241.青葉は王都を飛び立つ。緑風が吹く、その日に。
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聖龍歴500年、6の月30日。
王都、南方面の連絡便発着場にて、『若葉組』一同と俺とナデシコは居た。
王都での日々を振り返り、しんみりとした空気に…
「希望のひかり、こだまする!はやぶさ追い越しこのまちへ!未来のかがやき、つばめに乗せて!ロニア特急アースリザード!定刻通りに間もなく出発!」
「姉貴、どうしたの?」
「お姉様、文言はこの町へ来たのに出発なのですの?」
「…この複数人体制のツッコミもしばらくお預け、か」
「兄上、惜しむところがズレています」
なってるかな?
3人娘へ、新幹線という俺達の世界の移動手段の解説を説明しだしたナデシコを尻目に、俺は王都に来た日は、一人でツッコんでいたことを思い出し、懐かしく思っていた。
そんな時、ローブを深く被ったの二人組が近づいて来た。
「よっ、ネリーにフルリス。忙しい中、来てくれてありがとな」
「えへへ、バレちゃった!」
「ふふっ、お忍びで来てしまいました」
フードを取った二人。王女陛下は、順調に元女王陛下の影響を受けているらしい。
とは言っても、周囲の魔力を探れば、人波に紛れてメイドエルフさん達が紛れ込んでいることが分かった。
その中にはルスィスさんにも居る。バッチリ目が合ったので、黙礼をしておいた。
ちなみに、王都でお世話になったルスィスさんには、可能な限りのお菓子のレシピを渡した。
王都でスイーツ文化が花開けば、妹分達も喜ぶだろう。
「二人とも!来てくれたのね!」
「ナデシコちゃんもおはよう!」
「褒められたことではありませんが…つい」
ナデシコも二人に気付いて飛んできた。
フルリスはそう言うが、為政者としての正しさも持ちながら、友人として来てくれたことは素直に嬉しい。
「だったら、俺達が褒めなきゃな」
「よく来てくれました!ありがとうで賞よ!」
「まぁ、お二人ったら」
女王に贈る勲章としてはなんとも小さなものだが、友達に贈るジョークとしては及第点だろう。
フルリスには、以前贈ったウサギのぬいぐるみ『ポンちゃん5世』もあるが、追加でその服も渡した。
俺にはよく分からないが、着せ替えというのはアガるポイントだったようで、渡したときにはまた語彙を無くして喜んでくれた。
「ねっ、二人とも。いつも旅をしてるわたしからのアドバイス!」
「お、なんだ?」
「気に入った旅先は、また訪れても楽しめる!」
「ネリーにしては意外と普通ね」
「だから、まずは二人世界に帰ることが最優先だけど…また来てね?」
「「もちろん!」」
「えへへっ、はい、二人ともおいでー!」
ネリーは腕を広げる。いままで散々抱きつかれてきたが、このように誘われるのは初めてだった。
ナデシコと顔を見合わせ、その腕の中に飛び込んだ。背中に回れた手は温かく、すこしだけ故郷を思い出すのに寂しくない。不思議な時間だった。
「いってらっしゃい。元気でね」
「いってきます」
「…そっちこそ、元気じゃなきゃ許さないんだからね」
王都の日々は騒がしく、寂しさなんて感じない程だった。
それは、間違いなく、同居人であり、家政婦であり家庭教師でもあり……『王都での母親』だったネリーの存在があったことに間違いはない。
ネリーには、小さく携帯しやすいマスコットをいくつも送った。
旅をするネリーが連れ歩けるように、もし無くしてもまた寄り添えるように。
実の母親に、お守りを贈られた時のことを思い出す。その心境は、もしかしたらコレと似たようなものかも知れない。きっと照れくさくて確かめられはしないのだけど。
「今だよ!フルリスちゃん!後ろからギューッとしちゃいなさい!」
「え?…は、はい!お母様!…ぎゅーっ」
「フルリス様!?色々当たっているんですけど!?」
「…ほう、くわしく聞こうかしら、ヤマト?」
こうして、俺達はタッグマッチだったら敗北必須のコンビネーションを食らい、フルリスの豊かな胸部を押し当てられる代償にタッグ解消の憂き目に遭うのだった。
「まったく、兄貴はなにやってんだか…」
「え?俺が悪いの?」
「ですわ」「ですね」
「ま、今回は許しましょう」
フリリスが正気に戻って離れた後、ネリーと俺は説教タイムに入っていた。
裁判長からはお許しが出たが、裁判員制度の見直しを要求したい。ネリーの方はまだ掛かりそう。
「……やれやれ、キミ達は見ていて飽きない、ね?」
「あはは…、状況的には巻き込まれてる、といってもいいと思いますよ?」
見守っていたユディット先生とその隣のエマ先生も入って来た。中立の意見は大歓迎である。
「ちなみにユディット様、今日こそ、ホントの本当に最終日ですよね?」
「……信用が、無いな…」
それについては、仕方ないと思う。
なんせ、卒業式があった翌日に、事前に内緒の1泊2日の卒業旅行があり、その後は…
「そういえば、昨日は本当に驚かされたっての…」
「まさかお兄様とお姉様が、学園で客員教師として講義なさるとは予想外でしたわ…」
「わたしは楽しかったと思います。兄上と姉上の授業」
そう、俺達は昨日、卒業した学園で、教師のまねごとをしていたのだ。




