプのタオルには個人的MVPを送りたい。

後ろから視線を感じたが、気のせいだと思うことにした。


身体も洗い終え、今は浴槽だ。やっと冒頭に戻る。


「悪かったって、ちょいと気になったもんだからさ…」

「…もういいわよ。……零れなかったし」


……零れる?なにが?

とは聞けない俺、いっそ耳も塞いでしまおうか。


「ヤマトも、こっち向きな。なんの為にこの格好になったんだい?」

「心の平和と安全の為だっての、健全な青少年舐めんな」

「あん?あんたらとっくにお互いの裸くらい見てんだろ?」

「「なわけあるか!」」

「…………嘘、だろ…!」


人をなんだと思ってやがる。

驚愕の表情アーテナイ、なんなら異世界の事を言った時より驚いてる。


「……なるほど、異世界ってのは……難しいんだね」

なんの納得だ、なんの。俺とナデシコは白い目でアーテナイを見ている。


「ま、ここまで色々聞かせて貰ったんだ。一つ、昔話でもしようかね。……ちょいと、この世界の連中には聞かせられない昔話でも…」

「それは楽しみね…」

「ま、俺達の話は散々聞いてもらったしな…」

アーテナイは浴槽で身体を伸ばした。

俺達はそれにならう。温泉の温度はちょうど良く、身体の緊張が解れた。


「アタシ、いやアタシ達、『七天将星』は厳密に言えば、黒竜を倒せちゃいないかもしれないのさ…」


それは、告解のような呟きだった。

俺達は、アーテナイの言葉を待つことにした。


「奴の攻撃を防いで、凌いで、戦い抜いたよ。

 負傷兵は、前線から離れ、満足に動けてたのは7人。

 お察しの通り、『七天将星』さね。

 アタシ達は、当時でも最強の一角だったさ、それでも全員ボロボロ。

 そして、戦いの最後、黒竜は急に崩れた。

 確かにダメージの蓄積はあったろうさ。でも、随分急に見えた。

 鱗に牙や骨、素材は残った。でも、核はどうしても見つからなかった。

 それでも、緊張の糸が切れたたんだろうね。全員、その場で仲良く気絶。

 目覚めて見るとあら不思議、傷は無くなり魔力も全快。よかった、よかった、てね」


軽い口調だった。それこそ、昔話のテンションだ。


「あり得ないって言ったのはユディットさ。

 アイツが使った魔力は長年貯めたもの、寝れば確かに魔力は回復するが、

 『まるで黒竜と戦う前』みたいに全快になるのはおかしいってね。

 黒竜の咆吼はもう聞こえないのに、嫌な予感がしたのをよく覚えてるよ。

 まだマシだった負傷兵が身体を引きずって来たのはその時さ、

 そいつは涙ながらに叫んださ。

 『我らの勝利だ!七人の将が、将星達が倒したんだ!』ってね。

 負傷兵と遺体を連れての凱旋。

 帰って来たアタシ達に告げられたのは、異常な数の魔物は各地から徐々に姿を消したこと。

 功労の場には、生き残ったお偉いさん達は涙ながらに褒め称えたよ。

 魔力のことも、身体のことも『女神の加護』ってことで片付けられてね。

 その後、国として成り立たなくなった程に人を減らした各国は、

 都市としてその伝統を受け継いで行くことになったのさ。

 ドワーフ国は都市に、王国は王都に、帝国は帝都って具合にね。

 人類初の大陸統一、魔力をたんまり含んだ黒竜の素材を使った復興。

 復興の旗頭としての日々は、大変だけど、楽しかったさ」


500年前の事の筈だ。それでも、アーテナイは昨日のことのようにそれを語る。


「ただし、違和感は止まらなかったよ。

 どんな鍛錬をしようとも、魔力が増えない。

 『七天将星』には、人間が二人居るが、10年経とうが全く老けない。

 不老不死なんて言い出したのは、どこの誰だったかね。

 黒竜は倒した筈なのに、魔物の凶暴さは変わらない。

 そして、最大の違和感、アタシ達が黒竜を討ったとされる場所、

 ダンジョンでも無いのに強力魔物が出現するようになったのさ。

 今じゃ立派な禁足地。この先、立ち入るべからずってね」


皮肉の入った口ぶりだった。揶揄するような。その対象は、恐らく自分自身。


「どれも、『女神の加護』、『黒竜の残滓』そんな言葉で片付けられたさ。

 でもね、嫌な予感ってのは付きまとうさ。

 ひょっとしたら、まだ終わっちゃいないんじゃ…、ってね。

 さて、酔っ払いの長話はお終いさ。

 アンタ達も、このアタシが弱音吐いてたなんて、他の誰にも言うんじゃないよ?」


後半は軽口に戻っていた。確かに、この世界の事を、アーテナイの背負った名の重みを、よく分からない俺達にだから零せた本音、いや弱音なのだろう。

アルコールも無いのに、何に酔ったというのか、しっかりした口調のアーテナイは身を起こして、顔を洗った。

その顔は、いつものアーテナイだ。


「ねぇ、アーテナイ、それにヤマト。私の話も聞いてくれる?」


俺も、ナデシコも身を起こしてる。

そして、お湯の中で、ナデシコに手を握られたのを感じた。

その手を握り返す。ナデシコは笑顔でこう言った。


「私、帰れたら、もう一度この世界に来るわ」






いまさらながら、ep.1の前書きに、プロローグ的な文章を追加しています。なろうの仕様上、割り込み投稿ができなかったもので、申し訳ありません。以降の内容・文章に変更はごさいません。


序文のみの閲覧はカクヨムにてできます。

二つのリンクを張りますのでよろしければ、ご覧ください。


EP1

https://ncode.syosetu.com/n5368lm/1/



カクヨム版序文


https://kakuyomu.jp/works/822139841568167991/episodes/822139844059568535

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ