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【学園編完結】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:交易都市、迷宮都市編開幕】  作者: 沢クリム
『間ノ章② みどりのおまけ』

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249.番外 貴族令嬢とヤマトナデシコ 1

 


 時は6の月中旬、王都ロニア。同魔法学園高等部にて、数人の生徒が集っていた。


「どうしてワタクシがこんな憂き目に…!」


 嘆いたのは、金色の地面に対して垂直に髪を巻き、ほぐさずに筒状のカールを際立たせた豪奢な髪型の少女。

 少女なのだが、その顔立ちに似合わない濃いめのメイクをしている。加えて、靴の底がよく見れば分厚くなっているようだった。


 少女の名前はゾーイ。王都に程近くに領地を構える貴族の三女。

 魔力の高さから、学園への入学を両親が決め、本人も望んで入学を決意した。


「いや、憂き目もなにも…」

「今は高等部全体が忙しいっていうか…」

「お黙りッ!」


 その少女の威圧するような声で二人は黙った。しかし、その二人も叱られたというより、また始まったという顔をしている。

 まるで癇癪持ちの妹を見守る姉のようだった。事実、座っている時点で分かるほど、栗色の髪の二人とゾーイの身長差ははっきりしている。

 悲しい事に、彼女達は同い年。同じ高等部一年の女子である。


 二人の名前はヤラとウィロー。ゾーイと同じく王都に程近くに領地を構える貴族令嬢。

 髪色も顔立ちもどことなく似ているが、姉妹ではなく従姉妹。美人姉妹だった母親達がたまたま隣の領地に嫁ぎ、幼い頃は自分たちも姉妹だと思っていた。


 三人は、地方から出てきた子供達向けの学生寮にて同室。

 最初から偉ぶるゾーイを、ずっと妹が欲しかった二人が宥め、可愛がるという関係が3年間続いている。


 ちなみに、三人が三人とも姉妹に例えれば、自分が長女だという自覚の元、バランス良く関係を築いてきた。


「もし三年早ければ、ワタクシがかの『ワカバグ』に選ばれたというのに!」

「『若葉組』ね。たしかに、中等部最初の試験はトップだったけど…」

「王都で羽を伸ばしすぎて、中等部最後の試験では10位…」

「…お黙り」


 少女は涙目で目を反らした。

 ここで、頭に手を伸ばすと機嫌が悪くなるのを二人は知っている。言及せず、お茶を嗜むのみ。

 背伸びをしていると言えば聞こえがいいが、どうにも空回り気味な少女だった。


 かつて世界を救った伝説の英雄『七天将星しちてんしょうせい』。

 その一角、『緑のユディット』が学園長を務めるロニア魔法学園では、今年には例年にない試みが二つ行われていた。


 一つ、『緑のユディット』自らが担任となる特別クラス設立。

 二つ、中等部と高等部の交流会が大規模化。一大イベントになった関係で、高等部の準備や負担が増えた。


 このことに、不満を持つ高等部生は居た。しかし、その数は意外に少ない。なぜなら、『若葉組』の面子が凄まじい。


 今年度入学予定だったものの、急な病気で入学延期となった王家の姫の生き写し。貴族令嬢達は、『緑のユディット』から教えを受けるための方便だと薄々察している。

 今はメグ、と名乗っているそうだ。


 他にも、王家護衛官の娘にして、自らも剣術大会で負け無しの天才児、イザベラ。

 入学直後、訓練中の高等部に次々勝負を挑み、そのこと如くを打ち破った飢えた実戦主義者、ライリー。

 以上三名が、入学時点のメンバーだ。


 ちなみに、三人目、ライリーについて弁護させてもらえれば、本人にその意図はなく、一緒に訓練してもらったという認識だそうだ。

 ただそこで、魔法の訓練をしていれば上回り、格闘の訓練をしていればつい勝ってしまった、というのは本人談。


 そして、そこに5の月初旬に2名の人員が加わった。


 鉱山都市からの編入者ナデシコ、その従者ヤマトである。

 推薦を受け、『若葉組』に編入した彼らは、ゾーイらと同い年である。



「そうよ!あの編入生!入学に遅れたくせに特別クラス入りなんて絶対おかしいわ!」

「鉱山都市で魔物関連の事件があったし、そのせいかもね」

「でも、中等部で行われた森林探索では魔物の討伐まで行ったらしいから、実力は確かなんじゃない?」


 二人のフォローもゾーイは聞く耳持たずだ。


「おまけに!綺麗な黒髪で身長も高くて凜々しい従者をこ、恋人のように連れ歩くなんて!」

「「あー、そっちかー」」


 入学当初、王都で恋人を作るとゾーイが息巻いて居たことを思い出した二人。

 魔力も比較的高く三女であるゾーイは、王都で王城勤めの役人の嫡男を捕まえるかも、との両親の淡い期待を込められ、婚約者は居なかった。


 実際、女学園である学園と、男児の通う学院があり、年に数度の交流会もあったのだが…。

 そこでゾーイは三年連続、中等部一年生に見られる快挙を達成している。


 去年など、長身の中等部一年生に目の前でかがまれた時、思わず蹴りが出そうになったが、淑女の意地で耐えた。

 その後、王都の靴屋に底上げの依頼が入ったとか。


 ちなみに、ナデシコは女性にしては長身である。全身がゾーイの地雷なナデシコだった。


「そうだ!」

「なにかしら…」

「嫌な予感…」


 ダンッ、と机を叩いたゾーイ。ヤラとウィローは素早く、ゾーイのカップと茶菓子を机の上に上げた。なお、力が足りないのか、体格が不足しているのか、机は大して揺れなかった。

 ちなみに、両親から食べ物を大切に、と教えられたゾーイは食べ物を零すと本気で凹むので、それを防ぐ意味が大きい。


「お茶会に誘いましょう!そこで田舎者のマナーをしっかり指導してあげるの!王都の貴族のマナーをね!」

「上に立ちたいのね…。ま、嫌みったらしい言い方をしないって約束出来るなら賛成」

「ま、『若葉組』のことも聞きたいし、乗ってあげますか」


「決まりね!じゃあ、早速…」

「招待状の書き方は分かる?」

「いきなり明日とかはダメよ?」

「もう!ワタクシ、そこまで短気じゃない!それに…」

「「それに?」」

「明日は交流会の準備の仕事が入ってるじゃない!」

「「………」」

「なんで撫でるのよ!」


 不機嫌になった末っ子を撫でる手は、しばらく止まらなかった。





Q、番号付いてるのに番外とは?

A、管理が面倒になるので番号付けます。


今回で五話連続主役未登場ですが、次回登場します。(作者)

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